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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百三十五


―――女神イースと戦う、その言葉に戦士たちは戸惑いながらも受け入れた。


慣れとは偉大なものだったよ、ヒトの柔軟性もさすだね。


戦士たちに恐怖はない、今のところは隊伍を維持して進み続けられる。


矢をつがえ、槍を構え直しながら『繭』を見た……。




―――その周りに集まる職人街の人々もね、なかなかの警戒ぶりだよ。


ずらりと並んでいて、かなりの練度がある兵士のように見えた。


幸いなことに武装をしていない、そのおかげで脅威の度合いは低い。


蹴散らしてしまうのであれば、手っ取り早くもあるが……。




―――それは市民を虐殺することになるから、ガンダラは可能なら避けたい。


可能なら、という点が重要だよ。


ガンダラは状況次第なら、それをやる覚悟はあった。


汚名をかぶるのも戦では、ときに必要な行為だよ……。




―――とくに傭兵稼業そのものや、『副官』という立場は辛いものだ。


傭兵が雇われる理由の一つは、残酷さがもたらす不名誉を肩代わりさせることだよ。


正規兵に殺させるよりも、ずっと傷が浅く済むからね。


根無し草の傭兵ならば、戦いが終われば追放すれば後腐れはない……。




―――立つ鳥跡を濁さずじゃなくて、立つ鳥に濁った不名誉を押し付けもする。


ガルフはソルジェに対しては、そういう戦いはやらせなかったけれど。


ガンダラには教えてもいるよ、不名誉のかぶり方を。


それが猟兵の副官としては、いつ必要になるか分からなかったからだ……。




―――冷静な瞳が、戦場を見回していく。


信仰する神を持たないガンダラでも、祈りたくなるときはあった。


今がまさにそのときで、どう考えても操られている市民たちのために祈っている。


彼らが暴れ始めたときに、どうすれば最も簡単に排除できるのか……。




―――女性もいるし子供までもいたが、彼女たちは脅威じゃない。


ガラス職人たちのなかには、それなりの巨体の男もいる。


彼らが問題になりそうだったよ、どうすれば殺せるのかを考えなくては。


考えはすぐにまとまる、ガンダラは冷徹さも選べるからね……。




「あの市民たち、女性と子供たちを、無理やりにでもこの場から回収しましょう」


「そ、それは、誰からでしょうか!?」


「片っ端からです。一人でも多く、引き離してください」


「りょ、了解です!抵抗、すれば……」




「縛り上げる。女性と子供ならば、『蟲』に支配されていたとしても、その力は知れているでしょうからな」


「なる、ほど。ですが、もしも……常軌を逸した力を、彼女たちが発揮したら、どうしたら」


「そのときは、殺す他ありません。女子供までもが戦力になるとすれば、それこそ早く始末しておかなくては、『オルテガ』が内側から崩されてしまいます」


「た、たしかに……しかし、なかなか……」




「したいわけではありません。ですが、帝国の軍勢が迫っているのです。我々には、余力が多いわけではない。連戦で、疲弊してもいますからな」





―――理論武装を兵士に施すことは、とても大切な行いだよ。


ヒトは迷ってしまえる動物だからね、合理的な正しさにさえ逆らえる。


だから、戦場や極限状態では指導者が求められた。


『繭』という超常的な現象を目の当たりにしても、冷徹な事実を告げられる者が……。




―――ソルジェがこの場にいなくて良かったと、ガンダラは思っていた。


女子供を死なせるかもしれない選択は、あまりにも不名誉だからね。


そういうたぐいの泥をかぶるとすれば、副官の役目なんだよ。


ガルーナ王になる男に、不名誉の傷は少ない方がいい……。




―――ガンダラは不名誉を好む男ではないが、許容は出来る男だった。


ガルーナ王に仕える気でいるし、『オルテガ』の重要性も理解している。


この『オルテガ』を失うわけにはいかない、『ルファード』にとって最大の盾だ。


ここは橋頭保としても優れているしね、タフな城塞都市はボクたちに必要だよ……。




―――城塞を整備して、戦力を配置しなおせれば。


『プレイレス』の戦力と、強調して戦線を築くことが出来れば。


帝国に対して攻め込みやすくなる、ここは帝国攻めのために必要な場所だよ。


『攻撃』を考えるのがガンダラという猟兵で、いつだってクールだった……。




「祈りながら、彼女たちの保護と拘束、可能ならば収容を。牢でも蔵でも地下室でも構いません。そこに閉じ込めれば、暴れても殺さずに済みますからな」





―――必要性と同時に、希望も与えたんだよ。


それも理論武装には必要なことだね、絶望ではヒトは長く戦えない。


絶望的であっても、希望の光があればどこまでも戦えるようになる。


理論武装をしてくれる者は、戦士たちには聖者のようにありがたい導き手さ……。




「了解しました!女性と、子供たちを保護します!!」


「ええ。片っ端から。女神イースを守ろうとしている市民たちは、中心部を除いて戦力の有無に対して無頓着ですからな。女神に戦術があるとするのなら……この排除は有効となります」




―――適当な配置だったのさ、女性や子供たちも屈強な男に混じって並んでいた。


これでは『壁』として、あまりにも弱さがあるよ。


戦術的には、あまりにも弱い。


完璧な統制能力があったとしても、軍事的な資質はないようだ……。




―――あるいは、こちらにとって最悪のことに。


女性や子供たちさえ、屈強な体躯の男ほどの戦闘能力があるかもしれない。


そうなれば、たくさんの死体を作らなくちゃならないだろう。


だからこそ、ガンダラは珍しく祈ったんだ……。




―――女性と子供たちを、戦士たちが捕らえて引きずり出していく。


彼女たちは暴れたが、常軌を逸した力などではない。


ありがたいことに、無理やり抑え込めばそれだけで拘束は出来そうだった。


縄や鎖で縛れたら、どうにか無力化が叶ったよ……。




―――ありがたいことだ、これで女子供を殺した汚名だけは避けられそうだ。


男どもについては、どうなるかは分からない。


それでも女子供を殺すことの罪深さに比べたら、かなりマシになる。


ガンダラは罪科の重さをはかりながら、ちいさくうなずいた……。




―――神さまに対しての感謝の方法は、知識のなかにしか持っていない男だ。


本当の信仰心なんて、ガンダラという巨人族の男は持っていない。


誰よりも無神論者である男の一人なのに、神さまの一人に礼を述べる。


とりあえず、すぐ近くにいる女神に祈ったのが無神論者らしい選択かもね……。




「ありがたいことですな。貴方に軍事的な才覚がないおかげで、私たちはか弱き無辜な者たちを殺戮せずに済みそうだ。その点についてだけは、感謝してあげますよ、女神イース。こんな形じゃなければ、もう少し嫌わずに済んだかもしれませんな」




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