表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4468/5091

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百二十


―――ソルジェは、ガルーナ王になる男だから。

政治もちゃんと、覚えていかなくちゃならない。

ストラウス家の四男だから、元々は後継者として扱われていなかった。

帝王学や統治に関する知識を、ほとんど教えられちゃいない……。




―――それでも、この雷鳴みたいに巨大な声があった。

馬鹿にしちゃいけないよ、大声というものは政治家にとって大きな武器のひとつだ。

この広場に集まっていた全員だけでなく、戦闘で壊れた『オルテガ』の街並みに響く。

演説の強さとは、力の込められた声があってこそだ……。




―――実際、この雷鳴みたいに響く大声は多くの戦士と市民に届いている。

生まれたばかりの集団だからね、アイデンティティというものが足りていない。

『名づけ』ることが、理解においては大きいものだ。

『自分たちはどういった存在なのか』という問いに、明確な答えが要る……。




―――人間族もいるし亜人種もいる、本当に雑多な者たちがね。

戦闘という極限状態だから、成り立った群れかもしれない。

敵がいたから、すんなりと協力関係を構築できたんだ。

もちろん、それは盤石な絆と言えるものじゃない……。




―――つい先ほど、この広場でも起きていたからね。

『オルテガ』の保守系商人たちが、ビビアナを殺そうとした。

もっとソフトな言葉で説明してもいいけれど、分かりやすいものだ。

政治的な暗殺は、乱世ではいつどこで起きたとしてもおかしくない……。




―――むしろ、『自然な現象』と言うべきだろう。

商人たちは利益、政治家たちへ権力。

そのために命がけの戦いをして、殺し合いをしているのだから。

自分や自分の属する『群れ』のために、ヒトはいつでも不都合な者を殺そうとする……。




―――だからこそ、ソルジェはこの集団にアイデンティティを刻むべきだった。

『オルテガ』の者たちもいるし、『ルファード』やその周辺から来た者も。

それ以外の土地から、参戦している者も大勢いるんだ。

これほど混沌とした集団は、なかなかお目にかかれない……。




「我々こそが、『自由同盟』である!!あらゆる種族の生存を約束し、自らの故郷を外敵から解放するために手を取り合った!!最強にして、最大の戦友たちの同盟だ!!今日の勝利を、『未来』につなげる!!我々はファリス帝国を滅ぼし、これまでは届かなかった『未来』を、この手で勝ち取る者だ!!戦士たちよ、『オルテガ』の市民たちよ、歌えええええええええええええええええええええええええッッッ!!!」

『GHAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』



―――雷鳴は、役に立ったよ。

戦士たちは熱狂した、市民たちもだ。

彼らは『自由同盟』に対して、この瞬間から真なる深さで組み込まれた。

アイデンティティを得たのさ、故郷と種族の完全な調和のために戦う同盟の一員だと……。




―――空に歌う戦士たちは、至極当然のように納得した。

『オルテガ』の市民たちも、大半は納得したよ。

大半いれば問題はない、『王無き土地』において多数決という方式は絶対の権力だから。

わずかながら危険分子がいたとしても、それはしょうがない……。




―――いつだって『正義』は、殺し合って決めるものだから。

ソルジェやゼファー、そしてこの広場で『自由同盟』への所属を決めた者たち。

それだけの数を敵に回して、勝たなければならない。

それは、かなり不可能な行いだということさ……。




―――とにかく、この混沌とした集団に名前は付けられたんだ。

『自由同盟』は、その勢力を大きく広げることになる。

ソルジェは最大の功労者であり、『自由同盟』の大幹部だよ。

結果的に、また出世したというわけさ……。




―――だが、それよりも皆が結束できたことが大きい。

あらゆる種族が生きていてもいい世界を、創るための軍事同盟。

その一員であることを自覚できれば、人種も故郷も異なる戦友を受け入れやすくなる。

政治力というものの、正しい使い方のひとつだったね……。




―――少なくとも、ボクたちの掲げる『正義』においては。

『オルテガ』の極右たちだって、不安は解消されたかも。

ソルジェは手を差し伸べている、『仲間』だとね。

逆らわなければ、この同盟の名において『オルテガ』の防衛に尽力する……。




―――『オルテガ』以外の軍隊が、駐留することになるだろうけれど。

侵略しようという意味ではないと、旗幟鮮明になった。

同盟の仲間だから、他国の戦友もとなりにいるだけのこと。

『自由同盟』の目的は『オルテガ』征服ではなく、帝国打倒ただひとつ……。




―――ややこしいけれど、大切なことだよ。

ボクたち全員が、一体どういう集団であるのかと自覚しておくことは。

議員たちが発表するべきことかもしれないけれど、そこはしょうがない。

若い熱狂の生み出す勢いを頼るのは、大きな成果を勝ち取るためには必要不可欠だ……。




―――政治的な儀礼や手順などよりも、今このときの主張が有効なのさ。

現に皆が結束しているのが、目で見えるほどだからね。

一通りの熱狂のあとで、ソルジェは指示を出した。

帝国との戦いに備え、街の守りを固める作業を再開しなくちゃならない……。




―――それこそ、元からあった戦術だからね。

女神イースが襲撃した方が、イレギュラーだった。

予定通りの形に、皆はすばやく戻っていく。

士気は上がっているよ、女神殺しの『自由同盟』の一員同士として仲もいいさ……。




―――問題は、なかった。

もちろん、あらゆる者がそうであるとは限らない。

ミアがゼファーの背から、飛び降りた。

喜びと悲しみを抱く者のために、石畳を蹴りつけて走る……。




―――ゼファーの背に、メダルド・ジーが不在だったから。

ビビアナは、悟っていたんだ。

ソルジェとミアは全力を尽くしたけれど、達成できなかった願いもある。

そもそも無理難題ではあったのだ、女神の生贄となった者を取り戻すなど……。




「……ビビ、ごめん。ごめんね」

「ううん。いいの。わ、分かっているから。ちゃんと、分かっている。がんばってくれたこと、知っているから。だから、あなたが謝る必要なんて、ないんだから。ミア、ありがとう。あなたが無事に戻ってくれて、嬉しいわ」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ