表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4339/5085

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百九十一


―――猟兵たちが感じ取っていたのは、大きな『敵意』だった。


それは海中で変形しながら、浜辺へと向けて進んでいる。


一昨日の海戦の結果により、海底には多くの『エサ』が沈んでいた。


帝国兵もいれば、もちろん『ルファード』軍の兵士も含まれる……。




―――勢力の違いはあれ、お互いの『正義』のために戦死した者たちだ。


敬意を表されるべきではあるが、全員の死体を回収するのは不可能だった。


武装した死者たちは、海底を転がされるように運ばれていた。


その死者たちを『エサ』として、そいつは力を回復していく……。




―――ビビアナが呪術の視界で、共有していたモノだ。


ミアによって倒されたはずのイース教の怪物、『ゴルメゾア』である。


リュドミナの最後の策なのか、それとも復活した女神イースに呼応してなのか。


『ゴルメゾア』はふたたび動き出し、海へと潜っていた……。




―――海中に漂う戦士者たちの血と、海底を這い回る魚どもに喰われかけている肉。


それらを『ゴルメゾア』は貪り、自らを補完していたのさ。


獣のような姿は、卒業している。


より巨大になり、姿かたちはまるで巨大なナマコのようにずんぐりとしていた……。




―――海の上にいた戦士たちは、海底を動く影を見つけてはいた。


戦のせいで鯨が特異な行動でもしているのかと、考えていたのだが。


現実は我々にとって、あまりにも深刻な不運である。


『ゴルメゾア』は死者を喰らいながら、女神の使徒としての力を強めていた……。




―――彼が自ら決めたのか、それとも主である女神イースが呼んだのか。


『ゴルメゾア』は浮上を開始して、いくつかの船の底に巨体をぶつける。


沈められた漁船まであるし、海に落ちてしまった者は怪物の『エサ』にされた。


貪欲な怪物には血肉が必要で、瞬時にあわれな犠牲者は丸のみになる……。




―――戦士たちは『ゴルメゾア』の浮上を、目の当たりにした。


岩の多い浜へと、巨大な肉塊が乗り上げる。


座礁して死んだ大鯨のようだが、それは肉でつくられた『繭』だった。


変異している、『より戦いに適した姿』へと……。




―――巨肉の『繭』が破裂するような勢いで裂けて、それが奥から這い出ていく。


いくつもの目玉があったよ、それは頭部だとは限らない。


脚や腹にもあるし、尾の先にさえも目玉があるんだ。


口の数も多すぎた、皮膚のない赤い体のあちこちにヒトに似た『口』が無数にある……。




―――大きな『口』もあれば、ちいさな『口』もあった。


戦死者たちの体を無理やりに融け合わせた結果、ちいさな『口』はヒトのまま残った。


大きな『口』については、『ゴルメゾア』が『目指した変異』の通りだろう。


長い頭部の全域に渡るほど広く裂けて、鋭く巨大な牙の歯列が並んでいた……。




―――レナス・アップルが、『この姿』を見れば怒り狂っていたかもしれない。


あるいは異常なまでの納得をしたのかも、『この姿』は『彼女』には特別だからね。


赤い姿、赤い翼。


そうだ、『ゴルメゾア』はこともあろうに『竜』の姿かたちを真似ていた……。




『GHAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOHHHHHHHHHHHHHHHHHHHHッッッ!!!』




―――ボクたち猟兵からすれば、はらわたが煮えくり返るほどの冒涜だ。


海中から『赤い竜』を模した姿となって、空に向けて歌を放ったこの怪物は。


ゼファーは偽りの竜が現れたことに、激怒していたよ。


ルルーシロアに至っては、もちろんゼファーの数倍は激怒している……。




『ふざけるなあああああああああああああああああああッッッ!!!』




―――竜の歌声を、ルルーシロアは多く知っているわけじゃない。


自らの本能に刻まれたものと、ゼファーのそれだけしか知らないんだ。


それでも、『この歌声』が『竜を模した偽りのもの』だと気づける。


竜という至高の存在への模倣には、拭い切れない偽りが混じっていたらしい……。




―――それがルルーシロアには、たまらなく腹立たしいんだ。


ゼファーに対して向けていた闘争本能よりも、はるかに強い怒り。


竜でないモノが、竜であるかのように振る舞おうなどと。


気高い白いウロコが逆立ちながら波打って、すぐさま彼女は空へと向かう……。




―――傷だらけなのに、まったく気にしていないのだ。


そんな些細なことよりも、この冒涜に対しての怒りが先立った。


羽ばたきが血のにおいのする風を残して、ルルーシロアは空へと舞う。


ゼファーも続こうとしたが、まだ止血の秘薬を塗られている最中だ……。




「ゼファー!!もう少し、待ちなさい!!今飛べば、傷が大きく開いてしまう!!」


『う、うう!!そ、それでも……ッ。あいつは、あいつは……にせものなんだ!!ゆるせない……ッ!!にせものの、りゅうを……つくるなんてッッッ!!!』


「偽りでも竜だというのなら、強敵でしょう。万全の状態で、挑む必要がある」


『……それは、そう、だけど……ッ!!』




「すぐに止血は終わります。今は、呼吸を落ちつけて……血の流れをコントロールしなさい。そちらの方が、より早く、傷が固まってくれまるから」


『わ、わかった!!……すー……はー…………っ』




―――ゼファーも敵の力を読み解いている、『歌声』はかなりの大きさだ。


ゼファーやルルーシロアと、ほとんど互角と言える大きさだよ。


それは強さを表してもいるんだよ、蘇った『ゴルメゾア』はかつてより強い。


しかも、真似をしたのは竜の姿かたちと歌だけではなかった……。




―――海を蹴散らしながら、『ゴルメゾア』は走る。


浅瀬で巨体を揺さぶって、加速を得ていくんだ。


翼は長く左右に伸びていき、夏の風を捕らえにかかる。


そうだ、この『ゴルメゾア』は空まで飛べた……。




―――偽りの赤い竜が、青空を穢すように飛翔する。


死の腐臭と血の跡が、晴天のすがすがしさをえぐるように壊してしまった。


海にいる戦士たちは、恐怖で震える。


『ゴルメゾア』はから放たれる敵意の対象が、自分たちだと悟ったからだ……。




―――無数の目玉がそれぞれの勝手さで動き、あらゆる方向をにらみつける。


殺意と敵意に満ちた無数の『口』が、ガチガチガチガチ歯を鳴らした。


女神イースの眷属、ボクらとは真逆に位置する逆さ吊りの『正義』の守護者。


『ゴルメゾア』は死の腐臭をともなう『火球』を、海上の戦士たちへと放った……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ