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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百七十四


―――真夏の焼かれるような日差しの下で、帝国側の死傷者が戦場から排除された。


その動きをしながらも、帝国軍の指揮系統は『攻撃』を選ぼうとしている。


ロロカの読みの通り、崩壊しそうな士気を建て直そうと考えていたからね。


ユニコーン騎兵の印象があまりにも大きく、彼らの突撃を恐れていた……。




―――『不利な形』は、先ほど証明されたばかりだからね。


それがくり返されることを恐れるのが、指揮官というものだよ。


このまま守りに徹しようとしても、ユニコーン騎兵の再突撃で同じ被害を受けたら?


そのあとは、互角以下の戦力にされてしまう……。




―――戦術的な失敗を繰り返す、それは致命的な悪手だったからね。


兵士はいつだって指揮官の命令で動くしかない、不自由な立場だ。


それだけに主張もするよ、『せめて妥当な戦術で応じろよ』と。


無為に死ぬことになるなんて、誰だって嫌に決まっていた……。




―――士気崩壊は、兵士の不満からでも深刻化する。


それを防ぐためにも、より勝ち目のある戦術を選ぶしかない。


ユニコーン騎兵を恐れた者が、逃げ出す可能性があるからだよ。


逃げることを恥じだと指摘されたものの、それでも逃げれば死なないのだから……。




―――ロロカからのメッセージは、帝国軍の心を操っている。


恐怖と想像力を使いこなしてみせた彼女は、最高の戦略家の一人だろうね。


非常に賢い判断ではあるけれど、それと同時に温和な彼女は内心で考えてもいる。


帝国兵どもが自らの統制に使うのは、『攻撃』への戦術変換だけではないと……。




「亜人種どもに、好き放題させるな!!」


「帝国軍は、ユアンダート陛下の思想を打ち建てる義務を背負っているのだ!!」


「人間族が劣等種族に負けるなど、あってはならない!!」


「亜人種どもを根絶やしにするのだ!!あんな連中を恐れるな!!」




―――恐怖に対しての処方の一つは、怒りと憎しみで上塗りしてやることだった。


帝国軍が常に使ってきた方法であり、それはとても有効でもある。


人間族は亜人種よりも常に優位でなくてはならないと、彼らは自己洗脳するのさ。


劣った存在に負けることで、怒りを燃やせるようにね……。




「ディアロスの強さを、見せつけた。それが生む怒りもある」




―――学者らしい潔癖さかもしれないと、ロロカは考えてもいた。


ヒトはあらゆる行いに、政治的な解釈をつけてしまうものだ。


とくに戦争という政治行為の最中は、それが検挙になる。


『正義』は政治が主張するもので、学問が追求する『真実』とは異なった……。




―――どちらも『正しいこと』を示す言葉だけれど、まったくの別物だよ。


『正義』は政治が主張する数だけあるけど、『真実』は究極的には一つだけ。


帝国軍は『正義』を頼り、人種に対しての憎悪感情で組織の統制を企画していた。


そして、それはいつものように有効だったよ……。




―――『亜人種が憎い』という感情で、連中は結束していく。


刷り込まれた政治的主張/『正義』の成せる業だし、本能的なものでもあった。


誰もがそうとは限らないが、ありふれている感情ではあるからね。


人種差別や異邦人への憎悪、人種の違いはいつでも暴力の原動力にはなった……。




―――戦争や政治にはとても相性がいいものさ、憎しみや怒りは『正義』と仲良しだ。


ロロカは若干の失望を、帝国人に対して抱く。


帝国に対して、失望を集中しようと試みていた。


人間族全体を嫌いたくはないからだ、彼女の愛する夫も人間族だからね……。




―――ヒトは違うということに、良かれ悪かれ敏感だった。


人種差別を軍事力に使うことは、とくに有効な手段ではある。


ロロカもまた、その反応をある意味では利用してもいたよ。


帝国人がユニコーン騎兵に対して、人種差別の力を使うことも計算していたからだ……。




―――そういう組織ではある、ユアンダートの人間族第一主義の化身だからね。


亜人種に対しての不当な怒りをぶつけることを、戦いの原動力にする。


敵陣が再編されていき、『攻撃』の形を作り上げていく様子は実に感情的だった。


亜人種への怒りで、連中は統制を保とうとしている……。




―――不満や恐怖や迷いさえ、プライドを帯びた怒りを用いれば誤魔化せたから。


有効な方法であることは、ボクも認めようじゃないか。


それでも、最強の手法とはとても言えやしない。


怒りとプライドだけでは、究極の統制にはなりえないからね……。




「……ロロカ姉さまのおっしゃられた通り、攻めに転じるようです。腕が鳴りますね!」


「ええ。読みが当たっているときの戦いは、とても気楽なものですから。皆さん、『守備』を心がけてください。戦いは常に、守る方が有利ですから!」




―――戦場の真実の一つだよ、戦闘行為は守る方が有利だ。


攻め込むことが勇敢だと評価されるのは、基本的に不利かつ危険だからだよ。


帝国軍もそれを理解しながらも、『攻撃』を選ぶ。


怒りに任せての過度な突撃になるだろう、ロロカはそれを誘ってもいた……。




―――受け止めるための左右の翼を長くした『守備』の陣形に、こちらを変えている。


その陣形の厚みは薄く、敵からすれば突破を試みたくなった。


『攻撃』させるための誘いに、帝国兵どもは様々な考えを抱く。


ベテランはリスクを感じたし、若く血気盛んな者は勝機を覚えた……。




「……リエル、学んでおきなさい。戦場では、敵の意志も操るものですよ。そうすれば読みやすくもなりますから。そして、相手の行動が読めれば、自分たちの成すべき道が明白となる」


「はい!あいつらを地獄に引きずり込んでやります!」




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