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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三百六十


―――『彼』は戦士に徹することにした、それは喜びだったよ。

女神イースに、必要とされるなんて。

血まみれで赤くなった白い竜と、赤い偽りの竜。

戦いの空で再開した者たちは、牙を剥いて空に歌う……。




『GHAAAOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』

『GHAAAOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』




―――竜の歌だったよ、間違いなく。

聖歌の天才の亡霊が、この境地に至らせたらしい。

模倣ではあるけれど、模倣がいつまでもニセモノであるとは限らない。

芸術の持っている可能性を信じているボクから言わせれば、当然の結果だ……。




―――『火球』がふたつ、お互いを破壊し尽くすために放たれる。

女神のために異端誓絶を果たそうとする、『ゴルメゾア』。

竜としての本能のために気高い誇りを果たそうとする、ルルーシロア。

似て非なる心であったとしても、力は拮抗したのさ……。




―――空でふたつの『火球』が衝突し合い、巨大な爆発が発生する。

『もうひとつのオルテガ』の街並みさえも、揺さぶるほどの熱と圧力だ。

信仰心が、これほどの力を成し遂げるなんて。

見事なものだと、賞賛すべきことだよ……。




「すごいね。あいつ、強いや」

『ふん。わたしのほうが、もっと、はるかに―――』

「―――爆風が、返ってくるよ」

『……もてあそんで、やるさ!!』




―――竜に匹敵する成長を果たしたとしても、竜騎士の知識はない。

ミアはルルーシロアの首の付け根を、ブーツの内側でこすって伝える。

爆風というものは、反響するものだから。

そいつに『乗る』ためのタイミングを、竜騎士ミアは伝えてあげられる……。




―――『もうひとつのオルテガ』を揺さぶった爆熱は、空に反射したのさ。

その猛烈な風を、利用しない手はない。

女神イースと『ゴルメゾア』、両者に挟み撃ちにされている状況は打破すべきだ。

反射した風に乗るため、ルルーシロアは翼を広げて風をつかむ……。




―――雷のような速さで、ルルーシロアが上昇した。

地上から見れば、落下になるかもしれないけれど。

天地が逆転したままの世界では、これは上昇だ。

するどく上昇した彼女が狙いを定めたのは、『ゴルメゾア』の背後だよ……。




―――『ゴルメゾア』も『彼』も、この速さの前では抵抗の方法がない。

空を飛ぶことに関しては、シロウトだからね。

天才的な模倣をしたとしても、竜騎士の乗った竜に勝てるはずがないんだ。

『ゴルメゾア』の背後に、急上昇したルルーシロアが陣取った……。




『この、一瞬で……ッ』

「私のルルーは、すごいんだ!」

『だれが、おまえのだ』

「いいじゃん。仲良く、戦おうよ!!」




―――ミアとルルーシロアは、同時に牙を剥いていた。

絶好の機会に、飛びつくための顔だよ。

猟兵らしく、あるいは竜らしく。

戦いの霊長たちは、いつだって似た者同士なのさ……。




―――『彼』は、実に芸術家らしかったよ。

その全身で、常にあらゆるものをいつ何時でも感じ取る癖がついていた。

後天的な本能とも呼べるレベルに至るまで、芸術家はそれで自己改造をする。

『彼』の五感は、見事なまでに襲い掛かろうとしている破滅に反応した……。




―――『ゴルメゾア』が、竜の模倣を超える。

より自らの本質に近しい、虫めいた翼の使い方だった。

揺らぎ幻惑するような、ダンスのような飛び方だ。

ルルーシロアの雷撃のような突進を、かわせたのは飛び方を急変できたからさ……。




―――それと、運も大きい。

右か左かのギャンブルを作れて、『彼』は右を選んだだけ。

ミアとルルーシロアは、左に突撃していた。

これは能力差という問題よりも、ただの運に過ぎない……。




―――つまり、実力ってことさ。

『ゴルメゾア』は、ルルーシロアの必殺の一撃を回避した。

幸運だということも、理解可能なほどには強い。

『彼』は『余裕』を感じ取っていたのさ、ミアとルルーシロアはのね……。




『運が、味方をしてくれた。そうなって、当然だ!!正しさは、女神イースのもとにあるのだから!!!』




―――狂信者らしく、非科学的ではある。

だけど、再現性が不確かなものだと馬鹿にしてはいけない。

格上の相手に対しても、運次第で互角の勝負がやれるんだからね。

戦場で、自らの幸運を信じられる者は強いに決まっている……。




―――『彼』も『ゴルメゾア』も、ひるむことを知らない。

歓喜の情熱が、戦闘との相性の良さを発揮している。

孤立するまで、狂信者は実に狂暴なものだ。

そして、彼らの目の前には女神イースが実在しているのだからね……。




―――狂信者に、奇跡を供給しているようなものだ。

彼らの勇気と妄信は、無限大なものとなるだろう。

勝利も信じているし、疑いのない幸運にすべてを賭けられる。

『読みにくいランダムな飛行』を、すればいいと悟った……。




「左右にも、上下にも。不意にブレる飛び方だ」

『むしけらの、とびかただ。さかなにたかる、むしけらの』

「敬意を持っているところ、好きだよ。虫けらさんでも、いい飛び方をするから」

『しっているさ。だが、りゅうは……それをこえる!!』




―――幸運に、全てを賭けるなんてね。

『彼』は、何とも芸術家肌だと言える。

ボクの知り合いも、そんな連中ばかりだ。

酒と放蕩にひたり、さまざまな目に遭いながらも懲りずに賭けを続けられる……。




―――狂信と、芸術というものは。

間違いなく、相性がいいものだよ。

『彼』は考えを捨てて、ただ幸運と本能の反射にすべてを委ねられる。

その潔さが、感覚というものに磨きをかけるという真実もあった……。




―――自分を疑い、自分を検閲する。

自分の限界を定めてしまうと、弱くもなった。

無根拠の自信は、いつでも芸術は歓迎する。

それは能力を引き出すための、基礎的な方法だからだ……。




―――ルルーシロアは、精度と質に頼る。

短いサイクルで、高頻度の空中接近がくり返された。

常にルルーシロアが上回るが、幸運は『ゴルメゾア』に致命傷を与えない。

実力を誤魔化せるような、ギャンブル/不明確さを体現している……。




―――弱いからといって、勝てないとは限らない。

そして、彼らは竜とはかなり違っている。

蟲と死者で編まれた、特殊な肉体の持ち主だ。

『彼』は音楽家らしく、即興を選ぶ……。




『撃ってください!!女神イース!!』




―――ミアとルルーシロアは、女神イースの動きを読んではいた。

敵が連携するなんて、当然のことだからね。

だけど、その軌道を予想するのは困難だった。

女神イースは、『ゴルメゾア』越しに狙って来たから……。




―――女神イースの、矢のような雷撃だ。

それは『ゴルメゾア』の一部を、貫通していたのさ。

正確には、『ゴルメゾア』はその攻撃の一瞬だけ体の中央に『穴』を作った。

その『穴』をありえないほど完璧な精密さで、雷撃が走り抜けたんだ……。




―――さすがに虚を突かれたけれど、ルルーシロアには当たらなかった。

ミアは女神イースを、過小評価していない。

ありえない攻撃も、きっとしてくると分かっていたのさ。

信じる心は、空の戦場でも本能を磨いてくれる……。




『なんで、よめた?』

「あっちは、私たちを倒すためなら何でもするって、知っていたからだよ。すごい敵なんだ」

『それは、よろこばしいな』

「でしょう!尊敬し合える敵は、大好きだよ!!」





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