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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百六十三


―――混沌の霧が支配する、完全な掌握が不可能な空間。


『戦場』において戦士が求めるのは、何よりも明瞭な目標だった。


ミアはそれを与えてあげたのさ、『オルテガ』内部の争いよりも。


城塞を防備しつづけて欲しい、という方針をね……。




―――戦士たちはうなずいてくれたよ、『パンジャール猟兵団』の名は大きい。


英雄たちに任せればいいと指揮官は決めて、自分たちの使命にまっとうする道を選ぶ。


ありがたい判断だよ、女神イースは厄介ではあるものの。


戦士たち全員が押し掛けたところで、戦いやすくなるわけでもない……。




―――役割分担をしっかりとこなすべきだ、『オルテガ』に迫る敵を迎え撃つために。


ミアは一つの混乱を収めてみせたよ、おかげで女神イースに集中しやすくもなった。


猟兵のターゲットになったのさ、女神イースを狩る役目はね。


ビビアナはミアの行動に納得し、評価するために微笑んだ……。




「さすがは、猟兵ね」


「戦場の霊長は、私たちなんだ!」


「ええ、行きましょう」


「お願い、『曙』!」




『ヒヒイイイイイイイイイイイイインンンッッッ!!!』




―――ユニコーンの力強い歌声は、戦士たちも勇気づけた。


迷いのない加速をする『曙』の勇姿、そこには詩的な美しさがある。


野生的な荒々しさは、いつだってヒトの心を支えてくれるものだ。


神秘の霊馬と戦場の霊長、それらの姿は伝説的に違いない……。




―――ミアの到着に気づいたのは、城塞周辺の戦士たちだけではない。


もちろん上空を旋回しているゼファーも、ミアを見つけていた。


『曙』の歌声を聞き届けてくれたのさ、聴覚のあとは視覚で探し出す。


ゼファーは旋回の角度を使って、地上の目標地点を示した……。




「ゼファーが、教えてくれている!」


「行き先を、誘導してくれているのね。さすがだ!」


「『曙』、あそこの階段を駆け上って!」


「ま、まさか。ユニコーンに……迷宮都市の城塞を、伝って跳べと!?」




「うん!!ユニコーンなら、それくらいやれちゃうんだよ!!」


「そう、なのねっ」


「ちょっとは危ないけど、ガマンして!!」


「分かった!!叔父さまのところに、早く着けるのなら、それでいい!!」




―――乙女たちの同意を得た『曙』は、『迷宮都市』の攻略に取り掛かる。


迷路のように入り組んだ都市内城塞、その壁に設置された階段を駆け上った。


警備の戦士たちとぶつからないようにね、ミアとビビアナは警告を叫んでもいる。


「気をつけてね!」、「避けなさい!!」……。




「う、馬が……っ!?」


「城塞に登ってしまったぞ!?ど、どうなっているんだ!?」


「あれは、ユニコーンだ……『ストラウス商会』の、魔法の馬」


「ストラウス卿の、関係者ということか!!」




―――それなら非常識な存在であったとしても、合点がいくのだろう。


戦士たちは進んで『曙』のために、道を開いてくれた。


古びた城塞や、昨夜の戦いで壊れてしまった城塞も多いけれど。


賢いユニコーンは、自分の足場を知的な分析の果てに選び抜いてくれる……。




―――『迷宮都市』の難攻不落さを打ち建てた、城塞の迷路の突破を開始した。


城塞から城塞に、迷路を作り上げる分厚い城塞の上をジャンプで跳躍していく。


『オルテガ』市民たちは、この『攻略法』を目撃して複雑な感想を抱いたよ。


自分たちにとっての守護神が、今日もまた攻略されているのだから……。




―――敵にではない、それが幸いなことだね。


味方に攻略されるのであれば、悲観主義に落ち込む必要もないのだから。


それに極北のユニコーンに攻略されたからといって、この土地の歴史の価値は下がらない。


中海沿岸地域に限定すれば、『オルテガ』の『迷宮』は完全な防御力だよ……。




―――とはいえ、『曙』の攻略性能を見せつけられたとき。


恐怖も生まれてしまったのは、人類の悪癖の一つかもしれない。


『ストラウス卿の手勢』に、『オルテガ』は容易く攻略される。


その事実を認識したとき、不安を覚えた市民がゼロのはずもなかった……。




―――人々が争いをやめられない理由の一つが、ここにもいたわけだ。


『自分たちを容易く破滅させられるかもしれない存在』を、ヒトは異常に恐れる。


正しくもある、動物的かつ根源的な考え方だった。


ヒトが分かり合うには、それなりの労力が必要となる……。




―――むろん、そんな『些細な自然現象』に構うことはない。


怯えてもらえるのであれば、それは戦士にとって名誉でもある。


力を認識してくれるのであれば、『自由同盟』へ参加したがる意志も増えるからね。


敵か味方か選べと、ボクらは軍事力と微笑みで外交をしている真っ最中さ……。




「『曙』、じゃーんぷ!!」


「落とさないように、キレイに飛びなさい!!私は、一般人だということを忘れないようにね!!金持ちのお嬢さまなのよ!!」


「運動神経いいから、だいじょーぶ!!」


「そういう課題評価は、しなくていいの!!」




―――ビビアナの顔が引きつる程度には、『曙』の運動神経は常識離れしている。


城塞とのあいだは、場所によりけりだが8メートル以上の幅もあった。


『曙』はその距離を、ほとんど助走もつけることなく飛び越える。


『白夜』ならば数段上手な跳躍で制しただろうから、ミアは驚きもしていない……。




―――ユニコーンやディアロスに詳しくないビビアナは、想像がつかない。


想像がつかないことは、怖いものだった。


当たり前だよ、それを再認識しながら。


ビビアナは『カール・メアー』の教義を、また一つ理解していく……。




「分からないコトって、怖いものね。少数派は、怖い。そう、そうだ。想像力の使い方を間違えているのよ、『カール・メアー』は」


「何か、むずかしい!」


「難しいの。人種差別って、本当に……でも、解決してやる。啓蒙活動は、好きだわ!」


「けいもう……うーん、まあ、とにかく!!見えて、来たー!!」




―――戦場が見えた、幾重にも並んだ城塞を飛び抜けることで。


『曙』の背から、ミアとビビアナの瞳に赤い翼のきらめきが見える。


ビビアナは恐ろしさを、覚悟の力でねじ伏せた。


ミアの猫耳が、何とも嬉しそうに踊っている……。




「あれが、女神イースよ……ッ」


「倒すよ!!私たちは、負けていられないんだからね!!」





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