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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百七十


 議員たちの説得は、どうにか円満な解決をしてくれた。彼らも帝国から勝ち得た自由を、永遠のものにしたいと願っているのだから、当然のことではあったな。


「ストラウス卿の作戦に、ご協力いたします」


「で、ですが。必ずや戦のときまでに、『オルテガ』へとお戻りください」


「任せておけ。ガルーナの竜騎士は、約束をたがえることはないものだ」


「は、はい。信頼しております。これは、あくまでも確認しておくのが、議員としての義務だからです。ストラウス卿、ご気分を悪くなさいませんように」


「分かっている」


「それでは、団長。彼らからも情報を募りましょう」


「おう」


 レイチェルもゾロ島のキケから事情を聴いてくれているよ。ゾロ島には、大勢の荒くれ者たちが流れ込んでいるらしいからな。そういった者のなかには、『西』に詳しい者たちも少なからずいる。


 商人たちとは、異なる知見や情報網を彼らは持っているに違いない。そいつも貴重な情報ではあるが、情報というものは多いにこしたことはなくてね。


 想像力だけでは、読み解けないのも現実の複雑さだ。本能は読み解けたとしても、細かな事情までは違ってくる。


「議員たちよ。それに、戦士たちよ。『西』についての情報を、いかなるものでも出し合ってくれ」


「情報の種類は、いっさい、問いません。すべてに価値があるのです」


「とにかく可能な限り、多くをだ。確かな情報でなくても、噂話でも構わない。オレが接触すべき者と、オレが陥れるべき者を特定するには、君たち全員の協力が要る。我々全員の力を、合わせるとしようじゃないか」


「では、この地図のもとに集まってください」


 乗って踊れそうなほど巨大なオーク材のテーブルのうえに、ガンダラは広々と地図を開いてくれた。『中海』が目立つ地図ではない。『中海』は東の端の近くにある。その地図の南西部には『南海』が広々と描かれていた。


「大陸の南西部の地図となります。ここに至る商業用の道、かつて帝国軍が侵攻に用いた道は記述済みです。それらの侵攻が起きたのがいつだったのかも」


 賢いガンダラの言葉に、賢そうなギムリが答えてくれたよ。


「任せてくれ、ガンダラ先輩。『西』についてのハナシは、いくつか聞き覚えがあるぜ」


「頼りにしていますよ、ギムリ」


「ああ。時間が許せば、故郷の長老たちにも聞いてきたいところだが……」


「それなら、私の部下が寄ってあげるわよ」


「南のエルフがかよ?」


「悪いかしらね?ストラウス卿は、言ったばかりでしょう。すべての種族が協力するし、私たちの全員が、帝国を倒すために一致した戦略で動くべきだわ」


 ルチアは賢い。それに、ずいぶんと協力的で助かるよ。


「わ、分かったよ。短気な部下は、使わないようにしてくれ。古い連中は、ガンコなんだから。南のエルフと長く争って来たという歴史に囚われている者も多い」


「知っている。戦い合った歴史は、忘れてしまえるほど古くはないのだから。それでも」


「ああ。それでも、やり遂げて欲しい」


「うん。ストラウス卿、やってあげるわ。南のエルフは、『西』についての情報提供は出来なさそうだから。貴方のために、ちょっと部下に走ってもらう。時間差があっても、フクロウが現場の貴方に情報を送れるかもしれないし。ムダにはならないわよね」


「露骨だよな」


「何が、露骨なのかしら?」


「い、いや。その……気にするなって。つい口がすべっただけだ」


「ストラウス卿に媚びているわけじゃない。勝利のために、協力しているだけよ」


「分かったって……ストラウス卿、オレも協力は惜しまねえ。老人どもも、状況が変わったことには気づいているはず」


「『秩序派』の巨人族以外は、およそ柔軟な思考をしてくれるものですからな。ギムリ、安心しなさい。貴方の故郷の人々も、我々への協力を拒みはしないでしょう。帝国軍の脅威から解き放たれるための、最良の選択を古老たちは気づいている」


「『秩序派』か。そういう極端な方々ではないな、うちのガンコな老人たちも」


 ガンダラは『秩序派』の巨人族が嫌いだ。人間族に従属するという選択を、自ら選んだ巨人族の一派を憎んですらいる。戦闘用の奴隷という身分から、自力で解放された男がガンダラだ。


 彼からすれば、今も帝国軍の言いなりとなって、人間族第一主義のために戦う連中は許せない。


 その最たる者が、自分と血を分けた兄、ガンジスという巨人族最強の男であっても。第一師団に所属するこの男とは、いつか『パンジャール猟兵団』もめぐり合うだろう。遠い日ではない。ガンダラではなく、オレが倒した方が業は深くないはずだ。


 乱世とはいえ、親族同士で殺し合うなんて真似は、少ないに限るよ。


 姉貴や甥っ子と殺し合いをしてから、そう日が経っていないオレには、良く分かっているつもりだ。あれは、かなりの苦しみだから……ガンダラよ、ガンジスはオレが斬る。


「じゃあ、ストラウス卿。ちょっと、指示を出してくるわ。そのついでに、みんなに声をかけてみる。『西』について詳しそうな連中がいないか見つけろって」


「助かる」


「助けているつもりだもの。貴方に、賭けた。私も……私だけじゃなく、多くの人々がね。可能性にあふれた未来を、生きてみたい。そう願えているから、この結束は大きく広まっているのだと思う。すごく、ステキなことだわ。絶対に、勝ちましょうね!」




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