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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百七十六


 良さそうな男だ。少なくとも、肉に対しての専門的な知識がある……北方野蛮人の味覚や、肉に対しての文化なんぞ知らないはずなのに。


 肉屋のブッチは、得意気に笑って太い歯の並びを見せつけると、ガンダラを求めて走って行ったよ。リヒトホーフェンのせいで、長く好きな商いをやれなかったのだろう。そいつが、才能と経験値を活かせる仕事に戻れるのであれば、幸せなことだな。


 仕事というものは、楽しめなくてはつまらん。


 戦士という仕事も、心から楽しめているからこそ上達も早いものだ。


『す、すごく……知的な方でしたね。す、スマートだとか、が、学問うんぬんというわけじゃなくて。な、何というか、職業的な知識が、ほ、豊富そうで』


「ああいう男こそ、真のプロフェッショナルだろう」


『で、ですよね。ちょっと、あこがれます』


「お前も、戦術の理解が上達しているぞ」


『そ、そう、ですか!?』


「うんうん。ジャンは前より、ずっと戦場が見えるようになってるよ」


『が、がんばりますっ』


 嬉しそうに涙ぐむジャン。ジャンの場合は、このマジメさが成長のコツだろう……。


「は、はあ!はあ!お、追いついたと思ったのに。ブッチめ。また、私を置いて行ってしまったのか……」


「トーリー・タイズンだったな」


 汗まみれになりながら、トーリー・タイズンがやって来たよ。ブッチを追いかけていたのか……つまり、こいつも女メダルドのことを知っていたらしい。


「は、はい。どうも、ストラウス卿!見事な戦いでございました!帝国が崇拝する女神を倒すなんて……私には、想像もつかないほどの強さのようですね」


「耳が早いな」


「戦闘の現場にいなくとも、心はいつでもストラウス卿たち『自由同盟』と共に在るのですよ。このトーリー・タイズンは!」


「……商人らしい態度をする」


「き、君だって、私の立場ならそうするだろう?」


「……まあ、そうだな」


「メダルドの状況も、知っているとは、さすがの『情報通』ぶりだぞ」


 皮肉を言ったつもりでもなかったのだがね、『オルテガ』商人の男はばつが悪そうに目尻を泳がせていた。


「ご報告するつもりだったのですが。そ、その、メダルドの状況が、あまりにも特殊だったので。今後は、ストラウス卿に情報を隠すような真似はいたしませんよ」


「そう卑屈にならんでもいい。十分に、信用している」


「ありがとうございます!『オルテガ』商人のなかで、最も貴方を支持する商人、それが、このトーリー・タイズンです!」


 自分の名前を売り込むのに必死だな。メダルドがオレたち猟兵よりも先に頼った男か……まあ、オレたちはビビアナに近すぎるから、頼れなかったのだろうがね。そんなことよりも、だ。


「メダルド、彼はどれぐらい有能なんだ?」


「……純粋な商人の能力としては、若干オマケして、上の中」


 トーリー・タイズンの笑顔が引きつった。上の上を期待していたのだろうが、メダルドの評価はおそらく正しい。


「……だが、それよりも性格を評価したい。経験は幅広く、誠実だ。何よりも、亜人種に対しての偏見もない。そういった点は、『自由同盟』とのやり取りを効率的にするだろう。『オルテガ』商人たちのなかには、リヒトホーフェン色に染まっていた者も少なくないが、そういった者たちともタイズンはコミュニケーションが取れる」


「橋渡し役として、すぐれていると」


「……ああ。タイズンは、頼りになるぞ」


「そうか。トーリー・タイズン、仕事をくれてやる」


「はい!!何なりとお申し付けを!!」


「ブッチを追いかけろ。トーリー・タイズン、お前には兵站構築の責任の一翼を担ってもらうぞ」


「は、はい!!」


「それと、『西』についての情報も、部下にまとめさせておけ」


「『西』ですか……『リオーネの民』たちの土地」


「詳しいのか?」


「誠実に、私の能力を開示します。『リオーネの民』についての知識は、それほどではありません。ですが、出身者に心当たりもあります。『西』から流れて来た職人で、サボテン絹の職人ですよ」


 ミアの猫耳が動く。お兄ちゃんは、しっかりと覚えているぞ。サボテン絹のクッションを欲しいと言っていたもんな。ちゃんと、手に入れるつもりだ。お兄ちゃんにはね、義務があるのだよ。妹を喜ばせるために、全身全霊を尽くすのは最低限の義務である。


「あれは『西』から来た者が得意とするのです」


「『西』は、サボテンが多いんだね」


「ええ。どうやらそのようで。荒れ野も多いようですが、サボテンはそういった土地でも生える。食べたり、酒の原材料にしたり……繊維も採る」


「サボテンさん、出来る子だね!」


「『西』には、多いか」


「はい。サボテンの扱いは、我々よりも身近なようです。まあ、知っているのは、私はその程度なのですが……『西』から来た彼を、最優先で、探してみましょうか?戦闘がありましたので、無事なのかは分からないのですが……」


「明日の朝までに、情報をまとめておいてくれると助かる。あの土地についての情報も、欲しいんだ。だが、君に期待するのは、ブッチと共に兵站を支えてくれることの方だよ。優先するのは、そちらだ」


「了解しました!では……ブッチと合流いたします!」


 実にいい顔をしていたよ。商人らしく、儲かるにおいを喜んでいる。良いことだ。戦士も商人も、楽しく己の仕事に夢中となるべきだよ。そっちの方が、そうじゃないよりは、ずっと強いに決まっているからな。

 



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