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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三百三十一


―――魔力を吸われ、長時間の戦闘で体力もすっかりと疲弊している。


女神イースは勝利を確信しているが、こちらには切り札があった。


心を覗き見する権能から、ソルジェとミアが隠し切っている一手がね。


ふたりとも、さすがは猟兵だ……。




―――この瞬間まで、隠し切ってみせるなんて。


心のなかに浮かべることもないまま、耐えに耐えた。


ゼファーがどうにか『ゴルメゾア』と競り合い、女神イースと合流出来ていない。


当初の予定とは異なるが、この状況でも問題はないだろう……。




―――魔力を吸われ、息切れしつつあるソルジェだが。


その顔には笑みだけがあった、猟兵らしい強さの証がね。


ソルジェは魔眼を使い、ゼファーに連絡する。


「どうにか、そいつを抑えてくれ!!」……。




『まかせて、『どーじぇ』ッッッ!!!』




―――女神イースは、ソルジェが何かを仕掛けようとしていることに気づいた。


だが、視線を向けるのが精いっぱいだ。


ミアとルルーシロアの猛攻が、彼女をその場に釘付けにしている。


戦いながら権能を使おうとして、違和感を知ったよ……。




―――精神力で作戦を隠すことまでは、可能だろうと女神も認めた。


それでも何かを仕掛けようとしているこの瞬間にまで、その意図が読めない?


おかしなハナシだと思いながら、ただ一つの可能性に行きついた。


『そもそも権能が通じない相手』ならば、いつまでも隠し通せる……。




「『ギルガレア』あああああああああッッッ!!!オレに、力を貸せええええええええええええええッッッ!!!」




―――空に掲げた竜太刀から、鋭い牙の列が生えて踊る。


それは空を喰い破るような力でもあったのか、空に赤い裂け目が生まれていった。


女神イースは、自身にも列なるその力を感じ取り。


美しい顔を、大きくしかめてしまう……。




『おのれ、私の権能を……ッ』




―――空には、逆さ吊りになった『もうひとつのオルテガ』が姿を現す。


『不滅の薔薇の世界』、『ギルガレア』が創り出した理想郷。


その場所には、この状況を乗り切るどころか逆転させる特性があった。


あの場所では竜騎士姫の物語さえも、蘇るのさ……。




「ちょーっと、思い出して来てるよ。竜騎士姫のコト!!『ギルガレア』のおっちゃん、いい仕事してる!!」




―――ミアは、心からの笑顔になったよ。


『ギルガレア』から継承したあの場所は、ミアの考えの通りに機能していた。


『歌喰い』という古き『ゼルアガ/侵略神』の権能さえも、あそこでは消え失せる。


『あらゆる神々の干渉が起き得ない場所』であり、それはつまり……。




「あなたの権能だって、『ゼルアガ/侵略神』の力だよね。だから、きっと、打ち消せると思っていたの!!」




―――空に広がる『もうひとつのオルテガ』は、女神の権能を妨害していた。


完璧にではないが、亜人種の戦士たちがその場に置き上がれるほどにね。


『オルテガ』を中心に広がっていた、厄介な権能の場は崩されている。


女神イースは、自分が最大の窮地に立たされたことを理解した……。




「今なら、あなたは無敵じゃないかもしれないよね!!」


『きりさき、くいちらかせば、しぬということかッッッ!!!』


「そういうコト!!倒せるよ、今なら!!!」


『……調子に、乗るな!!』




―――女神イースは、方針を変える。


ミアとルルーシロアに向けて、荒々しい突撃を放った。


敗北出来ないのは、彼女も同じだ。


威圧的な迫力を帯びて、赤い槍と赤い翼でふたりを攻め立てていく……。




―――保守的な時間稼ぎをする意味が、無くなっていたからね。


むしろ、これからはそれをするだけ損だった。


吸い上げていたはずの魔力が、『逆流』を始めてもいる。


あるべき場所に戻ろうと、魔力は奪われた者たちに返還されていたのさ……。




「呼吸が、楽になっている……?」


「女神の呪いが、消えたのか!!」


「何であれ、これは……ッ」


「逆転の、勝機だあああああああッッッ!!!」




―――『もうひとつのオルテガ』の下で、復讐者たちが歌った。


地獄のような疲弊の苦しみから解放された彼らは、女神を探す。


一秒でも早く、女神イースを倒すために。


この回復の奇跡が、いつまで続くのかを彼らは知らないからね……。




―――もちろん、それはソルジェとミアにも言えることだ。


『ギルガレア』から託された遺産を、ソルジェは見事に召喚してみせた。


それはさすがの一言だけど、『もうひとつのオルテガ』の全容を把握してはいない。


『権能破り』の力があるとは見越したが、それが何時まで続くかは不明だ……。




―――それゆえに、急ぐ必要がある。


ソルジェは息を整えると、ミアとルルーシロアの元に向けて走った。


女神の護衛である『ゴルメゾア』は、ソルジェを止めようとするが。


ゼファーに噛みつかれて、その行動は封じられる……。




『いかせ、ないぞ……ッ』




―――竜太刀と共に、『オルテガ』の城塞を駆け抜けて。


ミアとルルーシロアと死闘を演じる女神の背に、飛び掛かった。


女神イースは、鋭い視線でソルジェをにらみつける。


それだけが精いっぱいだったよ、赤い翼をうねらせたところで……。




「『カール・メアー』武術は、もうオレたちには効かんッッッ!!!」




―――赤い翼が、またたく間に斬って裂かれていた。


どこまでも『カール・メアー』らしく、彼女たちの武術の化身だった。


それを超えることを、彼女自身も望めない。


神さまは絶対的な存在であり、彼女は『カール・メアー』のための女神だ……。




―――変われないし、そもそも変わる必要もなかったはずだった。


千年の検証の果てに、亜人種を根絶やしにすることで。


この大陸から人種の差によって起きる争いを、永遠に排除する。


そういった慈悲を貫くために、他の可能性を拒まなければならない……。




―――彼女は変われないし、変わるつもりさえなかった。


ただひたすらに『カール・メアー』の理想を体現し、それを叶える。


そのおかげで、ソルジェたちは勝てた。


女神イースの身体能力で、もっと変則的に戦えれば勝利は不可能だったはず……。




『変われん。退けん……敗北など、許されるかッッッ!!!』




―――赤い波動が、女神イースから解き放たれる。


とどめを刺そうとしていたソルジェとミアを弾くほどの、強い圧力だ。


ヒトの力では、近づけはしない。


だからこそ、竜騎士には竜がいた……。




「ルルー!!噛みついちゃえッッッ!!!」




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