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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百八


―――孤高と孤独の類似点を、古強者が考えていたとき。

海中から銀色の影が飛び出てきた、竜と同じく伝説の存在である『人魚』だ。

レイチェル・ミルラは、船べりに華麗な着地で帰還する。

ゾロ島のキケはゆっくりとしたリズムの拍手で、彼女を讃えたよ……。




「お見事だ、『人魚』の姉ちゃん。かなり、大活躍していたんだろ?」

「フフフ。朝飯前です。そちらも、ご無事でなにより」

「あの竜に、助けてもらえたようだ」

「ルルーシロア。こちらを見ていますね」




「あんたを、見ているらしい。何か、因縁でもあるのか?」

「ゼファーとの決闘めいた行為を、邪魔して差し上げたのです」

「……そいつは、あれか。竜と、竜の戦いに、あんたは介入したと?」

「ええ。猟兵なので、さほど不思議なことではありません」




「それなりに人生経験を積んできたはずだが、まだまだ知るべきことは多そうだ」

「私もですよ。『侵略神/ゼルアガ』のたぐいと、連日で戦うことになるのは初めてでした」

「ゼルアガ……なるほど。竜が、二匹も現れるわけか」

「さすがに、こちらの戦力は疲弊してしまいましたが……どうにか、してくれそうですね」




―――『人魚』の感覚が、風を読んでいたよ。

西から東へと流れる風に、水から上がったばかりなのにもう濡れていない銀髪を揺らす。

その風を、あやすように手でなでていた。

上空では、ルルーシロアに動きがある……。




「あの竜が、東に……」

「ゼファーとは違い、連日の戦いではありませんから」

「まさか、まだ戦うと?」

「試してみたいことでも、あるのでしょう。あの子は、喜んでいる。うろこを波打たせて。何か、戦いについてのアイデアでも思いついたのです。西からの風に、乗った」




―――さすがのルルーシロアも、『人魚』には行動を読まれてしまうらしい。

レイチェルと戦うことも考えつつも、選んだのは自らの発想を試すことだよ。

女神イースが行使した権能が、ヒトの肉体にどういった反応をしていたのか。

その力学を探るために、その影響下から戻りつつある者を『捕食』してみる気だ……。




―――イース教徒の多い、帝国兵どもの一団を見つけていた。

ジャンが単独での警戒を行っているその場所から、十キロも東側。

そこには『オルテガ』へ向けて、進んでいた帝国兵の部隊がいた。

女神イースにより魔力を吸い上げられ、疲弊の影響で座り込んでもいる……。




―――追い詰められたとき、人間族からも魔力を吸ったからね。

その被害者でもあり、ルルーシロアの調査対象としては打ってつけだ。

『オルテガ』の近場にいる者には、すでに魔力が還元されていたけれど。

そいつらはまだ『戻りかけ』だと、ルルーシロアは理解する……。




―――捕食することで、魔力の質や状況を把握することも可能だから。

戦うことでも、どの程度の影響が起きていたのかを推察できるだろう。

ルルーシロアはまだ仔竜だが、竜の一体だからね。

ボクたちヒトよりも高度な知性と、異常なまでの分析能力がある……。




―――ゼファーよりも、年上の『耐久卵の仔/グレート・ドラゴン』だ。

ヒトとのコミュニケーション能力は、幼くもあるけれど。

その賢さはヒトの想像が及ぶような領域にあってくれるとは、限らないものだ。

ルルーシロアは竜らしく、強さに対して何よりの貪欲さがあり常にそれを追求する……。




「ずいぶんと、喜んでいますね。おかげで、こちらも助かりますよ。割かなければならない戦力と警戒が、少しでも減ってくれますから」

「さすがに、連戦が響いているんじゃないか?」

「もちろん。リングマスターが次に向かうべき戦場は、決まったようなものです」

「東では、ない」




「フフフ。さすがですね。潮目を読むのは、得意ということでしょうか」

「……願望も、あるよ。『ルファード』を落とされるようなことは、して欲しくない。あそこは、ワシら亜人種にとって、憎しみの深い土地でもある一方で……大きな転機を得た土地でもあるのだ。考えられるか?大勢の亜人種が、『人買い』ジーの一族の支配する街に集まり、守るために戦ったんだぞ」

「貴重なことです。巨敵があってこその協力かもしれませんが、そうだとしても、やはり象徴的な変化でもある」

「ああ。こんなことが起きるなんて、一週間前のワシは考えなかったんだ。それぐらいの奇跡だ。『自由同盟』ってのは、亜人種も人間族も参加するんだろう。それなら、あそこは守りたい……正しいだろう?ワシらは、帝国よりも、ずっと人数が少ないんだから」




「ええ。『西』に対して、妨害工作をしなければなりません。しばらく東でルルーシロアが暴れてくれれば、我々にも余裕が生まれる。貴重な幸運です。ルルーシロアに、命じることはできませんからね」

「……あの竜は、やはり、ワシらの守り神らしい。ヨメが、喜ぶ土産話が増えたよ」

「愛妻家なのですね。とても、良いことですよ。私の亡き夫も、とてもとても、私を愛してくれていました。私のお腹にいた息子のことも」

「守ろうぜ。あんたらには、ゾロ島の漁師は絶対的に協力する。何でもすると、ストラウス卿に伝えておけ。『西』に詳しい者も、少なからず知っているからな。あの土地は、ろくでなしが多いんだ」




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