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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百十四


―――敵の警戒は、かなり薄かったよ。

こっちが弱体化していたことを悟ってもいたし、あっちも疲弊しているからだ。

若い兵士を殺されて、ベテランだらけだからね。

この暑さのなかで、重たい装備と負傷者を抱えたままの移動はそれだけでも疲れる……。




―――わずかな数の偵察部隊を、もちろん自分たちの背後に守らせてはいたけれど。

もちろん大した問題には、なりやしないよ。

カミラが上空から一気に襲い掛かり、彼らのことを排除したからだ。

おかげで、敵はロロカたちの接近にギリギリまで気づけなかったのさ……。




―――戦場は、ロロカのデザインした通りの形になってくれる。

帝国兵どもに対して、ロロカたちは背後から猛烈な速さの突撃を行ったんだ。

ユニコーン部隊による、圧倒的な破壊力が容赦なく発揮された。

敵のベテラン兵士は、その瞬間に絶望していたよ……。




「よ、弱ったふりをしていた!?」

「そんな、バカなことがあるはずない!!」

「あ、あいつらは、弱っていた……絶好機を、わざわざ見逃したんだぞ!?」

「だが、実際に……こうして、奴らは追いかけてきやがった!!」




―――数十秒の突撃で、敵兵の陣形は瓦解していたよ。

リエルが孤立した敵に対し、矢を射ることでせん滅を開始していく。

ユニコーン騎兵の群れのあいだを、誤射することなく矢がすり抜けて敵に死を与えた。

敵は体勢を立て直すために、すぐさま動き始める……。




―――密集して、槍衾を構築していくんだ。

死地を何度も潜り抜けたベテラン兵士どもは、しぶとかった。

最後の最後まであきらめる気はないらしく、槍を構えて隊伍を組んだ。

組もうとしたが、出来上がったそれは何とも弱々しいものだったよ……。




―――ユニコーン騎兵と、通常の騎兵による奇襲的な突撃。

突き殺された帝国兵と、踏みつぶされた帝国兵の死体がそこら中に転がっている。

隊伍はすき間だらけで、それを修正するために身を寄せ合っていくものの。

出来上がったのは、あまりにもちいさな集団だった……。




―――ロロカたちは、立ち止まってしまった敵を包囲しにかかる。

東に戻りたい敵の進路をさえぎるように、ユニコーン騎兵たちが並んだ。

戦力の差は、この状態になってももちろん敵の方が多い。

ロロカは『不完全な遮断』を作ることで、敵に選択肢を委ねた……。




「これは足止めのようにも思えるはず。私たちの仲間が、背後からゆっくりと近づいているように。生き残りたい者は、そう考えるでしょう。そして、あなたたちは、そういう哲学の指揮にもとづいて、私たちに背を向けた。死があたえてくれる軍事的な伝説よりも、生きて自軍に合流したいと願った。さあ、どうしますか?」




「ほ、北東になら、抜けられるかもしれん。あちらも、数が完璧ではない」

「こっちも援軍を待つのは、どうだろうか……ッ」

「敵も、『今』は数がそれほど多くない。強引な突撃は、できん……」

「だ、だが……時間をあたえれば、それだけ追いつかれるかも……」




―――偵察に残していた部隊が、気づけなかった。

カミラによる空中からの襲撃だから、気づけるはずもないが。

こちらの戦術を、向こうは知らないからね。

背後が恐ろしくなっていたよ、すぐ近くに敵がいるような気がするのさ……。




―――味方からの合図を、彼らは探した。

偵察部隊の生き残りがいれば、狼煙を上げてくれるはずだからね。

彼らの視線は、あわただしく動いた。

目の前にいるロロカたちと、不安と想像力が招いた背後に迫りくる敵の影を気にする……。




―――不安になれば、想像力は負の方面に突き進みやすいものだ。

帝国兵どもは不安に駆られていき、心を消耗させていく。

情報を欲していたよ、この状況でより多くが生き残る術を見つけたいんだ。

でもね、偵察部隊は全滅している……。




―――焦らす時間が、続いたよ。

炎天下のなかで槍を持ち上げているのも、かなり疲れる行いだ。

でも、とっくの昔に疲れているから構えを解く気にもならない。

本当に疲れたときは、休むと二度と動けなくなるものだからね……。




―――気力が大いに状況を支えている、彼らは気づいてはいなかったけど。

わずかながらに女神イースの権能に、体力と魔力を吸われてもいたのさ。

距離があったから、自覚できるほどの量ではないよ。

わずかなものだが、すでに行軍と戦闘と夏の暑さで疲れていたんだ……。




―――ロロカの『読み』は、また当たったのさ。

ソルジェに追いつめられた『敵』は、人間族からも魔力を吸っていたと。

わずかな吸収ではあるが、ベテラン兵士にとっては大きな問題となる。

ロロカは精神的な揺さぶりも、忘れなかったよ……。




―――定期的に『意味のない角笛』を吹かせ、敵に不安をあたえたんだ。

あたかも今から突撃を仕掛けるぞ、というようにね。

そのたびに、帝国兵どもは警戒を強めて守りを固めようとする。

弄ばれているだけだと、半ば気づき始めたときに新たな策が追加された……。




「の、狼煙だ!」

「味方が……生きて…………」




―――狼煙には約束事がある、これは信号だからね。

煙の色と、それらが遮られたりするリズムやペースが信号となる。

情報を伝達してくれる、古くからある伝統的なものであるがゆえに。

軍隊や部族により、特色というものが生まれているものさ……。




―――帝国のベテラン兵士どもは、気がついたよ。

それらの狼煙は、おそらく自軍のものであると。

だが、空に刻まれた黒い煙の信号は敵のものだった。

彼らは自分たちの偵察部隊が狩られていたことを、再確認する……。




―――ロロカの部下である、ディアロスのひとりがそれを行っていた。

ディアロスの狼煙の上げ方であり、意味は『煙を上げろ』だけ。

それに応じたのは、ロロカたちより『前進』していた部隊だ。

こちらの偵察用の部隊であり、作戦用の部隊でもある……。




「ひ、東からも……帝国軍の煙の、い、色だが……っ。敵の、狼煙だ!?」

「敵は、さ、さらに前方にいるのか……っ!?」

「先んじて、攻撃を加えていたとでも……」

「おのれ、亜人種どもめ……ッ」




―――偵察部隊から奪った狼煙を、数名のディアロスが上げただけ。

ただの脅しではあるけれど、敵にとっては悪夢よりも有効な心理攻撃だ。

もちろんそれに気づいていたベテランもいるだろうが、疲れと不安は判断力を弱くする。

彼らは誤解したんだ、『遠からず包囲は完成する』だろうと……。




「そうなれば、全滅するでしょう。もちろん、私たちはそんな戦力を持っていません。でも、『それを成すために私たちが疲弊した演技を見せつけていた』かもしれませんね。さあ、選んでください。『逃げ道』を北東に用意してあげているのは、『私は全滅させなくても満足する』という意味だということは、もう分かっているでしょうから」




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