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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話 『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』 その三百五十


『メダルド・ジーを、取り戻したがるなど……そのために、祈るなど。何を考えているのか!!あいつは、『人買い』なんだぞ!!どれだけ多くの人生を破壊したのか、分からないのか!?』


「だが、悔い改めていた!!そ、その……いいヤツになったのだ!!ビビアナのためにでもあるだろうし、周りの者たちのためでもある……聞いていたハナシと、私が見たメダルド・ジーは、違っていた!!」


『お前の主観などで、現実が変わるとでも!?私はな、分かっている!!そんなのは、すべて、まやかしだ!!』


「ち、違う……っ。ヒトは、複雑なんだ。悪人でありながらも、善良なコトもする。善人でありながらも、悪しき選択だってしてしまう……」




『だからこそ、罰しなければならない!!』

「だからこそ、許すべきではないのか!!」




―――『正義』の敵は、いつものように異なる『正義』だったよ。


フリジアの『正義』も、レナス・アップルの『正義』も引き際を知らない。


ぶつかり合いたくはなるが、戦闘をするわけにもいかなかった。


フリジアは弱っているし、『ゴルメゾア』も無限の生命力は持っていない……。




『どうして、『人買い』を庇おうとするんだ!!』


「ビビは、父親を取り戻せる!!」


『ない!!あるはずが、ない!!』


「ないとは、どういう意味だ!?」




『あいつら『人買い』なんかに、残酷な外道どもに!!救われる道など、あるはずがないんだ!!どれだけ酷い目に遭わされたと、思っている!?』


「そ、それは……」


『親を殺されて、性器まで削ぎ落とされた……犯されて、オモチャにされて、道具で、商品で……ッ!!』


「レナス……お前の、苦しみも、ちゃんと分かっている」




『分かっていたら!!お前は、裏切ったりしない!!分かっていないから、『カール・メアー』を捨てられるんだ!!』




―――痛みというものは、固有の感覚だよ。


当人にしか、実際の痛みを感じられない。


どんなに傍にいたところで、どんなに親身になろうとしたところで。


結局は想像の産物でしかなく、それが真実の痛みに匹敵するなんてはずもない……。




―――痛みは、まるで不可侵な聖域のようなものだった。


他の誰にも、『彼女』の痛みの真実までは伝わりはしない。


それを『彼女』も知っているはずなのに、こうして訴えている理由もある。

フリジアに伝えたがっているからだ、『彼女』の理想の体現者にぶつけてみたいんだ……。




―――壊されて穢された『彼女』からすれば、フリジアは輝いて見えた。


才能はともかく、その存在そのものがね。


誰よりも純度の高い、『カール・メアー』の申し子。


それがフリジアの持っている真実のひとつ、あこがれて嫉妬しないはずもない……。




―――『カール・メアー』に『人買い』どもの手から救われた『彼女』からすれば。


『カール・メアー』らしさは、すなわち神聖さそのもの。


どんなに望んだところでも、変えられない。


汚れたモノは、理想的な申し子にはなれるはずもないだろう……。




『過去は、変わらない!!絶対の烙印なんだ!!そいつら『人買い』の行いを、忘れようとするな!!目を反らそうとするんじゃない!!しっかりと、そいつらの悪行を見ろよ!!罪深いだろう!!』


「か、変えられないかもしれないが……過去は、変わらないかもしれないが!!未来は、違うじゃないか!!ちょっとずつでも、変えられる!!お前だって、未来が欲しかったはずだぞ、レナス!!昨日よりも、今日よりも、ちょっとずつ良くなっていく未来が!!」


『違う!!そんなのじゃない!!』


「違わない!!過去だけを、見るな!!」




『過去の大切さを分からないくせに!!家族に必要ともされなかったお前に、過去がどれだけ大切なのか、重みがあるものなのか、捨て子なんかには分からない!!』




―――必死な言葉には、鋭くて大きな牙が生えているものだよ。


噛みつかれてザクザクと、フリジアの心が傷つけられていく。


理想的な『カール・メアー』の申し子も、ただの捨て子だ。


親からさえも必要とされなかったのが、フリジア・ノーベルの真実のひとつ……。




―――知らないことは、与えられずに持っていなかったものは。


想像するしか出来なくて、そんなものはニセモノでしかない。


理想的な虚構では、つつましい真実にも勝てないものだよ。


フリジアの記憶に、『彼女』の痛みに共感してやれるリアリティはなかった……。




『分からないだろう!!どんな風に、抱きしめられるものか!!背中に回した腕は温かい。抱きしめたあとで、指が、いつだって……私の背中をポンポンと叩く!!やさしくて、ゆっくりで!!聖歌を披露する前に、緊張していたとしても……母さんにそうしてもらえれば、勇気がもらえたんだ!!』




―――レナス・アップルには、両親から本物の愛情が与えられていた。


フリジアには、そういうものはない。


どれだけ、うらやましいと思っても。


ああ、そうだよ『過去』は絶対に変えられないものだ……。




『あんなにやさしい母さんを、『人買い』は殺したんだぞ!!許せるはずが、ないじゃないか!!『ボク』たちが、どんなに幸せだったとしても、あいつらは気にしやしない!!高く売れるなら、奪って売り払う!!抵抗すれば、殺すだけ!!ヒトを、売り物にするような極悪人どものために……『カール・メアー』の巫女戦士が、祈りを使うんじゃない!!』




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