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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百四十四


―――優秀さゆえの重荷もあって、ガンダラの仕事は多岐に渡っていたよ。

多くの仕事のうちのたったひとつが、『残党狩り』の指示だった。

女神イースのもたらした混乱に、帝国軍がつけ込む様子は今のところない。

ソルジェもガンダラも、帝国軍がすぐに攻め込むとは考えなくなっていた……。




―――このころには、ロロカたちの勝利の報告も届いていたからね。

帝国軍はすぐには動けないと判断するには、十分だったよ。

そうなれば、ガンダラはより積極的な行動するに決まっている。

『攻撃』の戦術家だからね、好ましい状況を自分の計画に取り込みにかかるのさ……。




―――そのひとつが、『残党狩り』になる。

『ストラウス商会』に接触していたのは、彼らがその戦術に適していたからだ。

高速で走り回れるユニコーンは、散り散りになった敵兵をせん滅するのに向く。

追い詰められて、戦場の周辺に残った敵は厄介だ……。




―――こちらの偵察をするかもしれないし、軍規から逸脱した蛮行を取るかもしれない。

復讐心に燃えて、次の戦いに積極的に参戦する可能性もある。

だが、今は疲れ果てて分散しながら逃げていた。

それらを的確に個別撃破できれば、我々は諸々の面で有利になるんだ……。




―――ガンダラも『ヴァルガロフ』で、テッサ・ランドールの補佐をして学んでいる。

速やかな秩序の回復こそが、どれだけの軍事的アドバンテージをくれるのか。

四大マフィアの支配する街は、その点は素晴らしかった。

もちろん完璧ではないけれど、速やかな権力交代と『雑音』の除去は見事だ……。




―――厄介な『病根』を残しかねなかった、クリア・カニンガム。

その存在を予想し、こうして排除できたのも。

ガンダラがかつての経験で得た、教訓を活かしているからだ。

あの手の『病根』はしつこく、土地を汚染するように根を張りかねない……。




―――侵略で新たな土地の支配者となった、外来的な帝国貴族たち。

連中の多くは、自分の手足となるような『利益の絆で連結した地元民の組織』を作る。

帝国貴族はユアンダートの手下ではあるものの、誰もが自分の領地を持つ者だ。

領地経営については、すべての貴族が自分の意のままに行いたいと願う……。




―――皇帝の命令に従ったとしても、貴族は誰しもが『王』のたぐいだ。

一国一城の主であるがゆえ、『自分の派閥』で周りを固めたがる。

まして、ここは迷宮都市『オルテガ』だ。

さまざまな由来を持つ組織が、うじゃうじゃと混在している……。




「カニンガムのような、器用で特殊な人物ではない。残党たちが寄り付く場所は、医学に投資を惜しまなかった者……近隣では名の知れた薬草医。その人物が営む病院が、東の国境近くにはあるそうですからな。彼は、リヒトホーフェンと蜜月であった地元民の一人。リヒトホーフェン配下であった帝国軍の兵士どものなかで、反逆の意志がある者はそこに向かうでしょう。そこに、偵察を行ってください。もちろん、病院を破壊することは許しません」




―――繊細な任務でもあるからこそ、『ストラウス商会』が頼りになった。

彼らは命令された内容を、絶対に守ってくれるからね。

肝心なことは、帝国軍が『オルテガ』を攻め込むために使いそうな足掛かり。

それを、可能な限り破壊しておくことさ……。




―――そうすれば治安の回復が、早くなるよ。

『戦槌姫』テッサ・ランドールがそうしたように、邪魔者を黙らせることで。

リヒトホーフェン/旧支配者の協力者を、ソルジェ/新しい支配者につかせればいい。

敵に内通しないようにすることで、秩序はより明確なものとなる……。




―――『ストラウス商会』のユニコーン騎兵たちは、新たな命令を喜んでいた。

女神イースに魔力を吸われて、大きく疲弊していたとしても。

彼らは次の戦いに、全力で楽しむつもりだったからね。

生粋の北方野蛮人系の哲学の持ち主たちだから、戦いを愛しているんだよ……。




―――『残党狩り』のために、彼らは意気揚々と出撃していく。

パロムと『曙』もそれを望んだが、先輩諸兄から留守番を頼まれた。

くやしがるパロムがいたが、こればかりはどうしようもない。

彼女はどのユニコーン騎兵たちよりも、消耗していたからね……。




「……『霊槍』を、使えるようになったのに。無念です!」

『ヒヒイン。ぶるううう』

「ですよね、『曙』。まだまだ、私たちは戦えるというのに。先輩たちは、意地悪ですよ!」

「後方の守りがあれば、彼らも安心して戦える。これは、重要な仕事ですからな」




「た、たしかに!」

「それに。己をより強くしてくれる鍛練にもなるのです」

「ど、どういうことでしょうか!?」

「戦いの場に出たいと、逸る心がある。その衝動的な心さえも、コントロールできるようになれば。あなたはより強くなれるということです。最強の戦士になるための、特訓だと感じなさい。このガマンを」




―――若い戦士たちの気持ちも、ガンダラは理解しているよ。

彼自身を含めて、すべての熟練した戦士たちもかつては若かったのだから。

パロムの心には、深く刺さる言葉だった。

『最強の戦士になるための特訓』、それを聞けばにやけてしまう……。




「分かりました!!この特訓、見事に達成します!!自分を、コントロールする。それは、素晴らしく難解であり、私には欠けている部分ですから!!」




―――北方の勇敢な血は、凍てつく冬の嵐にも冷まされないからね。

生まれもっての戦士たちの、数少ない深刻な弱点のひとつだった。

戦場で敵と戦いたいという衝動を、本当の意味で制御できた人物は少ない。

それを学ぶための鍛練であると思い込めば、パロムと『曙』もこの時間を楽しめる……。




―――騙しているわけじゃないよ、本当に彼女たちを強くすることだ。

ああ見えて、切れやすいロロカだとか露骨な戦闘狂のソルジェだとか。

北方の勇敢すぎる血が持つ衝動を飼い慣らせた者は、例外なく化ける。

勇気と理性の両輪が利いた勇者が、弱いはずもないさ……。




―――まして、『霊槍』を使いこなそうとしている若い天才だからね。

ロロカほどの怪物になれるとまでは、保証してあげられないけれど。

パロムは実に多くの可能性を秘めた、逸材ではある。

リーダーシップもあるのさ、前向きで明るく賢者の言葉を鵜呑みに出来る時点でね……。




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