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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百四十七


―――ガンダラの目の前で、『繭』がふくらんでいた。

『繭』は黄金のかがやきを強めながら、その内側から突き出してくる翼の手数を増やす。

連続して放たれる攻めを、巧みに操られたハルバートによりガンダラは受け止めた。

互角だったよ、それはこちらにあまりにも有利なことだよ……。




―――ガンダラは一人じゃないからだ、『女の声の男たち』は攻略されつつある。

戦士たちの一部が、再び『繭』を包囲しようと迫っていた。

ルチアは槍を選ばない、懲りたからだよ。

自分の力量に相応しいのは、遠距離からの援護射撃だと判断した……。




―――正しい判断だった、ガンダラの邪魔になってはいけない。

女神イースに挑めるほどの腕前は、『まだ』彼女にはないのだから。

自分に失望をしているヒマもなければ、する必要もない。

弓と矢を装備し直すと、『繭』の背後へと走っていた……。




「援護するわ!!ガンダラさん!!」

「ええ、頼みますよ」




―――六枚の翼が自在に動き回るから、それをハルバート一つで防ぐのは難しいものだ。

六対一の戦いが、今はどうにか六対二になってくれる。

女神イースの翼と反射神経は、異常なほどに素早いものでね。

ルチアの放った矢をも、叩き落としてしまう……。




「何度だって、撃ち込んでやればいいんだ!!」




―――成長しようと藻掻く若者に、迷いはない。

とてもいい集中力で、前向きな心理状態だったよ。

叫ぶことも、大きな力となっている。

ルチアの叫びに戦士たちは鼓舞されて、彼らもまた前向きになってくれた……。




―――ガンダラは、この協調がとても嬉しいのさ。

大昔の奴隷だったころのガンダラであれば、巨人族以外の者に興味は薄かった。

大嫌いな人間族と、失望に値するあきらめを選んだ自分たち巨人族。

亜人種に対しての興味は、あまりにも希薄だったけれど……。




―――多くの猟兵と出会うことで、ガンダラもまた変わっていけたのさ。

猟兵には多くの亜人種が含まれているからね、ヒトは交流により変われる。

亜人種たち同士だって、昔から仲が悪かったからね。

『カール・メアー』の千年間の検証は、正しくもあるんだよ……。




―――亜人種も自分たち以外の亜人種を嫌うもので、それは今だって変わらない。

人種の差は厳格でいつだって人々を分断しているけれど、例外が目の前にいるんだ。

ルチアは前に飛び出したけれど、彼女を庇うように人間族の戦士たちも前進する。

亜人種たちの『盾』になるために、彼らは動いた……。




「『盾』になると言っただろう!!ルチア・クローナー!!勝手に飛び出すな!!」

「オレたちを、ちゃんと使え!!ちゃんと頼れ!!仲間だろう!!」




―――ガンダラは喜ぶよ、猟兵となったあの日から。

ゆっくりだけれど、世界は確実に変わりつつある。

実感が得られるんだ、若い人間族たちの言葉にね。

大嫌いな人間族たちを、今は嫌ってはいない……。




―――少なくとも、『仲間』なのだと信じられる。

実際に命の危険をかえりみずに、ルチアを庇うために動いた人間族を見ていると。

戦場での行動は、とくに命懸けの行動というものは正直なものだよ。

ヒトは自分の命に対して、嘘なんてつけるものじゃないんだからね……。




―――女神イースは、たしかに人間族に対して甘い判定をしてくれている。

人間族の滅びを、どうやら彼女は望んでいないようだから。

羽根の弾丸を撃ち出さなくてなっているのも、事実だ。

これはおそらくガンダラのがんばりが大きい、互角に打ち合うことで余力を削いだ……。




―――戦闘はコミュニケーションであり、モチベーションの強弱は力に反映される。

人間族たちの行動を喜ぶガンダラの力は、かつてないほど強まっていた。

『仲間』という概念に、かつて失望したはずの男。

それが今では、名前も知らない『ルファード軍』の人間族の戦士たちを信じられる……。




―――自分の変化についても、ガンダラは満足しているんだよ。

かつてと変わった自分を、肯定的に受け入れられるとき。

ヒトは、他に類を見ない喜びを得られる。

成長や進化を実感しながら、ガンダラはさらに前傾した攻めを選んだ……。




「ルチア!!指示を出しなさい!!私は、その余裕がない!!」

「は、はい!!分かった!!」




―――役割分担をする、ガンダラは背後を気にしないことにした。

ただひたすらに『繭』と、六枚の翼の対処に集中していく。

岩をも砕く強力なフルスイングの乱打は、あまりにも激しいものだった。

巨人族で二番目に強い男の、全身全霊以上の攻撃が持つ破壊力は女神の翼を傷つける……。




ガギイイイイイイイイイイイイイイイイインンッッッ!!!




「つ、翼が……ッ!!」

「すごい!!つ、翼の一部を、た、叩き割っちまったぞ!!」

「喜んでいないで、取り囲みなさい!!矢を選ぶの!!巨人族たちや、ドワーフ、それに接近戦の『達人』だって自信があるヤツは、あいつの四方に向かって!!取り囲むんだ!!ガンダラさんだって、休みたくなるかもしれないからね!!」

「りょ、了解だあ!!」




――――ガンダラはルチアの声も、大して聞いちゃいない。

その余裕もかなぐり捨てての猛攻だ、斬撃を叩き込み続けるだけに集中する。

必要な行いだ、『仲間』たちを守るためでもあったし。

女神イースの動きも、徐々に強さと速さを増しているからでもあった……。




―――強打の一撃で翼の先端を打ち砕いてみせたものの、翼はうごめき再生している。

女神イースの生命力は、どうやら『ギルガレア』を超えているかもしれない。

最高の聖歌の歌い手が、神秘の力を注いでいたおかげだろうか。

ガンダラも考えつつある、単独での勝利は不可能だろうと……。



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