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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三百十一


―――『火球』の爆撃で、隙を作れていたからね。


まだ敵の最前列は燃やされている最中だったけれど、そこを目掛けて騎兵が走る。


ユニコーン騎兵も通常の騎兵も、先頭を走るロロカに続いて敵陣に殺到した。


リエルは精神的な疲弊はあったものの、弓隊を率いてみせたよ……。




「ロロカ姉さまたちの突撃を、援護するぞおおおおおおッッッ!!!」


「了解、リエルさん!!」


「帝国兵どもを、射殺せえええ!!」


「誤射はするなよ!!仲間の頭上を、飛び越えさせるんだ!!」




―――敵陣にこちらの矢が降り注ぐが、敵からの反撃の矢は少なかった。


弓を持つ敵兵どもは、竜を撃とうと空を警戒していたからだよ。


竜対策には、矢を放つことが有効だからね。


矢による迎撃は小規模なものとなり、ロロカたちは炎を越えながら敵陣に突っ込めた……。




「敵を貫きます!!戦士たちよ、私に続きなさい!!!」


「ロロカさまに、続け!!!」


「ディアロスの根性を、見せてやるんだ!!!」


「残りの体力、ぜんぶ……ここで使い切ってやるぞ!!!」




―――混乱する敵陣に、ロロカたちの破壊力が襲いかかった。


ユニコーン騎兵はたしかに弱っていたけれど、ロロカの意志の強さに呼応する。


突撃こそがディアロスの本懐、族長の娘が示すのであれば彼らも死ぬ気で追従するよ。


騎兵たちも名誉を示す好機だった、ユニコーン騎兵に活躍を取られていたからね……。




「まだ、我々は体力が余っている!!」


「ユニコーンに、置いて行かれずに、ついて行けるぞ!!」


「敵を、貫くんだ!!」


「走れ、走れ、突破だあああああッッッ!!!」




―――弱ったユニコーン騎兵と、人間族の戦士たちが操る騎兵は互角の力だ。


ある意味では、より歩調を合わせての攻撃となったよ。


ロロカに率いられて、彼らは敵陣前方を破壊しにかかる。


直線的な衝突で敵陣深くに入り込むと、そのままやや右に向けて抜けにかかった……。




―――背後に抜けるよりも、敵の東側に移動したかったのさ。


そうすれば北に残ったリエルたちと連携して、敵陣最前列東側を包囲できるからだ。


さらに言えば、あえて敵の『退路』を残しておくためでもある。


西に逃げれば、死なずに逃げられるというメッセージにもなった……。




―――今のロロカの目標は、敵のせん滅ではない。


こちらの負傷者を可能な限り少なくすることで、その上で勝ちがあればなおさらいい。


疲弊しているのは、変わらないからね。


槍を振り下ろして敵兵を叩きつぶす度に、ロロカは自分の体力の消耗と直面する……。




―――長くは、戦えない。


だからこそ、突破するほかない。


次の突撃は、誰も行えないのだから。


ロロカらしいギャンブルでもあったよ、この突撃の判断はね……。




―――先頭を駆け抜けながら、敵兵を蹴散らすロロカがいたからこそだ。


そうでなければこの突撃は、成功できなかっただろう。


ベテランの帝国兵どもさえ、片っぱしから屠ってみせる猟兵がいるからこそだよ。


ロロカの槍は力強く精確で、『白夜』は敵を踏み潰しながら残りの体力を出し尽くす……。




―――もしも、この突破力が不在であれば。


間違いなく、敵陣で止まっていただろう。


英雄の力技があってこそ、こういうギャンブルは成功するものだ。


個人技頼み、計画性よりも判断力優先となる『守備』的な武将のセンスだった……。




「これで、抜けます!!!」




―――槍で敵兵を空中にまで叩き飛ばしながら、ロロカと『白夜』は敵陣を抜けた。


ユニコーン騎兵と通常の騎兵たちも、負傷と息切れをしながらも後に続く。


完全な成功と言える結果に、ロロカは笑みを浮かべる。


敵を打撃しながらも、東へと移動できたのだから……。




「人間族の騎兵は、この場に待機を!!ディアロスおよび、亜人種の騎兵は、このままやや北に!!」




―――包囲の陣形が作り上げられながらも、ロロカは亜人種たちを『寄せ集める』。


それは北に残っていた弓兵や歩兵たちも、一致していたよ。


カミラが調整しやすいように、亜人種を集めるという計算だった。


リエルは亜人種の戦士たちを率い、東へと移動していく……。




「矢を放ちながら、東に!!包囲した敵を、ロロカ姉さまたちに向かわせるな!!」




―――体力はとっくに尽きているからね、陣形の優位を取れたとしても不利極まりない。


だからこそ、リエルたちは矢を放つ。


敵の東側前列を、足止めするために。


矢を撃ち尽くすつもりで、放ち続けた……。




―――敵は混乱しながらも、ベテランが指揮を完全に掌握しているからね。


常勝の連中は、戦場で勘が恐ろしく冴えわたる。


ロロカのギャンブルは継続中で、敵のベテランにはこちらの弱点が見えてもいたはずだ。


ロロカたちユニコーン騎兵を叩き潰して、こちらを北と東に分断されたら最悪だよ……。




―――それをリエルも分かっているからこそ、矢を撃ちまくっていた。


竜の不在に、いつまでも気づかないほど敵もバカじゃないからね。


こちらの弱点を見抜かれたとしても、矢で足止めを仕掛ければいい。


包囲か分断、それを巡ってロロカとリエルは戦士たちを率いて走った……。




「ロロカ姉さま、こちらに!!」


「ええ!!いい、援護でしたよ!!」


「そちらも、素早い突撃でした!!」


「……おかげで、体力は出し尽くしましたけれどね……あとは、演技力です」




―――ユニコーンから降りたくもなるが、それは許されない。


ディアロスとつながっているユニコーンも、この戦場ではあまりに酷使しているからね。


休ませてあげたいが、炎天下で敵とにらみ合う必要がある。


余裕ぶり、先ほどの疲弊が偽りであったと装うべきだ……。




―――敵はこちらを『狩り尽くす』ために、動いていた。


勝算があると、理解していたことの現れだ。


正直、カミラの機転がなければ突撃で死傷者が大量発生していただろう。


敵のベテランは、『まだ勝てる』と信じてはいるのさ……。




―――あとは、演技力の勝負だった。


ロロカは敵をにらみつけながら、余裕ぶって笑顔を浮かべる。


ディアロスの戦士たちも、それにならった。


呼吸を整えながら、体力の維持に集中しながらも表情は緩やかなものだ……。




―――敵は自軍の被害を見ながら、もうすぐ判断するはずだった。


このギャンブルに、負けるリスクはもちろんある。


敵が攻め込んでくれば、亜人種たちを下げて人間族の戦士だけで包囲すればいい。


だが、そうなれば泥沼の戦いとなり双方の死傷者は最大となるだろう……。




―――あるいは、はるかな『北』だ。


帝国兵の援軍でも、唐突に『北』から姿を現したなら。


破滅的な敗走となる可能性もある、帝国軍の救援はどの方角からだって現れる。


大陸の全域を支配しているというのは、そういう意味だ……。




―――汗をかく、余裕ある笑顔を演じながらもね。


ロロカは祈る、「さっさと気温が高くなればいい」と。


亜人種は女神イースの権能で、弱り続けているが。


帝国側の厄介なベテランどもも、汗をかくほどに体力を消耗しているのだから……。




―――よく晴れた夏の朝陽のせいで、帝国側の援軍が北の果てに現れることもない。


スタミナのある若手を狩られている帝国兵どもは、兜と鎧のなかに大量の汗をかいた。


この暑さと敵兵の平均年齢の高さが、ロロカのギャンブルを勝利に導いてくれる。


敵は選んだよ、破滅的な死傷よりも深追いせずに退却することをね……。




「ロロカ姉さま、敵が下がります!」


「ええ。喜ばないことです。敵に、こちらの感情を読ませないように」


「は、はい!皆の者、冷静にしておるのだぞ!!体力の回復に、つとめるのだ!!」


「……これで、勝てました。ですが、この疲弊が……『回復しなかったら』。私たちは敗北します」




―――ロロカは実感している、恐ろしく疲れ果てているからだ。


この体力の疲弊は、呼吸を維持していても悪化していく。


カミラの加護があってこそ、ようやく意識を保てている気がした。


敵の背中を見ながら、夫に祈る……。




「ソルジェさん。そちらで、どうにか解決してください。そうでなければ、『自由同盟』は一週間ももちません」




「亜人種どもは、病気なのか?」


「流行り病でも、あるのかもしれんな……」


「下がればいいさ。『今は』、な」


「あちらのテントが病人で満ちれば、こちらは少数でも勝てる」




―――撤退していく敵兵どもは、亜人種たちの疲弊を観察し続けていたよ。


彼らは女神イースの仕業だと知ってはいないが、もしも状況を理解すれば?


昼にでも再出撃して、亜人種の戦士たちを滅ぼしにかかるかもしれない。


すべては『オルテガ』での戦いの結末次第、大魔王と女神の戦い次第さ……。




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