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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百四十一


―――賢くない方々の暴走なんて、どうにも不吉な気配がしたものの。

意気揚々とした勢いで、ユニコーンの『曙』と共に進むパロム。

そんな彼女たちを、フリジアは止められなかった。

どこかパロムの行動に、期待していたのかもしれない……。




―――炎天下での会議という、緊迫感を煽る商談の場。

そこで政治力をにおわせながら、『オルテガ』商人たちをリードするビビアナ。

彼女はパロムの接近に気が付いていたよ、ちゃんと周辺を見渡せていた。

暗殺されかけたせいで、感覚は研ぎ澄まされていたからでもあるし……。




―――もしも、『オルテガ』のベテラン商人たちが反抗的な態度をしたとき。

パロムを利用するつもりでもあったのだ、『ストラウス商会』の一員だからね。

名前からして、非常に『誰の所有物』なのかが明確な会社ではある。

なかなかにしたたかな計算をしつつ、彼女は状況を俯瞰していたわけだ……。




―――向こうから参加してくれるのは、ありがたいと感じる。

だから、あえて接近を許してもいた。

もちろん、発言の内容までは分かるはずもないけれどね。

フリジアのとなりにいたことは認識済みだから、敵ではないと信じられたのさ……。




「ビビアナ・ジー、『ストラウス商会』は、お前に乗るぞ!!運んでほしいモノがあれば、私に言え!!なんでも、すぐに、運ぶ!!どこまでだってな!!」




―――もちろん、それは独断であったよ。

若いパロムに『ストラウス商会』の方針を決めるような権力なんて、あるはずもない。

でも、その事実を『オルテガ』の商人たちは知らないからね。

広場に轟くほどの大声での主張は、『ストラウス商会』の総意であるかのようだった……。




―――リーダーシップを『学ばせるとき』、指導者はいくつかのコツを教えてくれる。

そのひとつは『堂々としていること』、姿勢や態度だけでもヒトは印象操作されるからね。

さらに『大声で主張すること』、これは分かりやすくもあり伝授しがたいセンスだった。

いくら賢くて自信がある人物でも、大声で話せるとは限らないものだよ……。




―――少なくない文化圏において、大声でしゃべるなんてことは『はしたない』からね。

礼儀作法を学ぶとき、『騒がしくしなさい』なんて教える教師がいるはずもない。

たまにはいたとしても、それはずいぶんと変わり者だろう。

教育を受けた者ほど、大声でしゃべりにくくもなるのさ……。




―――政治家や貴族や王族、あるいは戦士や軍人。

人前での演説をしなくちゃならない者にとって、これはセンス/生来の才能が必要なんだ。

その点では、極北の野蛮な勇者の一族として生まれたパロムは合格だ。

ソルジェ並みとはいかなくても、凛とした大声の持ち主だったからね……。




―――威風堂々とした態度も、極めて人受けがあるものさ。

パロムには自覚がないけれど、実のところリーダーの資質を多く持っている。

マジメで裏表がない顔も、かなりいいよ。

単純な性格の方々からは評価されるし、他者を操りたい腹黒商人からも好まれるから……。




―――『オルテガ』のベテラン商人たちは、パロムの単純さに大きく惹かれていたよ。

『ストラウス商会』の輸送能力を、彼らの情報通な耳は捕らえていた。

ユニコーンについての理解はまだだが、実務的な能力は相当なものだよ。

ありえない物流の動きを、市場価格の推移から推し量っている……。




―――乱世は混沌とするものだし、帝国軍が各地で敗北を喫するのは異常事態だ。

物流の動きが、かなり歪んだとしてもおかしくはない。

それでも、『より悪くなるはずだった』。

でも現実は、真逆の現象が支配している……。




―――『ストラウス商会』の輸送能力があるからこそ、『自由同盟』は助かっていた。

帝国軍はユニコーンの輸送能力を考えられない、その結果としてこちらの戦力を見誤る。

帝国軍人や商人たちが交わす会話の多くは、『そのうち兵站が切れるはずだ』。

通常ならばそうなって当然だよ、大遠征はあまりにも軍隊を疲弊させるものだから……。




―――ユニコーンの輸送能力と、ロロカ・シャーネル/ディアロス酋長の令嬢。

それに声をかけたクラリスは、非常に先見の明があったということだよ。

このけた違いの輸送能力のおかげで、帝国軍は我々を過小評価してくれたんだ。

プライドの高い帝国軍の兵士とは違い、商人たちは現実的だからね……。




―――『ストラウス商会』の商業的価値を、より客観的に評価し始めていた。

『自由同盟』の輸送能力、兵站能力の健常さには『秘密がある』と。

その秘密と、こうして目の前で触れている。

ユニコーンという怪物の群れを、『自由同盟』は有していたと納得していた……。




―――そういう事情があるからこそ、ベテラン商人たちはパロムを口説きたくなる。

もちろん恋愛ではなくて、ビジネスの相手としてだよ。

パロムはこの瞬間から、『オルテガ』の商人たちから頼りたくなる人物の一員になった。

会合には顔を出すべきだね、こういう『出会い』があるのだから……。




―――どんな縁であったとしても、ないよりあった方がいいものだからね。

とくに商売をするとき、顔が広くて損することはないものだ。

パロムはある意味で、大きな出世を果たしていたよ。

それは彼女の決めた、『狭間』を勧誘する行いに対しても有利な働きをする……。




―――いつかボクたちは、見るのかもしれない。

『ストラウス商会』において、大きな出世を果たしたパロムのことを。

若さがあるからね、柔軟なんだよ。

ほかのベテランのディアロス戦士たちより、ずっと多くを吸収していくから……。




―――可愛い子には、旅をさせてみるべきだね。

古き言い伝えのように、多くの成長を獲得してくれるものだ。

そんなパロムを見て、商いの計算をしていたのは『オルテガ』の商人だけではない。

もちろん、誰よりも現状を把握しているビビアナは喜んだよ……。




「ええ!もちろんです!『ストラウス商会』の方々とは、特別な絆を感じていますので!こちらこそ、よろしくお願いいたします!」




―――政治的な演技力に長けた乙女は、その一言に多くの技巧を込めていた。

愛らしいまでの屈託のない笑顔は、信頼と親しみを表現していたよ。

まるで旧知の仲かのように、パロムを誤解されるほどだ。

それを『オルテガ』のベテラン商人たちは、衝撃をもって受け止める……。




―――ジーの一族の輸送能力は、想定の何倍かあるかもしれなと。

ジーの一族に関わらなければ、とてつもない大損をするかもしれない。

乱世で破壊的なまでの輸送能力を有する『ストラウス商会』に、通常の輸送では勝てない。

それが、ビビアナ・ジーとずいぶん親しい関係性にあるようなのだ……。




―――偶然も利用してこその、ビジネスということだよ。

ギャンブルと詐欺の要素は、商人の生き方と切っても切り離せないものだから。

ビビアナには運もあるらしい、それを何倍にも効果的に使う『演技』の力もね。

こうして、ビビアナ・ジーはより安全な立場になる……。




―――『オルテガ』の大商人からは、暗殺を狙われるリスクは消えたようなものさ。

ソルジェに嫌われたら、『オルテガ』商人は処刑されるかもしれないけど。

『ストラウス商会』に嫌われたら、ビジネス・チャンスを喪失するんだから。

商人として、どちらがより嫌なのかは明白だってことさ……。



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