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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三百六十四


―――青い空中のなか、鏡合わせの『オルテガ』が見える。


女神イースと『ゴルメゾア』は、『雷』を放ってはいたものの。


それらのすべてが当たらない、ルルーシロアの踊るような軌道だけじゃない。


『風の踏み台』の影響があるのは、彼女たちもだった……。




―――風というものは、見えないくせに気まぐれなんだ。


女神イースと『ゴルメゾア』が浮かんでいるその場所も、風が吹き荒れている。


この場所で、最も強い『風の踏み台』がね。


ミアとルルーシロアには加護となったが、それは風を読み解いた者にだけ……。




―――風の奥義を読み解けない者たちは、この荒れる風に足を引っ張られていた。


ルルーシロアの飛び方が、優れていただけじゃない。


女神イースと『ゴルメゾア』の飛び方は、今までで最も不安定だからだ。


この大きな差が、命中精度を極端に低下させてしまっている……。




「ルルー!楽しいね!」


『なるべくして、なったな!』




―――ニンマリと、ふたりは笑っている。


敵の攻撃を避けながら、この状況を組み立てられたことの快感にひたるんだ。


ふたりの性格は、こういうところでもよく似ていたよ。


どちらも、『攻撃』的なスタイルを好むということさ……。




「戦場にあるもの、空にあるものを……ぜーんぶ、使っちゃうの。それってさ、すっごく。ぜいたくなコトだよねー。でもね、私たちには、許されるの。だって……だって。私たちは、クールで賢い、『空の女王』だから!」




―――『空の女王』という称号が、ルルーシロアの心をつかんでいたよ。


それは自覚していたことでもあるし、言葉として耳にすると思いのほか心地良かった。


ミアも、同じだよ。


『攻撃』的であることは、実はかなり支配的な性質の証明でもある……。




―――『守備』は、自分だけの判断力と行動力が強さを生んでくれるものだ。


それに対して、『攻撃』は連携と周囲の環境を利用し尽くすことで威力を作る。


クールで賢い『空の女王』たちは、風と敵の行動さえも支配した。


『風の踏み台』に足を取られたまま、あせって攻めた敵は速度を失っている……。




―――ルルーシロアの金色の瞳が、獲物をにらみつける。


それと同時に、ミアは別の方角を一瞬だけチラ見していたけれどね。


問題はない、ふたりのリズムは一致しているままだから。


ブーツでこするだけで、意志は伝わっていく……。




―――ルルーシロアが空に描いた軌跡は、女神イースに狙いを定めた。


それを察した『彼』は、悲鳴を上げながら献身を選ぶ。


女神イースのために、その身を盾にするのさ。


何とも彼ららしい献身であり、はげしい情熱を帯びた信仰心だ……。




『お守り、いたします!!多くの者の未来が、貴方には託されています!!世界は、悲劇だらけです!!こんなことじゃ、いけないんだ!!せめて、すこしだけも……世界を、やさしく』




―――亜人種を滅ぼせば、人間族は結束して平和になれる。


それは乱暴な理屈かもしれないし、こちらとしてはそもそも受け入れられないけれど。


ファリスという人間族の帝国と、ユアンダートという男が。


この大陸を支配しかけて、証明しつつあった傾向だ……。




―――ヒトの恐怖は、相手を理解できないから強まる。


そうだとするのなら、別の人種に対しては恐怖を抱きやすいのかもしれない。


すくなくとも、『カール・メアー』はそれを信じて選んだ。


やさしいくせに、残酷な解決策を選べるのは強さなのか自己矛盾なのか……。




「あいつがイースをかばうなら……敬意を、持って……仕留めるよ!!怒りじゃない。これは、気高い女王の一撃にする!!」




―――ルルーシロアにも、怒りがあった。


赤いニセモノの竜は、竜を冒涜していると考えていたからね。


ルルーシロアを讃えてくれた、ゾロ島のキケたちも『ゴルメゾア』は殺しかけたんだ。


怒りはある、あったはずなのに……。




―――敵に対しての、敬意を持つ。


その概念を、あらゆる獣の霊長に君臨する彼女は理解しつつあった。


同調しているミアが、それを相手に捧げているからだろうか。


それとも、『彼』の見せた献身に何かを見つけられたのかも……。




―――何であれ、怒り以上の感覚がルルーシロアに宿っている。


急降下していきながら、加速をさらに深めながら。


ルルーシロアは『空の女王』らしく、敵に敬意を持ったんだ。


真に気高い者の一撃は、荒々しい怒りではないものさ……。




―――『ゴルメゾア』の巨体に、白い彗星の一撃が命中する。


巨大な肉は、一撃で真っ二つにされていた。


不死身の再生力を持たぬなら、これは間違いなく致命的。


それでも護衛は、成功したと言える……。




『と、止められた……ッ』




―――死んだあとでも、命をかけて。


怖い戦場で勇敢に戦い続けるなんて、とても偉大な敵だった。


『ゴルメゾア』は、致死性の一撃を浴びつつも喜んでいる。


女神イースの護衛として、ルルーシロアを止められたから……。




―――無数にある目玉が、ひとつずつ光を失っていく。


不死身の魔法は終わりを告げて、本当の終わりがやって来るのだ。


女神イースが、ルルーシロアと絡み合う『ゴルメゾア』の背後で。


強大な『雷』を用意している姿が見えて、安心する……。




『これで……ボクたちごと、この竜を、つらぬいて―――』




―――消えていく瞳の光たち、そのひとつが見てしまった。


『空の女王』の片割れである、ミア・マルー・ストラウス。


そのケットシーの猫耳が、ピクリと動いていたんだ。


暗殺者としての経験が、そのわずかな兆しの意味を悟らせる……。




―――『攻撃』というものは、連携するものだから。


自分たちだけでなく、より多くを巻き込みながら戦う方法だ。


『彼』は空の果てに、影を見つける。


ソルジェとゼファーは、とっくの昔に『もうひとつのオルテガ』に到着していた……。





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