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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百八十六


―――竜騎士の呼吸を、ゼファーは使っていた。


ストラウス家に伝わる、特別な呼吸法だよ。


だからこそ、この高さでも話しかけられたんだ。


ルルーシロアが、まだ知らない竜騎士の知識を使って有利を得ている……。




―――ゼファーは、ルルーシロアのことが嫌いだ。


自分よりも強いからだし、竜として孤高を貫いている生き方を見せつけられたら。


どこか迷ってしまうからだよ、劣等感ってものは不自由なものさ。


それでも今は違う、自分もルルーシロアの生き方のどちらをも受け入れられる……。




『……やれるものなら、やってみろ!!』




―――ゼファーの自信に対して、ルルーシロアは激怒した。


自分に勝てるなどと思い込むなど、万死に値する冒涜である。


白いウロコが怒りで逆立ち、金色の双眸がギラギラと殺気のほとばしりを放った。


普通のヒトがこの視線を浴びたら、それだけで心臓を止められていただろうね……。




『すごい、はくりょくだ』




―――ゼファーは冷や汗をかきながらも、楽しくなるし嬉しくなる。


竜はやはりスゴイのだ、自分もルルーシロアも。


自分たちは最強の存在であり、その一員なのだ。


そういう認識を得られている今が、とても心地良い……。




―――夏の蒼穹のいただき、地上にいる敵どもの怯えた視線の果ての果て。


青に融けるような高みのなかで、ついに羽ばたく空気も薄まり過ぎて消え去った。


高度の限界だ、竜の限界は凍てつくような寒さだったよ。


真夏なのに、そんなことはお構いなしに全身が冷たくて心地よかった……。




『ここが、りゅうの……りゅうだけの、げんかい』




―――竜騎士がいれば、ソルジェがいれば。


もっと高く飛べるような気がする、竜の限界を引き上げてくれるから。


そうでなかったとしても、それはそれで構わない。


空の果てのなかに至ることは、それだけで楽しくてうれしい行いだった……。




―――大地の放つ見えない引力に、ゼファーとルルーシロアが捕まる。


空の限界まで至ったのならば、それから先の道は一つだったよ。


羽ばたきながらも、落ちていく。


地上へと向かう旅が始まる、それは究極の加速を得られる神速の道に他ならない……。




―――ゼファーが、笑う。


喜びに包まれている、真の挑戦者にとって挑むことそのものが幸せだから。


ルルーシロアも、笑った。


最強の竜は、いつだって挑んでくる敵を駆逐するのを好む……。




『さあ、はじめよう!』


『わたしこそが、さいきょうだ!!』




―――空のなかで、黒と白の竜たちが踊る。


長いしっぽが空を裂いて、大きな翼は空を殴りつけた。


空の絶対的な支配者たちは、雄大にして優雅な動きを使う。


大地を見据えてるよ、引力の道に引きずられるのではなく竜たちは自ら飛び込んだ……。




―――加速が始まる、落下速度に羽ばたきを合わせた。


筋力と技巧と知識と、精神力の勝負になる。


つまりはすべてだ、竜として生きたすべての経験がこの加速の勝負で比較される。


ぶつかり合うのさ、人生のすべてでね……。




―――そういう戦いがやれるのは、何と比べることも出来ない幸福だよ。


最強の竜、グレート・ドラゴンたちがそろっているからこその奇跡だ。


落下しながらの旋回に、翼の羽ばたきを合わせる。


ゼファーは、『泳いだ』……。




―――ルルーシロアの飛び方を、完全に真似ている。


ゼファーらしいアレンジも混ぜてはいるが、嫌悪感もなく真似ていた。


泳ぐような柔らかさで、加速した身体にぶつかってくる空気の壁をすり抜ける。


そうすることでウロコが効率よく使えたのさ、海だけじゃなく空でもね……。




―――うすうす気づきながらも、プライドが邪魔して完全な模倣はやれなかった。


ルルーシロアの優れた飛び方を、今のゼファーは選べる。


加速の効率が上がった、真似をしたことに恥など感じない。


究極に必死なときには、そんな感情は湧かないものだ……。




―――それに、野生だったころのゼファーは誰かを真似することに疑問がなかった。


気にすることもなかったのさ、技巧や力はそもそも誰かが独占できるものじゃない。


ソルジェから学んだ、多くの力を学んだ。


それでいい、学び取ることがガルーナの竜の本質なのだと悟りを得たから……。




―――加速していくゼファーをにらみつける金色の双眸は、細められる。


自分よりも速く飛ぼうとしているゼファーに、腹を立てていた。


真なる孤高さは、並び立とうとする友好性にも怒りを持つ。


ルルーシロアの羽ばたきが、たんに強くなる……。




―――それは工夫ではない、技巧でも知識でも何でもない。


ただのプライドだ、ただ負けたくないからという一心でより強い力を翼に込めた。


肉体の限界を、ルルーシロアは精神力で超えているだけのこと。


それが工夫と技巧と知識を費やすゼファーに、完璧に追いついていた……。




『すごい……さすがだ、るるーしろあ……ッ!!』


『かてんさ……わたしには、だれも、かてるはずがない!!』




―――絶対的な自信は、揺るがない。


うらやましいとも思う、ずっと一人で戦って来たからこその強さがそこにいた。


素直に、そういう力も素晴らしいものだと受け入れる。


嫉妬もするが、それでも受け入れるのだ……。




―――ルルーシロアとは違う最強の力で、勝ってみせると。


自分のすべてで、勝つのだと。


挑戦者ならではの気楽さが、ゼファーに思い知らせてくれる。


空と竜は、どこまでも自由なのだと……。




『あははは!あはははは!!たのしい、たのしいよねえ!!るるーしろあ!!』





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