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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百七十四


 賢い者たちには、どうにも弱点がある。賢いからこそ、多くを考え過ぎてしまうのだ。そいつは、人類の発展に対しては良い効能を持つのだろうが、現実的な解決策を前にして迷ってしまうことも。


 世界はバランスが取れている。メダルドたちのように、賢い者がいる一方で、オレのようなアホもいる。アホの役目は、難しく考えずに行動あるのみだ。


 ロープで縛られているんでね。女メダルドの体を、そいつから解放してやった。ナイフで斬る。ロープだけ。自由になった女メダルドは、アホをあわれむ者の瞳をしていたよ。本望だね。


「……簡単に言ってくれるものだ」


「簡単だし、単純なハナシだよ。そいつを複雑にする方が厄介だ。ビビアナのところに、行くぞ」


「……しばらく、待ってくれないか」


「逃がすわけにはいかん」


「……逃げるわけじゃない。竜騎士二人に、竜と……それに……ジャン・レッドウッド」


『は、はい……その。に、逃がしはしませんよ。あなたは、き、気になるにおいがするから』


「……神々のにおいか。率直な意見として、今のオレは、邪悪な気配がするのか?」


『……え、ええ。『ゼルアガ/侵略神』のにおいに、とても似ているんです』


「……なるほど。管理は、されるべきだ。迷惑をかけるわけにはいかん」


「暴走するとでも、思っているのか?」


「……そうなれば猟兵たちで止めてくれ」


「ああ。その点は任せておけ」


「うん。メダルドのおっちゃんが、おかしくなったら……」


「オレが倒す」


 それは、お兄ちゃんの役目だろうからね。ミアがわざわざしなくてもいい。


『ぜ、『ゼルアガ』のにおいも、なんですが……』


「他にも、あるのか?」


『は、はい。もっと、『よく分からない気配』が、あるみたいです。ど、どこかで嗅いだような気がするんですけれど、ど、どうにも……記憶を、引きずり出そうとすると、あ、アタマのなかで……消えるんです。た、たぶん、これは気のせいではありません……っ』


 悪神ども、『ゼルアガ』は向こうから接触して来なければ、こちらから認識するのが不可能。そういう権能を持っている。となれば、ジャンの記憶を妨害しているのは、そういう者なのかもしれん。


「他の『ゼルアガ』も絡んでいると思うか?」


『お、おそらく。な、『何』なのかまでは、自信がありません。普通の、そ、存在ではないと思います』


「得体の知れない神さまも関わっているのなら、ますます、『トゥ・リオーネ』についても知っておきたいところだ」


「……オレ自身が詳しいわけではないぞ」


「資料の隠し場所ぐらいは見当がついているだろう」


「……大学半島にある。『ツイスト』だ」


「『ツイスト大学』。ケットシーの学者、リサ・ステイシーを知っているか?」


「……面識はないが、あそこの学長の名前は知っている。フラビア・ステイシー」


「何でも知っているんだな」


「……名門大学の学長が書いた本ぐらいは、王になるなら読んでおくべきだぞ」


「耳が痛いぜ」


 インテリと北方野蛮人の知性の差というものは、埋めがたいほどある。


「……ビビに、会うのは、ちょっと待ってくれ」


「逃げないんだよね?」


「……そうだ。覚悟は決めた。会う……だが、ビビは『オルテガ』の商人たちを相手に、素晴らしい交渉術を披露していたんだ。オレが、死んだと理解しているからこその集中力もある。しばらく、落ちつくまでは……そっとしておいて欲しい」


「何日も待つつもりはないぞ」


「ないよ!」


「……夕方までで、いいだろう。あの子は、帝国から材木を奪うつもりだ。『オルテガ』商人たちや、帝国軍と関わりのある商人からさえもな。『それ』は、お前たちにとっても重要な戦略だろう」


「ぐうの音も出ん。さすがは、ビビアナ・ジー」


「……オレが表に出るよりも、ビビに任せた方がいい働きをするさ」


「夕方、までだからね。それ以上は、待たないんだからね」


「……分かっている。何度も、言わなくていい……いや。オレが、そうさせたか。煮え切らない態度を、してしまっているものだ」


「許してやるよ。お前のことだから、どうせ親心が原因だろう」


「……心を読めるようになったか」


「苦労を積んだのは事実だ。オレの何倍も賢く、長生きの議員たちと渡り合わねばならなかったからな」


「……ガルーナ王としては、経験になったはずだぞ」


「ああ。お前からも、もっと学ばせてもらうつもりだ」


「……とりあえずは、叔父と……『トゥ・リオーネ』、『西』についてか。フラビア・ステイシー学長に会えば、手っ取り早いかもしれんぞ。彼女は西部人たちの専門家でもあるし、叔父の『コレクション』の一部を、管理してもいるんだ。父も……祖父も、『ツイスト大学』には出資している」


「ステイシー学長は亜人種なのに、仲良しじゃないか」


「……大学半島は特別な場所だった。学問のためなら、種族は問わん。奴隷であっても、学問を教わる機会を得られる」


『い、いい場所ですね。そこに、と、投資したんだ……』


「……見返りを、求めてでもある。ステイシー学長と協力関係を結べたのも、叔父が自由人だったからだろうし、ジーの一族が寄付をしていたから無視できなかっただけかもしれん。ジーの一族は、『奴隷に学ばせる手法』を求めていただけ。すべて、利害関係だ」


『べ、別に、それでもいいと思いますよ。だ、だって……他の土地で、ど、奴隷が学ぶ機会なんてありませんし』


「……それは、そうだろうが」


『そ、それに。お、思うんですよ。あ、亜人種や奴隷が、学ぶための機会を、あなたの一族のお金が支えてもいたわけで。だからこそ、い、今になって、『プレイレス』の亜人種たちも、ど、奴隷の立場から逃れて、『自由』を求めて戦えている……か、賢くないと、そういう反応も、出来なかったと思います』


 ああ。これだから。若者の成長を見守ると、顔面がにやけていいものだよ。ジャンが、メダルド・ジーを諭している。


「おっちゃんが思っている以上に、ジーの一族は嫌われてはいないかもね。いいコトだって、いっぱいしているかも」


「……そうだと、いいんだが」




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