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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百六十五


―――パロムは信じるというよりも、選ぶことに決めた。


フリジアは憎むべき『カール・メアー』、その一員ではあったのだが。


共に戦うに足る覚悟は感じられる、それはディアロスにとって大きな価値がある。


勇壮な極北の戦士たちは、戦いで多くを語り合うものだからね……。




―――城塞から城塞に跳び移るという、極限的な運動。


それは戦いそのものであり、それを共に行うことで多くの知覚を得ていた。


肌が伝えてくれるし、彼女たちが最も頼りにする『水晶の角』からも伝わる。


フリジア・ノーベルの心までは探れないが、有能な戦士なのだと……。




「使えるのなら、使うまでですね!!」


「そうだ!!使ってくれるといい!!」


「跳びます、よ!!」


「ああ、置いて行かれないように、飛ぶ!!」




―――ディアロスが僚友として選んだとき、裏切るべきではない。


厳罰が待っているからだよ、パロムはフリジアが裏切れば自分の手で殺す気でいた。


パロムにとって、それはこの選択に伴う責任だったよ。


戦況を悪化させるような真似をすれば、槍で串刺しにしてやると……。




―――その覚悟をすればこそ、信じられなくても共に行動することだってやれるのさ。


じつにディアロスらしいもので、深い信頼関係のない者同士が共に戦う最低限の保証だ。


ヒトとヒトのあいだにある溝や壁は、『オルテガ』のそれよりも迷宮的だからね。


女神イースはべつに嘘つきでもない、ヒトはヒトを拒絶し合って今日まで来た……。




「ありがとう、私を拒絶しないでくれて」


「……私たち、ディアロスは……寛大なのです!!」


「そのようだな!!とても、ありがたいよ!!」


「……貴方は……どうして、『カール・メアー』なのだ!?」




「拾われた。そこが、『家』だった。それまでと言えば、それまでだな」


「だから、あんな残酷な連中の一員でいたと」


「そうだ。残酷というか、いや……残酷で、間違っていたのだが。ヒトは、流れに沿ってしまうものだ。私は、周りの者とのつながりを求めて、間違いさえも信じた」


「弱い。それは、弱さだと思います!!」




「そうだな。本当に……だが、誰もが、強くなれるわけではない」


「私たちは、強さを尊ぶ。極北からの風に凍てつきながら、瞑想だってする!!」


「瞑想は、私たちもしたのだが……どうにも、良くない夢想をしたのだ」


「何を、自分の内側に見たというのです?自然は、多くを教えてくれるのに!」




「孤独だ。孤独と、それを補うための、方法……少を滅ぼし、多を守る。それは、まるで正しいだろう?ありふれた正しさのある、考えじゃないか?」


「たし、かに……少のために、多が滅びるよりは、合理的。ありふれた、考えかもしれませんね」


「ありふれている。だが、だからといって、ありふれているコトが、正しさの証明にはならないだろう」


「それは、そうです……ね」




「少を消し去れば、世界はマトモになると思ったのだ。その行いの、善し悪しなど、自問もせずに」


「無責任、ですね」


「宗教とは、委ねる行いだ。自分で考えるために、信仰を選ぶ者は、極めて少数だ」


「貴方も、そうだった」




「そうだ。周りに、いともたやすく流された。帝国もそう言っているし、周りの皆もそう言っている。私は、何とも狭い了見しか持たなかったのだ。宗教は、ときに、あまりにも可能性を否定してしまう」


「『カール・メアー』は、やはり嫌いだ!!」


「ああ!それで、いい!」


「笑顔で、言うな!!それはそれで、何だか混乱しそうになる!!」




「考えるのも、悪くないだろう」


「ディアロスは、どちらかと言えば、感じ取るタイプなんです!」


「同じことだ。自分で感じ取ったコトを、考えるのだから」


「世界は、フクザツで、苦手かもしれない!!でも……」



「でも。どうだと言うのだ、パロムよ?」


「考えを、感じ取るのを、続けようと思う!!『カール・メアー』に、なりたくないからだ!!私は、私の辿った道で見たモノで、考えたい!!フリジア・ノーベル、貴方を、証明してください!!」


「証明する、か」


「どういう方法なのか、何がどうなるのを見たいのかさえもっ。私には、分からない。でも、証明して欲しい。貴方が、どんなヒトなのか!!」




「うん。してみせる……私が、なすべき道を、選ぶぞ」


「期待は、しておきます」


「お前は、いいヤツだなあ」


「当然です!!ディアロスは、いつだって明朗快活!!陰険で、残酷な『カール・メアー』とは、違うんです!!」




―――誰かを嫌い、何かを嫌う。


それもまたアイデンティティを、確認させてくれる行いだ。


パロムはフリジアを嫌うべきかどうか、分かっていないけれどね。


『水晶の角』は語りかけてくれている、偉大な北風のような覚悟を……。




―――フリジアはね、自分のことを全く考えていないんだ。


だからこその跳躍であり、だからこその追跡能力。


パロムは利他的な戦士にならば、いつだって敬意を持てるディアロスの戦士だよ。


誰かのために戦える者を、戦士の文化が軽んじられるはずもない……。




―――パロムにとっても、得難い出会いの一つだろう。


信仰に生きる者に、真の宗教家との遭遇する機会は稀だよ。


多くのそれらとは出会う価値がないからね、ただの聖典の劣化コピーに過ぎないから。


自分の考えを神さまにぶつけられてこそ、本当に価値ある思考だ……。




―――少なくとも、変革の時代を生きようとしている者にはそうだよ。


古臭く固着した教えでは、何一つの救いにもならない。


世界が変わるのならば、宗教だって変わらなくちゃならないんだ。


『カール・メアー』が亜人種や『狭間』を殺す理由が、解消されたとすれば……。




―――『カール・メアー』のやさしい慈悲は、どういう変革をすべきだろう。


亜人種や『狭間』と人間族が、手を取り合える世界が来たとすれば。


どんな『カール・メアー』になれば、そのやさしさを正しく使えるのか。


フリジアは、自覚なしにそんな考えをしていたんだよ……。




―――パロムもそうだ、本当に確かめたいのは変化の可能性だ。


どこまで石頭な宗教が変われて、憎むべき存在から違うモノになれるのか。


ミア/亜人種と、ビビアナ/『狭間』のために。


必死さを使える人間族/『カール・メアー』、それは混乱を招くほどの可能性だ……。




―――選んだのさ、信じられなかったとしても。


それでも、可能性を確かめてみたいと。


かつて『狭間』の子とその母親を守れなかった者は、責任がある。


自分の生きた道で確かめるのだ、この可能性の価値を……。





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