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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三百八


―――国境線での戦いを指揮するロロカは、カミラに頼るしかないという結論に至る。


ロロカはこの未知の現象について、どのようなものなのかを知らないままだ。


それでも魔力消失のための対処法があるとすれば、『吸血鬼』の能力だけ。


カミラも人間族であり、女神イースの権能の影響を受けていないからね……。




「カミラ、無理を承知で言います。あなたの『第五属性』の力で……この呪術か権能の影響を、消してくれますか?」




―――帝国軍のベテラン兵士どもは、こちらの窮状につけ込もうとしている。


古強者の気風を目の当たりにするだけで、ロロカは圧倒的な不利を感じ取った。


戦術では完勝していたのに、この戦場の外からの影響で状況は逆転している。


カミラに頼るほかにない、そうでなければ大勢の戦士が殺されることになるのだから……。




―――カミラは、迷わなかったよ。


ロロカのムチャな要求に対しても、やり遂げる覚悟をした。


呪術であろうとも、権能であろうとも。


弱りかけた魔力の循環を維持することで、安定はさせられている……。




「や、やってみるっすよ!でも、全員を安定させるのは難しいかも……っ」


「ならば、この状況を作り上げている場所そのものを、変えられませんか?」


「場所、そのものを変える……っ?」


「空間そのものに作用している力です。つまりは、『空間のルール』を書き換えられているような状況だと認識してください」




「る、ルールを書き換えている……」


「そうです。この場所に『上書きされたルール』、それを『闇』の力で阻害できれば。場所そのものの守れるはずです」




―――ロロカは呪術の専門家ではないけれど、『往古の風』について体験している。


世界の文脈という概念については、知的な彼女はソルジェよりも理論的に把握もしていた。


『まるで神さまの力のような巨大な呪術』、それを成すために。


『世界の文脈/世界のルールを規定している何かしら』を、利用する必要がある……。




―――神々を『創っていた』、『古王朝』。


歴史上最大級の知性がそろっていた文明が、世界の文脈を頼る方法を遺したならば。


それは『最高の呪術の手段』だと、考えていても差し支えない。


呪術も魔力で動くのならば、カミラの『闇』ならば干渉できるはずだ……。




―――もちろん、『ゼルアガ/侵略神』の権能は魔力ではない。


しかし、ロロカは予想している。


『人々の魔力で編まれた世界の文脈』、それを『ゼルアガ』どもも利用していると。


この力はあまりにも広範囲に、人々へと影響を与えるものだからね……。




―――権能は、『世界の文脈』を『乗っ取っている』みたいなものだと予想した。


少なくとも、この権能はそうだろう。


ヒトから魔力を吸い上げている以上、魔力を管理するための仕掛けには違いない。


ならば『世界の文脈』を、『闇』で書き換えられたなら……。




「あらゆることには、理論があります。異常な現象であろうとも、それにも法則性が隠されています。敵は、『人種』で対象を分けてしまっているのです」


「人間族は、無事……帝国兵は、人間族だから」


「そういうルールを、この術に与えているの。まずは、それを理解して。『ゼルアガ』の権能であろうとも、呪術でもあろうとも。理解することで、より狙いを感じ取りやすくなれる」


「……認識すれば、『ゼルアガ』は、見えるようになるっすもんね」




―――『ゼルアガ』の異常性に、接触されない限り認識も不可能。


という特徴があるからね、あいつらの接近を前もって予想するのはムリだ。


それでも、関わり合いになればなるほど『ゼルアガ』を認識できる。


戦って、倒してしまうこともね……。




―――ロロカは考える、世界のルールを書き換えるために必要な工程とは何だ?


二秒も経たずに答えを得ていたよ、さすがはロロカ・シャーネル。


彼女なりの突発的な考えではあるが、『空間の恒常性』をいじる必要がある。


という『仮定』を、アタマに浮かべていた……。




―――何やら難しい言葉になっているから、カミラには使わない。


講釈をしたいわけでもなく、可能な限り明瞭な解決策を与えればいいだけのこと。


『空間が通常であろうとする能力/恒常性』を、どうすれば『復旧させられる』だろうか。


カミラにならば打ってつけの考え方があることに、ロロカは三秒目で気がついた……。




「この場所は、一種の『病気』に侵されているような状態なのだと考えてください。あなたの『闇』で、血管や臓腑の機能を、補ってあげられますよね。それを、場所に対して使おうとしてみてください。今、この場所は、敵のせいで『病気』にさせられているの」




―――カミラは田舎娘だから、哲学みたいに複雑なモノの考え方はしない。


だからこそ素直でもあって、『病人』だとか『病気の動物』を想像していた。


この場所は、そういう病んだ状態なのだと。


それを元気にしてやるためには、という『疑問』がアタマに浮かぶとニヤリと笑う……。




「『普通じゃなさそうなところ』を、普通になるようにしてあげれば、いいわけっすね!!」


「ええ。試してみてください」




―――ロロカはその具体的な方法までは、分からない。


方向性を示してあげるしか、やれはしないよ。


それでも賢いことは幸いだった、ロロカの予測はカミラを導いたのだから。


カミラはこの場所を、『病気の巨大な動物』だと信じることにした……。




「血の動きが、『おかしかった』っすからね。亜人種の方たちの血の動きが、変に乱れがあるっす……まるで、そう……『あっち』に吸い寄せられているみたいに、おかしいっす」




―――『吸血鬼』だからこそ、魔力だけではなく血の流れさえも完全に把握していた。


カミラはその『異常』に気づいてはいた、それが『病気』の原因だとは思えなかったけど。


でも、今はロロカのおかげで理解していたのさ。


この『異常』を正してやれば、『病気』が治るかもしれないと……。




「『オルテガ』の方角に、魔力が吸い上げられているわけですね。それに、抗うようにしてみてください。そうすれば、私たちの世界は、きっと……大丈夫ですから。そう。『対症療法』、です。シンプルに考えて。熱があれば冷ます。傷があるなら、止血する」


「……それなら、やれそうっす!」




―――強い力を介入させれば恒常性が是正され、因果律を取り戻すかもしれないだとか。


空間を変容させるための、何かしらの変数があってそれを元に戻せばいいのだとか。


ロロカのアタマで論文百ページ以上に書き綴られている考えは、口にしない。


数学やら理屈よりも、『病気の動物』を治療しようとする対症療法が要るのだから……。




―――幸いなことに、理論よりも直感を信じられるのがカミラだ。


『吸血鬼』の才能も、そしてカミラ自身の才能も。


この状況の解決には、向いている。


カミラは無数の『コウモリ』に化けて、南の空へと陣取った……。




「やれるはずです。すでに、自分の周囲の人々を、この影響から救っていたのですから」




―――ロロカの指摘の通り、カミラはすでにこの力に抗っていた。


魔力と血の流れを、操ってあげることで救えるのだ。


この権能は厄介ではあるものの、絶対的な脅威ではない。


『聖なる呪われた娘』、カミラ・ブリーズにとってはね……。




『あっちに、『持っていかれるのなら』……それを、逆にしてあげればいいだけっすよね!!』





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