表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4309/5087

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百六十一



―――詠唱長リュドミナが死んだ、今回の事件の真の黒幕がね。


その彼女が死んだおかげで、一人の魂が解放されていた。


ビビアナ・ジーだよ、精神を分裂させるような不思議な旅路の果てに。


彼女はようやく自分の肉体へと、戻ろうとしている……。




―――多くの視界を見ていた、呪術の天才の一人。


そして極めて高い知性の持ち主は、自分の意識が一つに戻ろうとする最中にさえ。


戦術を練り上げようと試みていたよ、ここにも執念の人物がいたのさ。


ビビアナは、自分の役目を設定している……。




「叔父さまを、助ける……んだ……ッ」




―――どんなに不可能なことなのかなんて、考えるのはやめた。


奇跡の確率なんてものは、知性で計算すべきじゃない。


無理を通して、すべてを打ち負かさなければならない。


迷う必要はその道にはないのが救いだ、ただひたすらに全力を尽すのみさ……。




―――とても賢い女性であり、心理操作術の達人だ。


リュドミナとレイチェルの会話からも、学びを得ていたよ。


リュドミナが弱るほど、その統制は崩れ去っていたから。


二人の会話の途中からは、この不思議な目の呪術の『主催者』は彼女だった……。




「探るんだ。何でもいい。全部だ……全部っ!!」




―――自分の肉体に向かって、集約していく感覚。


それを精神力で無理やりに、真逆の方へと進もうとする。


ソルジェじみた精神力だし、やはり『狭間/ハーフ・エルフ』の才能もあった。


大きな才能ではあるのさ、『狭間』という混血はね……。




―――ビビアナの才能は、さっそくだけど一つの奇跡を勝ち取っていたよ。


リュドミナにとって最愛の存在である、女神イース。


その視界の一部を、奪い取っていた。


正確には女神イースではなく、その部品となった巫女戦士の視界をね……。




―――ソルジェが見えた、笑いながら戦う赤毛の片目。


そのすぐ近くで、従姉を見る。


猟兵みたいに笑い、女神イースに対して恐れを持ってもいない。


その従姉の姿には、ビビアナは何とも勇気づけられた……。




「がんばっているじゃないの。さすがは、私の親戚……私の『家族』ね」




―――メダルド・ジーを、永遠に失ったかもしれない。


それは可能性として、受け止める必要もある。


もちろん肯定してやる気までは、毛頭ないのだけれどね。


あらゆる情報収集のためには、寛容さが必要なだけだと判断していた……。




「……この目は……この資格情報は、叔父さまと『融合』させられた……『カール・メアー』の巫女戦士のモノ……」




―――ジーの一族の才媛は、推理を始める。


『融合』という事実に、『蟲』と『繭』から何を連想すべきか。


知識は昆虫の生態を、彼女に思い出させていく。


好奇心に逸る学者の一人が、かつて『それ』を切り開いたて確かめた……。




「『蝶』なら、『繭』のなかで……カラダのすべてが融けてしまうみたいね。あらゆる部分が、内臓だって……ドロドロに……叔父さまも、そうだった……?」




―――何とも生々しく、そしておぞましい想像ではあるが。


冷静な知性の執行者であるビビアナは、まったく恐怖心を抱くことはない。


どんな情報だって、拾い出す。


そのためには、想像力に恐怖の枷をかけるべきじゃない……。




―――心理操作術の腕前は、やはり上がっている。


リュドミナの大いなる遺産の一つは、ここにあったよ。


試練はヒトを成長させる、とくに天才に対してのそれは。


ビビアナは、可能性を選んだ……。




「いいえ。ドロドロだったら、ここまで……視覚を奪えないはず。魔力は、臓腑と血管、神経系に素直に動く……それを、呪術は読み解いて……奪い取るように同調するもの。まだ、女神イースの体内で、あの巫女戦士や叔父さまの臓器は、あるのよ」




―――それが何になるのか、そんな厳しい自問をぶつけていく。


知性は追い詰めたり、課題を与えてみたりするべきだからね。


臓器があるのなら、どうすればいいのか?


『逆』をすることは、出来ないだろうか……。




「そう。『逆』にする。叔父さまの肉体が、女神イースになった。あの『繭』で……『繭』を使えば、叔父さまを取り出せたりしないかしら……」




―――荒唐無稽かもしれないが、呪術の世界において『肉体変化』は大きい。


ヒトを巨大な魔物の形に変えた呪術も、各地にあるのだから。


魔物どころか、女神イースのように神々も制限してしまえる。


『繭』と『蟲』を使えば、取り戻せるかもしれない……。




「可能性なんて、知ったことじゃないわ。試すだけね。どうにか、あの『繭』の残骸に……女神イースを突っ込めないかしら。そして、叔父さまを……呼ぶ。私の声なら、届く、はず。ううん。ダメだ。可能性を、疑うな。信じろ。信じ込め、私……っ!!」




「……やれる。私は、やれる。叔父さまを、取り戻す。『繭』と『蟲』を使って、『逆』の儀式をする……変えられたなら、もう一度、変えて……元に戻すんだ。数学みたいなものね!科学的なハナシだ!!」




―――パズルみたいなものだと、認識することを才媛は選ぶ。


臓器の位置を確かめる方法も、考え始めた。


もちろんあるよ、『臓器に含有される魔力の質は異なる』。


解剖学の一般的な知識だから、そんな事実はビビアナの基礎知識のうちさ……。




「女神をバラバラに解体して、叔父さまの臓器を……『繭』にぶち込む。そしたら、戻せるかもしれない…………」




――――首を振る、精神世界のなかでもジェスチャーは自分に有効だった。


自分に教え込むんだ、『どんな可能性もあきらめるな』と。


困難な任務には、自分を理論武装する必要がある。


この状況を最も把握している者は、間違いなくビビアナだからね……。




「私があきらめたら、誰にも……叔父さまは救えない。ストラウス卿の『魔眼』なら、臓腑の違いくらい見分けられるわよね。魔力の質が見えるなら……竜も、そうよ。竜なら、もっとたやすく……ゼファー。あの黒い竜なら…………あきらめている場合じゃないわね」




「私が成すべきは、ストラウス卿に情報を伝える。まずは、それね。そこから先は、考えながら移動するしかない…………懸念は…………知ったことかよ。叔父さまは、助ける」




―――メダルド・ジーの救出計画を、ビビアナは練り上げた。


それと同時に、一切心配しない道を選ぶ。


メダルド・ジーについてはね、その代わり他の心配事は受け入れた。


リュドミナの言葉だ、「遠からず亜人種は消える」……。




「強がりにしては、ウソっぽくなかった。レイチェル・ミルラは気にしないかもしれない。強いから。でも、私は気になるわ……弱いからね。でも……あれは、本当に……比喩なのかしら?それとも、もっと……厄介な……直接的な権能でも、女神は持っている……?」




「…………リュドミナが生きていたら、教えてくれそうなのに。化けて出ないかしら。この情報限定なら、受け付けるわよ!!」




「……返事はないから。本当に、死んだのね。リュドミナ・フェーレン……アンタのことは、大嫌いだわ。こんな厄介なことを引き起こした……『彼女』も……レナス・アップル。貴方は、何かを知っていたのかしら。それとも、知らなかったの……?」




―――言葉は戻らない、だから。


肉体へと戻る道を選ぶ、抵抗をやめて。


ビビアナの精神は、彼女自身の肉体に向かって流れていく。


肉体へと戻るその瞬間、一瞬だけ視界がブレていた……。




―――海が、見えたよ。


海に向かって、這いずる。


無数の視線が、それぞれにふらつきながら朝陽を映す海面を見ていた。


ビビアナは直感的な確信を得た、『アレはまだ生きていたのか』……。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ