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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三百六十六


―――『風の変数』の乱れを、把握する。

それはかなり難しいことで、正直なところボクには理解が及ばない。

おそらくソルジェにも、理論立てて説明するのは難しいはずだ。

それでも、即興でやり抜けるのは天才だからかも……。




―――爆風に揺さぶられたことで起きる、風の乱れを見るために。

ソルジェは爆風そのものを、知覚することに集中してはいた。

不可能だとか、最初から考えちゃいないあたりも天才ゆえさ。

自分たちが失敗するように作られてはいないと信じられることは、大いなる才能だ……。




―――鉄靴と重心移動で、ゼファーに飛ぶべき道を伝えていく。

乱れて狂う『風の変数』、それをふたりで乗り越えるためにね。

魔眼を、『頼らなかった』。

ソルジェは本能的に、情報の取捨選択を行っていたんだよ……。




―――あらゆるものを感じ取ろうとすれば、多くの情報を得てしまう。

その過剰な複雑さは、『せま苦しい』と感じていた。

難度のある飛行ルートだろうけれど、それを考え過ぎることは損をする。

『間違い』というものが何処で起きるのかを考えれば、この判断の正当性が分かる……。




―――過剰な情報を与えられたとき、ヒトのアタマは処理できなくなってしまうものさ。

あまりにも多くのチェック項目があると、それらのすべてを統合できるはずもない。

情報というものは、多すぎれば持て余すんだ。

ヒトが『間違い』を選びやすくなる瞬間は、こういうときだよ……。




―――バカだから間違うわけじゃなく、賢いからこそ間違えるんだ。

単純さが、複雑さに勝ることもある。

『風の変数』を見抜くとき、ソルジェが無意識的にしていた行いは情報の排除だ。

魔眼を使えば、あまりにも見え過ぎると感じたのだろう……。




―――それに、すべての情報があっても持て余すと知っていた。

ソルジェは自分の脳みその力に、それほどの自信はない。

ロロカやガンダラを間近で見ていれば、思い知った。

自分など、真の賢者たちから比べれば山猿に近いバカだとね……。




―――バカだから、過剰な情報処理に挑まない。

なかなかにいい判断だったけど、それ以外にも怪物じみた知恵を使っていたよ。

『より偉い情報だけ』、見抜けばいい。

これは、かなり画期的な考え方だった……。




―――『風の変数』は、とても読みがたいものさ。

異常なまでに難解で、複雑な計算式のようなもの。

しかも、数学という概念の世界とは違って現実が舞台だ。

かなり不確定なところもあり、数学よりもはるかに読みがたいものってことだよ……。




―――そんなものを、制するときの考え方として。

『より偉い情報だけ』を選ぶという発想は、理にかなっている。

これは雑な判断とは、真逆の発想でもあるのさ。

ソルジェは、あらゆる情報にヒエラルキーがあると『整理』した……。




―――風の方向とか、風の強さだとか。

それらをねじ曲げる、爆炎の熱だとか。

『風の変数』は無数に入り混じりつつ、互いに影響し合っている。

『下位の要素を支配している上位の要素』、それがあると信じた……。




―――それこそが、『より偉い情報』だ。

それらを見抜ければ、『下っ端』は無視していい。

『より偉い情報』につながり、『おそらく勝手に支配される』から。

魔眼の力を封じながら、そんな雑だか天才だか分からない発想を持ち出していた……。




―――アタマが悪いという自覚あってこその、鋭い発想だったのかもしれない。

ソルジェは、感じ取りながら考えていたのさ。

とても高度で、数学的な判断とも言えるし。

ただの野性的な天才性という評価も、与えてやれるかもね……。




―――これが、あくまで数学っぽいと言い張りたいのにはボクなりの理由もある。

『極めて有効な再現性』と、『最高の実用性』のどちらもあったからだ。

異常に入り組む、混沌とした風をゼファーに乗り切らせながら。

ソルジェは悟っている、この発想は自分たちをより高みへと導くものだと……。




―――さて、難しいハナシは抜きだ。

ソルジェの示した軌道は、ゼファーに完璧な飛行を与えている。

爆風を乗り切りながら加速していき、女神イースの背後へと即座に回り込んだ。

ゼファーも驚くほどの、鋭い動きだよ……。




―――それを見ていたミアは、大はしゃぎだ。

ソルジェのしてみせたことの全容を、ミアだって理解し切ってはいない。

それでも、見ていれば分かる。

荒れ狂う爆風の乱れをも、あっさりと乗り切るなんて……。




―――いいや、乗り切るだけじゃなくて。

まるで、その力を味方にしていた。

もっと露骨に言うのであれば、その動きは『風を支配』するものだと感じたらしい。

『空の女王』たちとすれば、喉から手が出る『空の魔王』の権威だろうね……。




―――天才たちが、ひとつの時代に乗り合わせると良いことが起きるものだ。

ソルジェとミア、ゼファーとルルーシロア。

彼らがこの空に同時にいることで、強烈な相乗効果が生まれている。

ソルジェとゼファーが、これを成せたのも女王たちのおかげさ……。




―――彼女たちに嫉妬したこともあるし、挑みたくなったからでもあるし。

ルルーシロアの踊りを、見ていたからこそ真似られた。

ルルーシロアの踊りは、最高の完成度があったからこそ。

今この瞬間にした飛び方に導入しても、問題なく機能したんだ……。




―――この場に来て、ガルーナの竜騎士たちの力はさらに進化した。

竜騎士姫の物語が蘇ってくれる、この場所だからこそ成し遂げられたのかもしれない。

何であれ、ゼファーは女神イースの赤い翼に噛みついた。

そのまま、巨体を活かして思い切り振り回していたんだ……。





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