表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4510/5091

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百六十二


―――採風塔の上に、女の子が立っていれば目立つものだよ。

ただでさえ、この半日のあいだ『オルテガ』の人々は空を見上げがちだったからね。

逆さまになった『もう一つのオルテガ』だとか、竜だとか女神だとか。

空に対して、何だか過敏になっていたわけさ……。




―――ミアの姿を見て、『パンジャール猟兵団』の一員だと知らない人物たちは。

子供があんな高い場所に登ったことに対し、大きな不安を抱いてしまう。

戦士たちの少なくない数は、ミアを認識してもいた。

彼らに至っては、心配することもなかったよ……。




―――猟兵であり竜騎士である、最強のケットシー。

それが採風塔に登ったところで、落下して傷ついたりするはずもない。

心配させてしまった人たちも、そのうちミアを心配しなくなった。

威風堂々とした絶対的な自信が、ミアからはあふれているからだよ……。




―――その種の気配に、人々は素早く反応をするものだ。

極端に言えば、ひれ伏したくなる者さえもいる。

まるで採風塔は一種の玉座のように、ミアを飾り立てていた。

実にリトル・ストラウスらしいかもしれない、空を背負って君臨する竜騎士の姫はね……。




―――世界の全てを見下ろしているような態度は、生意気でさえなかった。

『王無き土地』の人々さえ、支配下に置くような強さを当然だと認識してしまう。

本物の格というものは、そんなものかもしれない。

とにかく、ミアは命じているのさ……。




―――『私を見て、リアクションをしなさい』とね。

それをミアも見るつもりなんだよ、そうすればメダルドを見つけ出せるから。

誰もが少なからず、ミアという存在感に恐怖を抱く。

これは本能的なものだから、どうにもならない……。




―――例外の一人なく、ミアの放つ迫力に対して選択を強いられるんだ。

逃げるべきかもしれないし、強がって見つめてみるべきかもしれない。

人によって、その態度はさまざまになるだろう。

だから、人によってはミアを神さまみたいに拝んだ者さえいた……。




―――この採風塔の近くにいる者たちの誰もが、ミアを見てしまう。

もちろん、ミアの思惑の通りに。

メダルド・ジーも、ミアの目撃者だったよ。

賢いこの人物は、一瞬のうちにミアの狙いを悟った……。




―――どうやら、ミアは自分を見つけ出そうとしているらしいとね。

誰かが自分について、ミアに報告してしまったのだ。

推理なんてものじゃなく、もはや直感で理解するよ。

その犯人は、あのシモンだということなんて……。




「……考えるまでも、ないからな」

「な、なあ。あの子は……ひょ、ひょっとして、ストラウス卿の関係者かよ?」

「そ、そうだよ。たしか……ストラウス卿の……妹さんだ」

「……ああ。ミア・マルー・ストラウス」




――――シモンはある種の裏切り者だったが、それもしょうがない。

だって、ミア・マルー・ストラウスなのだからね。

『大魔王の妹姫』が、目の前に現れたとき。

どれほどの感情が心のなかで暴れてしまうのか、それをメダルドも理解している……。




―――あんなちいさな体のくせに、それから放たれる存在感の大きなこと。

空を背負っている者は、どんなに小柄であっても神さまじみて大きいのさ。

権威というものはね、およその場合で『背負う』ことにより現れてくる。

王さまなら玉座、教師なら背後の黒板でもいい……。




―――何でもいいのさ、何かを背にした者が小さく感じられた試しはないんだ。

それも、ヒトの本能めいた反応だよ。

だから、玉座のすぐ後ろには壁を作っている。

おそらく王権を採用している国のすべてに、例外はないだろうさ……。




―――空からは、どうやっても逃げられない。

同行者である肉屋のブッチも、トーリー・タイズンもミアを見つめてしまっている。

畏怖を感じさせられ、見上げた空の巨大さに押しつぶされるように後ずさりしていた。

良くないことだ、メダルドは理解する……。




「……これじゃ、ばれちまいそうだな」

「ば、ばれるって?」

「す、ストラウス卿の妹さんに、何か恨まれるようなことでもしたのかい?」

「……まさか。恨まれるようなことなんて、するものかよ」




―――どちらかと言えば、その逆サイドのものだ。

ビビアナのために、ミアは見つけ出そうとしているに違いない。

自分を見つけ出して、どうにかビビアナに会わせたいのだ。

それはありがたくもあり、今のメダルドの目的を妨害しかねないことだった……。




「……オレは、どうなるか分からねえんだぞ。また、死んじまうかもしれねえ。今にも、身体が崩れ始めるかも。そもそも、この体の持ち主に……体と人生を、返してやりたいのに」




―――メダルドも、理解しているだろう。

すべては、力が決めるものだ。

弱者が何を望もうが、強者の選択の前には犠牲にされるだけのこと。

どれだけ厚みのある歴史書を読んで確認しても、一ページの例外もない……。




―――気配を隠そうとした、自分はまるで他人であると見せかける。

もしかすると、メダルドだけであれば逃げおおせたかもしれないね。

でも、同行者たちはやや悪目立ちしてしまっていた。

後ろめたいものでなくても、秘密なんて抱えてしまうと反応がぎこちなくなるものだ……。




―――ミアの黒い双眸と、黒髪のあいだから空に向かって生えたケットシーの猫耳が。

自分に対して、恐怖を覚えた気配を読み解いてしまう。

『逃げようとする気配』には、戦士と狩人と猟兵は意図を感じ取ってしまうものだ。

見つけていたよ、数百人もこの採風塔の周りにはいたのにたった一人をね……。




「メダルドの、おっちゃん…………いや、見覚えがある。『カール・メアー』の巫女戦士だ」




―――そうだよ、ミアが見つけ出してボコボコにした彼女さ。

その体に、メダルド・ジーは宿っている。

理屈は分からなくても、関連性だけで確信を抱くに足るものだ。

決めつける行動は例外を見過ごしてしまうが、例外でない場合はほぼ確実に当てる……。




「見つけたよ。絶対に、あなただ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ