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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その四百七


―――ルルーシロアは考えている、自分が成し遂げたことをね。

『オルテガ』で勝利を喜んでいる戦士たちを見下ろしていると、既視感がある。

つい先ほど、亜人種の漁師たちから得られたものと同じ質がそれにはあったから。

悪い気はしない、強敵を倒したことで喜びを得られるのは竜もヒトも同じと学ぶ……。




―――それでも、竜とはヒトよりもはるかに自由であるべきだという自負は揺るがない。

まして、ヒトのために戦ってやるなどというのは例外的なものである。

自分が戦ったのは、そうだ。

この大きな勝利を味わいたかったからだし、敵が気に食わなかっただけ……。




―――学んだものはある、ミアを背に乗せて戦うことで。

また新しい技巧の解釈を手に入れた、ゼファーの使ったガルーナの竜の飛び方も盗めた。

有意義な時間であったと、評価しておくことにする。

それ以上の価値は、おそらくありはしないのだと信じながらも……。




―――いずれにしても、竜というものはヒトよりもはるかに自由だから。

どんな好き勝手で、気ままな振る舞いも許される。

中海の底でひと眠りしてやろうかと考えていたが、その前に寄り道もいい。

亜人種の漁師たちのいる船の上空を、飛んでやったのだ……。




「おお!赤い竜!」

「いや、白いけど!」

「どっちでもいい!竜は、竜だから!」

「おかげで、助かったみたいだぜ!」




―――若い漁師たちは、歓迎の声を。

あの疲れ果てていたドワーフの男も、今はどうにか意識を取り戻せている。

女神イースが吸い上げていた魔力のいくらかが、地上へと戻っているようだ。

贖罪のつもりというわけではないだろう、たんに雪のように上空から落ちただけ……。




―――遠くまで、その魔力が行き渡るかは分からないものの。

もっとも魔力の吸収が深刻であった、『オルテガ』周辺には確かに降ったのだ。

それらは魔力を奪われた者たちの身に、戻っていく。

気高いルルーシロアは、自分がそのことに安心しているとは思わない……。




―――知識をいくらか継承する竜であっても、知らなかった未知の現象。

それを学び取るための、機会として観察しているだけのこと。

魔力を高度に制御する、理不尽なまでの力。

『侵略神/ゼルアガ』どもの権能、それをルルーシロアは観察したい……。




―――いや、竜らしく傲慢な向上心というべきだろうか。

『神々の力をも使えるようになりたい』、そんな考えに至っているんだよ。

女神ごときが使えるのに、竜が使えないはずはないと。

さすがはルルーシロアらしい、とても傲慢な発想だったね……。




―――人々から魔力を吸い取るなんて戦い方を、ルルーシロアが好むかはともかく。

似たような戦術を修得できれば、対処も行えるわけだから。

彼女は悔しくもあったのさ、ソルジェの見せた力についてね。

『ギルガレア』から与えられた力とはいえ、『もう一つのオルテガ』を召喚したんだ……。




―――ヒトならざる、神々の力を任意で使ったことになる。

いきさつを知らないルルーシロアからすれば、嫉妬と研究の対象のひとつになった。

『アレは異常な者だ』という理解も、賢い彼女はとっくにしてはいるよ。

竜が混じったヒトは、どこにでもいる生き物のはずがない……。




―――ヒトと竜が混ざると、異常な強さを得られるのかもしれない。

そんな発想を、今のルルーシロアが否定できない理由のひとつにもなった。

とにかく、神々の力の観察を行ったんだよ。

金色のかがやく魔眼を使って、眼下の人々に還元されていく魔力の流れを探った……。




―――竜の圧倒的な記憶能力で、この現象のすべてを覚えておくことにする。

考えるのだ、どういう原理なのか。

そのまま応用できないのであれば、竜の力で似て非なるものを再現してもいい。

いずれにしても、これは力を高めるうえで有意義な学習の時間となるはずだ……。




「ストラウス卿の竜と違って、叫ばないな……愛想の悪い、竜だ。あれは、きっと……女だ。ワシには、分かる。懐いてくれるまでは、冷たいんだよ。でも、もう気にし始めている……うちの嫁と同じだ」




―――ゾロ島のキケは、若者たちの歓声のなかで。

歌を返してくれることはない、気高い白竜を見つめていた。

ルルーシロアはつれない態度だけれど、自分たちを心配もしていると悟ったのさ。

彼女本人にその自覚がなかったとしても、それはおそらく正しくもある……。




―――気まぐれという言葉の、とても豊かな便利さを使いながら。

ルルーシロアは、自らの竜としての生きざまを守ってもいる。

それは生物の頂点である、竜にならば許される傲慢さでもあるんだよ。

ゾロ島のキケは、その気高い傲慢さとそれが内包するヒトへの愛情を察知していた……。




「誰とも、つるまないと覚悟を決めた者たちも。いつしか、気変わりを起こすものだ。それは、偶然が起こすこともある。ワシらもそうだ。迫害されて、追いつめられて。世にある不条理を憎んだり、怒ったり。せっかく、生きているからといっても……亜人種や、『狭間』は人生を謳歌することができない。竜よ。お前は、そういうみじめさは知らないだろうが。さみしくも、あるだろう。命の頂点のお前と、どん底にいるワシらは、似ているところもあるんだ」





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