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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百四十


―――若いのに、自分と大して違わないだろう。

しかも、『狭間』なのに。

呪われていたはずの存在が、人々を導こうとしている。

リーダーシップというものであり、それは教育か才能で培われるものだ……。




―――パロムは理解しているし、誤解もしていたよ。

リーダーシップというものが、自分に宿る日はないだろうと。

彼女はまだ若く、何よりも一介の戦士でいようとしたがっているからに過ぎない。

彼女ほど、地上を駆け抜けた若者はほとんどいないのにね……。




―――まあ、今はリーダーになりたいなんていう理想がないだけのこと。

そして、ビビアナに活躍が嬉しくもある。

『狭間』はパロムが知る限りでは、いつでも不幸になっていたから。

理不尽なことだけど、それがこれまでの現実だった……。




―――ビビアナの姿かたちが、『狭間』らしくないからかもしれない。

『血を盗んだ者』と呼ばれるほど、種族のあいだにいるような姿ではないから。

そういう力学も、たしかに働いているのだろう。

極北の勇者の一族らしく、シンプルでいたかったけれど……。




―――パロムは、ゆっくりと複雑な知性を獲得しているんだ。

世界は知れば知るほど、いくらでも複雑怪奇に変わっていくものでもあるからね。

何であれ、とても貴重な現実がまたひとつ手に入ってしまった。

シンプルに考えよう、自分はバカなのだから……。




「『狭間』であろうとも、人々を従わせる器があるんです」

「そうだ。ビビには、それがあるぞ。すごいだろ!」

「すごい……ああ。そうですね。すごい、ですけれど」

「何か、問題があるのか?」




「ちょっと、シンプル過ぎて、バカみたいな言葉に聞こえたんです」

「うっ。それは、私は、バカだぞ。だが、それでも……適格だったと思うのだ」

「正しいハズなのに。ちょっと、間抜けさがあるのは……」

「私のせいだよ。私は、本当に……賢さが足りない」




―――フリジアもあちこち痛む体なのに、ビビアナのそばにいようとしていた。

心配しているのさ、メダルドを失ったと考えているからね。

今の元気は、間違いなく無理をしているからだ。

フリジアも成長しているよ、多くの悲しみをやさしさで抱きしめながら……。




「物憂げな表情は、似合いませんよ。私たちのようなバカの一族には」

「ぬ、ぬう。それは、そうかもしれないが。ちょっとは、憂うのだ。お前だって、そうだろう?何かを、考えていたぞ!」

「もちろん。ですが、向いていないと判断したので、やめることにいたします!」

「な、なんだ。そのバカな結論は……っ」




「うらやましいでしょう、フリジア・ノーベル。この私の、潔さが!」

「え、ええと。そ、そうでもないぞ!?」

「強がりを。まあ、分かっていますから。そういう強がりをしてしまうお年頃でもあると!」

「い、いかんな。アタマ悪い者同士がそろうと、ヘンテコな会話しかやれんぞ」




「分相応です!私のような戦士は、ただ槍とユニコーンと共に、敵に突撃すればいいだけのことだと、思い知っただけ!難しいコトは、副社長のロロカさまや、社長にお任せすればいい!」

「社長ってのは、ソルジェ・ストラウスだろ。あれも、そんなに賢いとは」

「我々よりは、賢い!」

「た、たしかに……ッ」




―――竜に乗って、竜太刀を振り回す北方野蛮人。

それがソルジェを端的に評価した味方であり、ずいぶんと知性に欠けている気配があった。

そんな人物よりも、自分たちがバカだと認めることはフリジアには屈辱だったよ。

教養はある方だと信じたかったが、ビビアナを前にすれば自尊心は吹き飛んだ……。




「私は、アホだったのだ。色々なコトを、見えていなかった」

「それに気づけただけでも、私たちとしては上出来なのです!」

「そ、そうか?さすがに、ハードルが低すぎるような……っ!?」

「賢い人たちに、委ねるのです。『ディアロス』の戦は、そうしておくとだいたい勝つので!」




「うーむ。だが……アホなりに、考えたいコトも多くあるのだ」

「ふむ。どんなコトでしょうか?」

「神学について、などなどだ」

「しんがく……?神々についての、何か……ですね?」




「私より、だいぶアホなのかもしれんな」

「シンプルであり、純粋なのです」

「ずるいぞ。言葉の綺麗さで、間抜けさを誤魔化しているように思える」

「それで。神々について、何を迷うのですか?あなた方の女神は、社長に殺害されたじゃないですか?」




「いや、女神イースはそもそも不滅で」

「死んだのに?不滅?」

「心のなかでだ。私のなかには、信仰がまだ生きておるのだ。『カール・メアー』の巫女戦士に戻るつもりはない……が、あらゆる考えを否定しているわけでもない。もちろん、ビビもミアも大切な親友だ。教義には反していても……でも、何というか。『カール・メアー』は、ただ誤解しているだけのような気がしていて」

「意味が、分かりません」




「う、うむ。私も迷っている」

「具体的には、何をしたいんですか?雪嵐の日では、磁石を頼ったりして、行き先ぐらいは把握するものです。何をしたいのか、シンプルに、たった一言で!」

「『カール・メアー』を、変えてしまいたい」

「……ふむ。それは、面白い試みですね。ぜひ、変えてください。あなたのようにね。そうすれば、とても良いコトが起きそうです!」




「……具体的には、どんな?」

「『狭間』が、傷つかずに済む世の中を、私は見たい」

「……そう、だな。そうだ。私もだ」

「助けられなかった母親と子供がいます。それは、私が無知だったから。『狭間』が、どれほどの苦しみをこの大陸で受けているのか、知らなかった。それは、私の罪だ」

「世界そのものの罪だ。お前の罪ではない」




「いいえ。知っておくべきでした。こうして『曙』がそばにいてくれて、『ストラウス商会』もあるのです。あの子にも、あの母親にも……私は、きっと、居場所を与えてあげられた。これは、間違いではありません。そうでしょう?」

「……うむ。それは、そうだった。だが……」

「罪とか罰だとか。そんなややこしいモノは、考えないようにすべきです。大切なモノは、やはり純粋なことが多いはず。『助けたければ、助けるだけのこと』」

「……おお。それは、とても正しいな!」




「ええ。私は『ストラウス商会』の社員で、社長ならびに副社長の命令に絶対服従、完全なる戦士として命を戦場に捧げる覚悟ですが……その使命以外に、ひとつ、自分のルールを決めましたよ」

「……いかにも、聞いて欲しそうだな」

「もちろん!そのための、会話です!」

「お、おう。何だ?その自分のルールとやらは?」




「『狭間』とその母親を、絶対に『ストラウス商会』に誘うのですよ!見かけたら、片っぱしからね!『カール・メアー』だとか、帝国軍に殺されるより前に、『曙』で運んでしまえばいいのです!何ならば、無理やり、力尽くに、奪ってしまってもいい!」

「強引ではあるが、正しいかもしれんな」

「そうです。死ぬよりは、マシです。見てください。そこに、良き例がある」

「ビビか。たしかに、良き例だ」




「商いに、ついてです」

「う、うむ。経済は、苦手な分野ではあるが……どんと来い!」

「『とても大きな商売』は、どうやら人々をひとつにまとめたり、つなげたりする力があるようなのです。それは、戦の力と似ているようで、ちょっと異なっているような……えーと。つまり?」

「わ、私に聞くなよっ!?」




「ああ。質問に向いた相手では、なかったですもんね」

「……そうだけど。そう言われると、ちょっとムカつくな!」

「とにかく!『ストラウス商会』や、ビビアナさんのお仕事に、『狭間』をどんどん巻き込んでいけばいいと思ったのです!そうすれば、『狭間』の居場所が広がるから!」

「……おお。それは、すごく良いな」




「ええ。生きていくためには、お仕事がいるのです!数百里を駆け抜けて商品を運んだり、槍一本で敵の群れに突撃していったり……そういった我々、アホに向いたお仕事がある一方で、もっと難しくて、大きな組織を作ってくれたりする……そう。『とんでもなく大きなお家』を作れる賢い人々がいる。サー・ストラウスだとか、ロロカさまだとか、ビビアナさんも。そういう方々を、私も、支えてみたいのです。何も、面倒なコトを考えずに……ただ、信じて突っ走る!それが、私らしい!なので、ちょっと暴走してこよう!」




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