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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百十六


―――この心理戦に、我らがロロカ・シャーネルは勝利したよ。

帝国兵どもは、逃げることに決めたんだ。

ロロカたちがあえて開けていた、北東の方向に向けてね。

戦場では、『圧抜きのための逃げ道』を用意しておくものだ……。




―――生きる希望にしがみつき、帝国兵どもは夏の暑さのなかであわただしく動いた。

戦況を完璧に読み切れる者ばかりではなく、この行動の意味を誤解した者もいる。

本当に包囲されて、せん滅されるかもしれないと。

少なくない数が信じ込むには、このあわただしい逃亡は信ぴょう性を持っていた……。




「は、早く!おい、急げよ!」

「亜人種どもに、ぶっ殺されちまうぞ……ッ」

「黙れ!落ちつけ!」

「バカ言え。落ちついてなんて、いられるかよ!」




―――敵に行動をあやつられているときほど、背中に冷や汗をかくことはない。

撤退という状況になると、戦士はどこまでも不安に陥るものだ。

仲間さえも、立ち止まってくれるとは限らない。

この逃亡の早足についていかないと、自分のことを誰もが見捨てるかもしれない……。




―――皆が、生き残ろうとする。

元気な者は、そうでない者たちを押しのけて前に前にと進むものだ。

あらゆる戦場で起きる、ごく当たり前の光景がそこにある。

助け合おうとする者もいるが、少数派だった……。




―――誰だって、基本的に他人の命よりも自分の命を大切するものだからね。

こういった道を選んでしまったときは、およその場合で隊列は維持できない。

ロロカたちの目の前で、いつものありふれた現象が再現されていく。

隊列は崩壊していき、誰もが死ぬ運命が決定する最後尾にはならないと競争した……。




「どけ!前に、前に……っ」

「オレには、故郷に残して来た家族がいるんだ!お前には、もう、家族なんて、いないだろうが!」

「そ、それでも、死にたくねえ……」

「生きるんだ。絶対に……」




―――撤退中の『しんがり/最後尾』を守るということは、死ねということだ。

たまにはそれで生き残り、活躍したというハナシも聞く。

でもね、それはあまりにも例外的なハナシだからこそ話題にもなった。

そして、そのいくつかの伝説は嘘だろうね……。




―――まあ、まず助かることはないよ。

その最悪のポジションから逃げるためには、誰もが理性を捨てるんだ。

当たり前だ、死にたくないから。

乱れていく連携は、隊列を完璧に崩してしまう……。




―――ロロカは、その隊列がしっかりと崩れるまで仲間を待たせていたよ。

ほつれて、破綻した敵の群れ。

体力の差が明確となり、前後に弱々しく間延びしていく。

密集すれば軍は強く、その逆はまったくもって弱くなるものだ……。




―――敵は最弱の陣形を、最強の騎兵隊たちの前にさらしてしまった。

ロロカは『白夜』にまたがると、すべての戦士たちの機動力を解禁する。

敵の背後から襲いかかり、逃げようとする帝国兵どもに死を与えていった。

これは戦だからね、もちろん残酷なものだよ……。




―――片っぱしから、弱者は狩られていく。

帝国兵どもは、武器も捨てて逃げる者たちまで現れた。

それをロロカは見逃すように指示を出す、ディアロスの名においての戦いだからね。

勇敢な敵から仕留めようとする美学を、いつなんどきだって忘れない……。




―――戦場では、職業倫理が大切だよ。

「何せ、ときには殺しに酔っちまうこともあるからな」。

「ヒトってのは、善良な生き物じゃないのは歴史書を読めば分かっちまうはずだぞ」。

「すべてのページに、血ぬられた戦いの物語が記述されているだろう」……。




―――ガルフ・コルテスの哲学は、傭兵らしい偏りを持ってはいたけれど。

ぐうの音も出ないほどには、真実でもあるよね。

歴史というのは、戦で誰が勝って誰が負けたのかということだ。

政治的な発明や、文化的な発展なんかもありはするけれど……。




―――大半のページで、ヒトはいつでも戦いをしていた。

「戦いというものを、ヒトは愛しているからだよ」。

「猟兵は戦いを愛してもいい、他のすべてのヒトと同じようにな」。

「だがしかし、戦いに溺れてはならん」……。




―――「そんなことをすれば、弱くなるからだ」。

「規律を失った無法の軍勢は、ワシが知る限りすべて滅びてきたからな」。

「一度や二度の戦いでは、邪悪で品性のない狂った暴力でも勝てるだろう」。

「しかし、いつまでもそうはならないものだ」……。




―――「誇りと、職業倫理に欠けた戦い方は尊敬をもたらさない」。

「ヒトは、極限状態になったとき信じるべき哲学を探すものだ」。

「こんなに殺し合いばかりしているのにね、おかしなことに『正義』が大好きなんだよ」。

「正しいことのためにしか、戦士は究極の力を出し得ないものだ」……。




―――「そのために、職業倫理で己を縛るといい」。

「どんな極限状態でも、自分たちの軍の全員が『絶対に信じられる鋼の哲学』だ」。

「そいつがあれば、最後まで力を出し切り奇跡を手にすることさえもある」。

「誇り高い集団は、敵からも敬意を受けられることも大きい」……。




―――「敬意を持たれるとは、相手から『どう動くか信じられている』ことだ」。

「こいつを逆手に取ってやれることも可能だ、攻撃的な軍が守備的な戦術をする」。

「ときに意表を突いてやることも可能になるし、相手に『予想させることも』できる」。

「つまり、『相手の動きをある程度こちらが決められちまう』んだよ」……。




―――「そいつは、とてつもなく有利なものだということが分かるはずだぞ」。

「ロロカ嬢ちゃん、こういう駆け引きはあんたが得意とするものだ」。

「商売や演劇の力であり、ポーカーみたいなギャンブルの力でもある」。

「嬢ちゃんには、とても向く力だからこそ覚えておいてくれ」……。




―――「敵の心さえ、誇りと気高さを帯びた行いは制するものだと」。

「賢いと、ときどき合理的な残酷さも見えちまうときがある」。

「ロロカ嬢ちゃんなら、戦に慣れたらいくらでも見えるようになるはずだ」。

「それでも変わらなくていい、ディアロスらしい誇りを信じていいぞ」……。




―――「そっちの方が、強いからだ!」。

「まあ、ときには残酷さがあってもいい」。

「戦術面では騙し討ちも正しい、だが究極的には忘れるなかれ」。

「戦士は、職業倫理を守った者が最強になれる」……。





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