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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百三十六


―――旧き契約のスタイルによって、二人の商人は契約を結ぶ。

シモンの協力は、メダルドにとっては貴重な人脈の形成となった。

暴走しかねない若く末端の商人たちを、シモンは統制してはいないけれど。

顔と名前と住所ぐらいは、ほとんど完璧に把握していたからだ……。




―――『彼ら』の直接の親方たちには、ソルジェやジーの一族の力を及ぼせるからね。

間接的に危険な人物たちを、制御することも難しくはない。

ジーの一族の社員たちを派遣して、個別の交渉で『彼ら』を取り込む工作も可能になる。

その見返りに、『オルテガ』はアイデンティティと呼べる古き宝物を取り戻すのさ……。




―――緊張感はあるものの、双方にとって利益のある契約だ。

シモンはさっそく、取り戻すべき宝物のために動き始めたよ。

メダルドから情報を聞き取ると、メモに書き記していく。

可能な限り、すべての宝物を取り戻すために行動するつもりでいた……。




―――メダルドが確保していない品については、かなりの努力が必要だろうけれど。

テロリストまがいの行動力まで発揮するのであれば、上手く成し遂げるさ。

愛国心という情熱は、かなりのことをさせてしまうから。

メダルドから情報を得ると、シモンはブッチの家から足早に出ていこうとした……。




「私の同胞たちに、この契約について教える」

「……殺されないようにしろよ。オレと契約したことで、激怒する者も出かねない」

「気をつけるさ。生き残るための交渉術は、用意している。私が死ねば、奪還すべき品々についての情報を得られなくなるからだ。すべてを、一気に話すことはしないよ」

「……余計な世話だったようだ。良き取引を。我らの契約のために」




―――目を細めたまま、シモンはうなずいた。

顔を上げると、楽しそうに笑っていたよ。

商人としての日々に、戻れるからだ。

いくらか罪悪感は軽くなり、建設的な日々を送れると信じている……。




―――夏の日差しのなかに、飛び出した。

暑い日差しからは、救いを感じられる。

ヒトが喜びを得られる瞬間はいくつかあるけれど、今もその瞬間のひとつだよ。

『生き直せる機会』は得難いものだが、大きな喜びに包まれた……。




―――その回数は、おそらく有限のものではある。

でもね、ヒトには生き方を変えられるのさ。

シモンの罪は完璧に消えることはないが、それでも数分前とはあまりにも違う。

ビビアナ本人にではないが、彼女の保護者から一応は許された……。




―――自分を縛りつけている、後悔の念から自由になる。

完全にではなくとも、いくらかはね。

絞め殺されそうな重みは、ずいぶんとマシになる。

監獄から解放されたような気持ちらしいよ、『生き直す』という瞬間は……。




―――新たな生命が身体に吹き込まれたように、シモンは元気だった。

勝利の歓喜と、新たな戦いに備えて城塞補修のために動き出した職人たちの声。

どう猛なまでの生命力に満ちた歌のなかを、まるで子供みたいに全力で走る。

善き者になれるよう、生き抜こうと誓っていたよ……。




―――いつか、あのときのような瞬間に遭遇したら。

今度は、自分自身を制御できるだろう。

戦場からの誘惑を断るために必要なものは、教訓と経験値だった。

恐怖には順応してもいける、シモン自身は善良であろうとした男だしね……。




―――これからのシモンは、『狭間』に対してもやさしく接するだろう。

これまで以上に、亜人種の友人たちにもね。

メダルドにとって最も重要なことに、ビビアナを狙うことはない。

それだけは確実だ、この行き直せる幸福な快感を知れば絶対だよ……。




「私は、より善い者になりますよ、『ギルガレア』。貴方に誓いましょう。見ていてください。『オルテガ』のために働き、『自由同盟』のためにも働きます。ジーの一族に生まれた、『狭間』の乙女のためにも。それは、矛盾してはない。ようやく、私は……この勝利を、歓喜できるでしょう」




「……いい働き手に、なってくれるだろう。まあ、元から善良な商人だった。ビビアナを殺しかけたことは、水に流そう。殺せなかったことに、何か運命めいた祝福があったと信じるために」

「あなたは、本当に姪っ子ひと筋なんだな」

「……そうだ。あれほど可愛い姪を持てば、誰にでも分かる」

「ハハハ。たしかに。素晴らしいレディーだ」




「……そうだ。素晴らしい子だよ。『狭間』であることで、苦しむこともない。苦しめられる必要もない。オレは、そういう未来を作るためになら、何だってするんだよ。タイズン、他にも、会いたい商人がいる」

「そ、そうだね。私も人脈を広げたり、根回しや地固めしたりと、ビジネスはしておきたいのは、やまやまなのだが……すこしばかり、トラブルがあってね」

「……どんな、トラブルだ?」

「解決してくれるのかよ、ジーの一族の長さん?」




「……内容次第だよ、肉屋のブッチ。言ってくれ。オレは、『オルテガ』商人とのあいだに絆を作っておきたいのだ」

「分かっているよ。可能ならば、ちょっとばかり……護衛を回して欲しいんだ。命を狙われているかもしれんからな」

「……命を狙われる?誰にだ。言ってみろ」




「クリア・カニンガムだよ。あいつは、リヒトホーフェンについて、帝国軍のために動いていた。オレと、そこにいるタイズンは、あいつの敵になってしまったんだ」

「……ああ。カニンガムならば、問題はない。あいつは、死んだらしい」

「し、死んだだって?……どうして、分かるんだ」

「……記憶が、戻りつつある。オレ以外の者の記憶もな。カニンガムは、殺されたよ。『カール・メアー』の巫女戦士と、猟兵にな」




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