表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4460/5086

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百十二


―――ロロカの賢さは、自分の視野が及ばない場所にまで到達する。

知性は未踏の分野さえ、把握させてしまうものだ。

『白夜』と共に、その戦闘能力の高さは猟兵のなかでも上位だと思うけれど。

戦場での能力だけでなく、この知性こそが彼女の評価を数倍に上げてしまう……。




―――もちろん、良い点でもあるし悪い点とする者もいるだろうけれど。

戦闘行為の最中でさえ、作戦を変更して即応性を作り出すなんて。

上手く行けば最高だけど、根拠とする情報が乏しいという側面は否定できない。

手堅さや、計画性を絶対的に重視するタイプの戦術家からは嫌われるだろうね……。




―――あくまでもタイプの違いだ、即応性と判断力と度胸の『守備』。

計画性と連携を重視する『攻撃』、戦術家はその二局化で分類すると理解しやすい。

どちらかに偏ることで、特徴的な強さを発揮できる。

盾と矛は、それに至る構成の時点で大きなちがいがあるということだ……。




―――ロロカは、待っている。

一般的な『守備』の指揮官であれば、大いに焦っていたかもね。

でも、ロロカは焦ってはいない。

むしろ、いい機会だとも考えていた……。




―――大学教授としての肩書きもあるから、彼女は教えたがりなんだよ。

すぐそばに、教えるべき生徒がいた。

もちろん、我らが弓姫リエル・ハーヴェルのことさ。

リエルは賢いとまでは、言いがたい頭脳の持ち主だね……。




―――読書好きでもないし、座学を好むとは言えない。

だが、地頭はいいんだよ。

狩猟の種族の姫君として、有能な戦士に囲まれて育ってもいる。

知性でなくても、経験値で判断力を獲得する方法だって実戦的だよ……。




―――ロロカの授業が、リエルにほどこされていく。

『もしも』を含んだ、状況分析だった。

ロロカは十五パターンの戦闘予測を、アタマのなかに描いている。

もっと多くを思い浮かべることも可能らしいけど、あまり多いと迷うから嫌らしい……。




―――『攻撃』の戦術家であるガンダラなら、無数の選択肢を吟味することを好む。

どちらが正解かというわけでなく、それぞれの考え方の傾向の結果さ。

十五のパターンのなかから、ロロカは『ありえそうな形』を三つにまで厳選する。

二秒もかけずにね、リエルの理解力には三つもあれば許容量ギリギリになるからね……。




―――実用性にこだわるのは、女性的な感覚かもしれない。

男の方が、おおよその場合で遊び過ぎるようになるものだよ。

その違いを上手く利用すれば、お互いが平和に生きられるような気がしている。

ボクとガンダラとソルジェが戦略を語り合えば、遊びながらあり得ない戦も妄想する……。




―――ロロカは、そういう我々の妄想を時間の浪費と考えてくれる人物なんだ。

世界は異なる人材で、互いに干渉しながら支え合うべきだね。

とにかく、ロロカはリエルのために戦略を簡略した。

南の敵が『停滞』する『進軍』する『後退』する、そのどれかだけでいい……。




―――こちらに『後退』してくるのなら、敵の追撃はあきらめるべきだろう。

『進軍』なら、気にせず敵を叩いておくべきだ。

『停滞』が、最高になる。

敵は完璧に作戦遂行能力を失い、最も弱い状態で孤立しているからだ……。




「ふむっ。南に向かった敵どもは、攻め込むために出かけた部隊ですからね」

「どんな敵だと、思います?」

「出世欲や金銭欲、野心も多いはず」

「その通りです。そして……」




―――教師らしい誘導の問いかけに、リエルの想像力はあやつられた。

思考には、呼び水を注いでやるといい。

ここは戦場ではあるけれど、学びをしている瞬間だから。

教育的な技巧は、すばらしく有効に機能してくれるものだよ……。




「『攻撃』を好む部隊というものは、連携を好むものです」

「そう。彼らは、少数であり先駆けを行った部隊」

「こちらに引き返すことも、計画として考えていたはずですね!」

「ええ。だから、彼らが最も『壊滅している状態』は……」




「攻めることも、戻ることも出来ない状態……のはず!」

「ええ。完璧な評価とは言いませんが、およそ当たる。根拠を増したいときは」

「こちらも偵察を行うか、あるいは……敵が戻って来てしまったときの足止めを考える」

「いい答えですよ、リエル」




―――ほめて伸ばすタイプの、やさしい教師だね。

ロロカはリエルの戦場での経験値を、勝っているから論理的な考えが貧弱でも見逃す。

リエルならば、戦場の気配を誰よりも早く察知はするからだ。

もしものときに、素早く部隊を掌握して退却させるカリスマ性もあるだろうからね……。




―――ヒトに命令するのが上手い指揮官と、行動と態度で掌握するのが上手い指揮官。

リエルは、どちらの才能もある『宝石眼』の弓姫さまだよ。

敵との間合いの管理を間違えない限り、彼女の指揮する部隊が負けることはない。

だから、リエルの場合なら十分なのだとロロカは合理的な教育を施していた……。




―――完璧な才能を、用意することは不可能だ。

そもそも、そんなものは不必要でもある。

補うべき弱点を把握している方が、より協力体制を構築するのが早いこともあるからね。

自分より向いた者に仕事をあたえる、それもまた指揮官の力なんだから……。




―――ロロカはリエルを、最高の戦場指揮官に育てたがっている。

単独の戦士として、弓使いとして魔術師として。

とっくの昔に大陸最強の一人になっているから、あとは組織戦の指導力を磨くべきだ。

『宝石眼』の権威と、圧倒的な弓の技術はカリスマ性があるからね……。




―――将として育てるには、とても良い素材ということだ。

ロロカに勝る将になれる可能性は、かなり低いけれど。

知性でなくカリスマ性が強さをあたえることも、多々あるものさ。

統率能力というものは、実務的な力とはまた別のセンスでもある……。



「……ふむっ。では、早く……連絡が欲しいところですね」

「落ちつくように。こういう時間に、戦術や『次の展開』を考えておくのです」

「は、はい。それが、とても生産的ですよね!」

「ええ。それに……猟兵は優秀です。情報を、そろそろくれるでしょう」




―――言っているそばから、上空のカミラに反応があった。

無数の『コウモリ』が、隊列を組んで地上に伝えてくれる。

ロロカとリエルが、ふたりとも同じ笑みを浮かべていた。

猟兵らしく、牙を見せるような微笑みだよ……。




「敵は、立ち往生している!チャンスです、ロロカ姉さま!」

「ええ。背を見せた敵を追いかけ、蹴散らすとしましょう!」





評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ