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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その三百


―――女神イースは、絶対的な勝利を確信してはいた。


合理的に考えれば、あきらかなことだからね。


弱り切っている巨人族の戦士だ、いわば死にかけのような者。


それが最強の女神である自分に、危害を与えられるはずがないと……。




―――その通り、それは真実なんだよ。


ガンダラは勝てない、だからと言って戦わない理由にはならないけれどね。


すべての戦いがそうだ、負けると知っていても抗おうとする。


この敗北は絶対に嫌なのだと、命がけで主張するのも戦士の『自由』だった……。




―――奴隷では持ちえない、戦う者だけの『自由』だよ。


自分ために戦う、ソルジェへの友情のためともはや切り離せないほど結びついた動機だ。


呪わしい権能でも、人々とつながることは出来るけれど。


この『自由』さを使うことで、ヒトは無限のつながりを得られる……。




―――女神イースは、垣間見た。


いつもは冷静なガンダラの、獣じみた必死さに。


大きなものだ、ひとりだけでは成せない巨大な何かを感じている。


正しかったね、ボクたちの『自由』はあまりにも大きい……。




―――約束された死だ、圧倒的な強者に挑むということはそういう意味だ。


それに向かうガンダラに、恐怖はない。


これは喜びであり、これは使命である。


自分で選んだ大きな『自由』のために、猟兵らしく牙をむく……。




「来なさい!!女神イース!!」


『……死ぬがいい!!せめて、安らかに!!』





―――強敵だという敬意を込めて、六枚の赤い翼が動いた。


鋼よりも硬い翼を叩き込み、ガンダラを切り裂くために。


ガンダラは抱き締めようとする、翼の動きを『教える』ためにね。


過去は大切であるが『未来』はもっと大切で、命を捧げる価値はある……。




「死なせる、ものかよッッッ!!!」




―――間に合ったのだ、ガンダラの気迫が作り上げたわずかな時間。


それにソルジェは反応する、『風』を使ってガンダラの巨体を『吸い寄せた』。


翼の間合いから、ガンダラはわずかに外れる。


しかし、追撃を仕掛けようと動いた……。




―――間に合ったよ、ソルジェはひとりじゃないからね。


彼女は援護するために走っていた、加速した身が宙に舞う。


『風』で強化した動きと、小柄さが融け合った。


結界のように狂暴で完璧な構えである六枚の翼、そのあいだをすり抜ける……。




「ガンダラちゃんは、殺させないよ」


『な、んだと!?』




―――ミア・マルー・ストラウスは、冷酷な『暗殺妖精』の眼でにらみつける。


自らの必殺の蹴りを、右腕で防いでみせた女神のことをね。


動ける、あらゆることに例外があるように。


ミアは女神イースの権能のなかでさえ、疲弊してなどいなかったのさ……。




―――約束があるからだよ、この容赦ない権能には三人だけ見逃される者がいる。


ミアとビビアナ、そしてフリジアだ。


女神イースの材料にされながらも、その男はジーの一族らしく約束を守らせる。


ミアが女神の六つの翼たちを蹴りながら、自由自在に空中で舞った……。




―――斬撃を放つ、ナイフとピュア・ミスリル・クローの二刀流で。


動ける亜人種の存在に、女神イースは驚いていた。


それゆえに善戦しながら、斬りつけていく。


もちろん、ミアの『お兄ちゃん』も竜太刀と共に突撃していたよ……。




「お前は、許さんぞおおおおおおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」




―――竜太刀の斬撃が、暴れて踊る。


『ストラウスの嵐』だ、四連撃の強打が女神イースを正面から襲っていた。


すべての斬撃に、今までにない威力が込められている。


ソルジェの激怒があるからで、それ以上に猟兵だからだよ……。




―――女神イースは、たったの数手で違和感に気づく。


圧倒的な強者となったはずの自分に、ソルジェが力負けてしていないのだ。


ミアとの連携があるからだろうか、意地と覚悟だけでは筋力はここまで増えない。


いいや、そういう理屈に基づいた現象じゃないんだよ……。




―――動きを、学び取っていたのさ。


圧倒されながらも、『見ていた』からね。


女神イースは先ほどよりもはるかに強くなったが、それを猟兵は学んだ。


強さだけで勝てるほど、戦いは甘くないものだよ……。




―――猟兵という戦場の霊長に、力が強いだとか速さに優れているだとか。


そんな『些細なアドバンテージ』だけで、いつまでも優勢でいられるはずがない。


「弱いモンが強いモンに勝つために使うのが、戦場での技巧ってもんだ」。


ガルフの最高傑作であるストラウス兄妹は、その理論の体現者である……。




―――連携するよ、ミアは圧倒的な機動力を使って。


ソルジェは竜騎士らしく、正面から技巧と読みで女神の猛攻に競り合ってみせる。


ミアは殺気も使いこなした、普段は隠して戦っているけれど。


今はあえて全開にしている、女神イースに『反応させるために』……。




「お前は、動くよ。ガンダラちゃんに、刻みつけられたからね!」


『何を、言っている?私は、そこの巨人族からの傷など―――』


「心に、だよ。心に、刻まれているんだ。猟兵が、どんな生き物なのかを!」


「女神イース、お前は恐れてしまった!!」




―――ガンダラが与えた恐怖めいたもの、それが女神イースを反応させる。


ミアの放つ突き刺さるような殺気と、無視できるはずもない実力。


それが合わさることで、ガンダラの刻みつけた傷が機能した。


対応したくなるのさ、放置すれば『破滅』を予感させられるからね……。




―――恐怖は戦場において、呪いよりも確実に機能してくれる。


この心理的効果は、達人たちの戦いにおいては重大だよ。


想像力を吸い込んで重たくふくらみ、女神イースの動きは鈍っていく。


ソルジェとミアは、ガルフの弟子らしくつけ込んだ……。




―――連携し、読解し。


戦いながら、さらに敵へと『適応していく』のだ。


圧倒的な強者が相手だからといって、猟兵が敗北するとは限らない。


女神イースの戦い方と武術の哲学は、あまりに『カール・メアー』らしいのだから……。




「知っているよ、その動きのアイデアは。フリジアと、組手もしているんだからね!」


「テンポとリズムは、より力を強く込めるほど。より速く動けるほど。相手よりも、強いほど。『理想的になり過ぎちまう』ものだ!!」


「読めるんだ。お前は、強いけど。強いからこそ―――」


「―――オレたち猟兵には、読み解ける!!」




―――猟兵は、『パンジャール猟兵団』は。


ガルフ仕込みの、戦場の霊長だ。


戦いの経験値が違う、世代を超越して傭兵の技巧と知識は継承された。


無数の達人たちの力をも融け合わせながら、我々は創設されたのだ……。




―――純粋すぎる『カール・メアー』の化身とは、混ざり合った度合いが違う。


我々が戦場の霊長である理由は、多くの他者と衝突してきたからだ。


ガルフの時代の戦い、今の猟兵たちのそれぞれの人生と。


仲間と敵と融け合いながら、我々は『雑多な最強』となった……。





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