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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百十八


―――ロロカ・シャーネルの瞳は、しばらくのあいだ壊走する敵の背を見つめる。

彼らの必死さは、客観的に見れば滑稽なものだったよ。

死の恐怖におびえて、生への執着にしがみついている。

それを猟兵があざ笑うことは、絶対にないものさ……。




―――これで、印象操作は成り立ってくれる。

ロロカは確信を得ていたよ、逃げ帰った帝国兵どもは我々に有利な証言をすると。

『弱った演技をしていやがったんだ』、そういう発言をするかもしれない。

仮にしなかったとしても、あれだけの破滅的な損害こそが物語るだろう……。




―――あの有り様を、帝国の将兵が目にしたとき。

我々が『弱っていた』などと、誰が判断するだろうか。

『オルテガ』周辺から情報が流れていくかもしれないが、それにも時間の差がある。

猶予があれば、女神イースの権能による被害は回復してくれるはずだ……。




―――我々にとって、サイアクなことは言うまでもない。

休みを与えられることもないまま、攻め込まれることだからね。

それを避けるためには、この戦果はちょうど良いものだった。

ロロカはカミラが女神イースの権能に対処できた、という幸運を利用し切ったよ……。




―――すばらしい判断だ、おびただしい数の勲章を授けてあげたいほどだ。

この戦果については、クラリスはもちろん他国の指導者たちにも告げておく。

政治力とお金は、戦争で勝ち取るべきものだからね。

十分なものを、ロロカと『パンジャール猟兵団』は得られるはずだよ……。




―――敵にも、評価されることになる。

それは、マークされるというネガティブさもあるけれど。

信じられ恐れられるという、まるで神さまに対するような感情も得られるだろう。

我々は破壊的ではあるが気高くスマートな戦い方をして、捕虜を殺すことはない……。




―――捕虜になっても、死なないと信じてくれるのであれば。

死ぬまで徹底的に抗う敵兵も、減ってくれるよ。

それに、向こうも捕虜を取ろうとしてくれるかもしれない。

亜人種の捕虜と、帝国兵の捕虜を交換するというアイデアが生まれるからだ……。




―――どういう形であったとしても、敵との交渉ルートは確保しておくべきだよ。

とくに、ロロカみたいな賢くて交渉と取引の達人はね。

敵からだって、多くの利益を得られるものだ。

鋼を頼っての殺し合い以外にも、利益を勝ち取る方法はいくつかあるのだから……。




―――ロロカはさっそく、商人の交渉ルートを機能させようとしている。

敵が基地にたどり着くのと、ほとんど同時に旅商人の一団も到着するように手配したい。

旅商人たちの口が、ロロカの代わりに語ってくれるのさ。

こちらの捕虜と、そちらの捕虜の交換について……。




―――あるいは、亜人種奴隷を『捕虜との交換を材料にして買い取る』とも。

帝国軍から、可能な限り多くの仲間を奪い返したい。

捕虜交換の期間に、戦闘行為が必ずしも弱くなるとは限らないけれど。

現場の兵士の攻撃の意志を下げることには、役に立つ……。




―――自分の同胞たちの命を、誰もが助けたいとは思うものだ。

軍隊の構成というものは、およそ出身地に依存するものだから。

捕虜のなかには、確実に昔ながらの知人や友人や兄弟親族がいる。

それに、自分たちも捕虜となるかもしれない……。




―――死をも恐れぬ勇者というものは、多くはいないものだよ。

ストラウス家だとか、ディアロスみたいな北方の勇者ばかりじゃない。

いい交渉を、ロロカはしてくれるだろう。

だから、東についてはしばらく猶予が生まれたと判断していい……。




―――気にするべき方角は、やはりロロカも西になる。

帝国軍が『プレイレス』を奪い返されてから、その動向を鎮静化していた理由。

それにはいくつもの事実が絡み合っているけれど、端的なものがひとつある。

東西同時に攻め込むために、連携を構築していたということさ……。




―――圧倒的な物量で、攻め込むのが最良の策だ。

ちいさな戦闘では、こちらが有利だからね。

『とてつもなく大きな戦闘』で、津波のようにすべてを吞み込んでしまえばいい。

それを妨げるために、やはり猟兵たちは苦労することになるのだ……。




「ロロカ姉さま、捕虜どもを縛り上げ終わりました!矢や装備品の回収も、完了!」

「ええ。ありがとう。それでは、撤収を開始しましょう」

「はい!待たせている者たちと合流して、安心させてあげたい」

「孤立した状態では、不安になりますからね」




「そのはずです。帝国軍は、どこにでも姿を現しますから。『次』は……西になりますか?」

「あら。視線で、分かっちゃいましたか?」

「それも、ありますが。ちょっとは、戦略というものが私にも見えつつあるようです」

「良いことです。『オルテガ』で、何が起きたのかが判明してからになりますが……西に向かうことになるでしょう」




「ロロカ姉さまに、向く戦場になりそうですね。あちらは、かなり混沌としているみたいですから。賢さが、必要だと思います」

「おそらく、そうなるでしょう」

「戦場が、また広がるということですね。ゼファーの、出番です!」

「ええ。リエルの出番も。あなたの『宝石眼』は、エルフにとても有効なので」




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