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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三百二


―――誰かを導く言葉が必要だった、『自由』は大きすぎるものだから。


誰もが自在に操り切れるとは限らない、誰かの言葉に形を与えてもらいたいときもある。


人間族の若者たちが女神イースに挑む、宙に浮かび巨大な翼を振り回す異質な最強に。


能力だけならば天と地ほど、離れているだろうけれど迷うことはない……。




―――世界を変えるための力の一員だと信じていれば、死地に赴く覚悟は容易いものだ。


自分のためだけじゃなく、誰かのために戦うとき。


ヒトはとても狂暴になって、迷いさえもなくなる。


扇動していると、女神イースはソルジェの言葉を嫌った……。




『人々を、騙すか。私に、彼らを殺させたいのか?私は、人間族を救いたいと願っているのだぞ?』


「騙す?……こいつらが、自分で決めている。オレたち全員の総意だ!!」


『迷わんぞ。私にも、千年間がある!!』


「過去よりも、『未来』が欲しいと願っている!!」




―――怒涛の勢いで、人間族の若者たちが女神イースに殺到した。


鋼を振り回し、女神イースに斬りつける。


赤い翼の守りは硬く、女神も容赦なく反撃を試みた。


槍が折られて剣が砕かれる、ガンダラが命じる……。




「自分だけで戦わないことです!!鋼を折られたならば、下がりなさい!!常に仲間を交代することを、意識する!!全霊を込めた一撃離脱、交代し続け、群れであることを活かしなさい!!」




―――援護でもいい、十分だ。


全力を込めた一撃ならば、たったの一撃なら。


強化された女神イースから、わずかでも動きを止められる。


それでいい、こちらは数で対抗すべきだ……。




「そういう戦い方だよ!!みんなで、援護し合うんだ!!それぞれに得意な武術を使うの!!こいつはね、女神イースは、他流の戦い方に、なれていていんだから!!」




―――『カール・メアー』の武術は、優秀ではあるだろう。


でも、それは他のすべての流派においても同じだ。


戦場で使いこなすべきは、『ありとあらゆるもの』。


何かひとつだけの力を磨いただけじゃ、ここでは足りないのさ……。




―――武術はそれぞれの土地で異なり、ヒトもそれぞれの人生で違いがあった。


戦士たちは生まれ育った伝統を背負い、自分だけの記憶を積み重ねていく。


女神イースは目撃する、あまりに雑多な力の混沌をね。


ちなみに感情的になった若者たちを動かしているのは、粗い動きなんかではないよ……。




―――自分なりの全力を出し尽くそうとしたとき、彼らが頼ったのは固有の人生そのもの。


それは故郷で振り抜いた剣の技巧、強くなりたいと願いながら振った槍の打ち方。


父親や師匠に習った動き、あるいは競い合うなかで獲得した得意なそれ。


一撃に、自分ならではの癖のある動きを込めていく……。




―――統率されていながらも、彼ら彼女らは自分なりの表現をしていた。


拙かろうが合理的でなかろうが、たとえ赤い翼の前に一瞬で打ち負けても問題はない。


ひとりじゃないからね、交代していけばいいんだ。


多くの若者が、ここにはいる……。




「ああ!!だから、戦場ってのは……最高に面白いんだよッッッ!!!」




―――ソルジェは不謹慎なまでに、戦士だったね。


戦いで表現される固有の人生、そういうものに触れ合うのが大好きなんだ。


この強大な敵と戦いながらでも、ソルジェの喜びは変わらない。


無数の若者たちの技巧がある、『オルテガ』の歴史を読み解く楽しみもあった……。




―――支配者が何度も変わった迷宮都市、そこには無数の武術が流れ着いている。


ソルジェと竜太刀の動きを合わそうとして、大剣を振り抜いた者。


ミアが誘い出した赤い翼の一枚に、槍の突きを命中させた者。


多くの固有の技巧があり、それを感じるほどにストラウス兄妹は笑う……。




「それで、いいんだよ!!どんどん、こいつを惑わせるんだ!!」


「全員で、倒すぞ!!」


「は、はい!!」


「私が鍛えた一撃を、喰らいなさいッッッ!!!」




―――鋼が打ち砕かれていく、それでも戦士たちは交代と突撃を繰り返していた。


わずかずつだが、女神イースを押さえ込めているよ。


ソルジェとミアと戦いながらだ、女神イースにも余裕があるわけじゃない。


若者たちがいなければ、猟兵だって負けていたかもしれないけど……。




―――今は、互角以上に女神イースと競り合えている。


傷が与えられていく、女神イースの美しい肌に傷がついた。


一瞬で治癒してしまうけれど、すべては無限ではない。


膨大な魔力が彼女を支えていたとしても、それを削ぎ落とすための傷にはなる……。




―――『作戦会議』のための、余裕も作れている。


押し寄せる人間族の若者に対して、女神イースは何らからの思索もしていたからね。


それは失望だったのかもしれないし、煩雑な怒りだったのかもしれない。


何だっていいが、その隙に付け込みストラウス兄妹は意志疎通を実現させた……。




―――単純な暗号だよ、ミアはソルジェと連携しながらも『信号』を送る。


体内で魔力を、強めたり弱めたりするのさ。


戦いの『流れ』とは関係ないから、ソルジェには『違和感』として伝わってくれる。


「竜、空、街に。分断、閉じ込めちゃえ!」……。




―――シンプルな信号だけど、ガルフはしっかりと孫娘に教え込んだ。


「魔力の揺らぎでもいいし、狼煙のリズムでもいい」。


「ちょっとのことだ。戦場ってのは、シンプルなものだ」。


「伝えなくちゃならないことは、お互いに『ちょっとしたもの』ってわけだぜ!」……。




―――ホタルの求愛の光のように、点滅することが信号となり話術の代役となった。


戦場での情報伝達を、秘密裏に行おうとするのは困難なことだけど。


それが達成できたなら、敵の裏をかけるからね。


ミアはビビアナとの会話で手に入れた、『最高の解決策』を伝えてくれたのさ……。




―――言葉にしてはあまりにも短いけれど、ソルジェは理解してくれる。


呪術師としての才能と、経験のおかげだろうね。


そして、誰よりも『当事者』だから分かるんだ。


ソルジェは『継承者』だ、この最悪の状況を解決できるのは彼だけだった……。




―――魔眼を使う、ゼファーとのつながりを頼る。


あっちの戦場にも、影響が出始めていた。


『オルテガ』から距離があるおかげか、ガンダラよりも症状は軽いけれど。


レイチェルも疲弊してしまっている、『人魚』も亜人種だからね……。




「めまいがしますね。魔力を、相当に吸われている……リュドミナ。これが貴方たちの答えの一つですか」


『だいじょうぶ?ぼくの、せなかから、おりないでね!まもるから!』


「ありがとう。ジルバ程度なら、踊れそうですから問題はありません」


『あ、亜人種から、魔力を奪う権能……っ。そ、それって、とんでもなくボクたちには不利です……っ』




―――ああ、ジャンは魔力をまったく奪われていない。


『狼男』は種族ではなくて、ただの呪いの結果だからね。


ジャンは人間族の、『狼男』病みたいな立場だということが証明された。


カミラもそうだ、あっちは人間族で『吸血鬼』を継承しただけ……。




「ジャンが動けるのは、ありがたいですね。帝国側は、混乱していますが……」


『る、ルルーシロアと戦っているバケモノも、気になります……っ。どっちに、行くべきでしょうか?』


「……リングマスターは、ゼファーを『オルテガ』に呼んでいるわけですね?」


『うん。るるーしろあも、よびたがってる』




「なるほど。決戦を仕掛けるわけですか。この厄介な権能を、封じる……ジャン、貴方はここで遊撃を続けてください。『オルテガ』の防衛力は、激減しているはずですから」


『で、ですねっ。亜人種の戦士たちが、よ、弱っているわけですもんっ』


「少しでも陽動をかけて、到着までの時間稼ぎを。ゼファー、私と共にルルーシロアを呼びに行きますよ。私なら、あの子を勧誘してあげられますからね」


『うん。ぼくじゃ、あいつを、せっとくできない……あいつのちからも、いるんだ!!』




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