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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百三十四


―――『繭』のなかで融け合った光る繊維たちが、その形状へと向かう。


それは六つの翼を有した、女性の形をしていた。


聖なる儀式は、ボクたちの常識を超えているものらしい。


二人のヒトと『蟲』を部品にして、女神イースを模造した存在を作るなんて……。




―――捧げられ続ける『彼女』の聖歌が、姿と意志を与えているらしい。


『器』に対して注がれるのは、あまりにも見事な聖歌だった。


『蟲』に寄生された職人街の者たちを、コーラスの部隊として従えながら。


聖なる創造が、ボクたちの脅威として組み上げられていく……。




―――『彼女』の悲劇的な人生は、これで報われるのだろう。


ようやく運命が与えた歌声を、思い切り歌えるようになっているのだから。


最も聖なる存在の一部となれるのなら、悲惨な日々も報われたことになれる。


罪深いまでの穢れは、この権利を得るための対価だったかのように……。




―――ゼファーの『望遠』の力が、光り輝く『繭』を見つけた。


洗脳された職人街の者たちが、『繭』を守りながら運び出しているよ。


夏の朝陽を浴びながら、光り輝く『繭』は鼓動する。


それはまるで心臓の拍動であり、否が応でも生命力を感じさせた……。




『すごく、いやなけはいだ。あいつは、まるで……『ぎるがれあ』みたい。ううん、それいじょうに……たくさんが、とけているのかも』




―――運命に選ばれた最高の『聖歌』の歌い手は、死者の魂さえも観客にしている。


リヒトホーフェンの放った『蟲』のせいで、狂暴化させられて死んだ帝国兵ども。


死体となったそいつらの少なくない数が、もちろんイース教徒だったんだよ。


『オルテガ』には彼らの血が、まるで供物のように捧げられたばかりさ……。




―――イース教徒の魂たちさえも、『彼女』の歌声はこのおぞましい創造に参加させる。


『蟲の教団』が、『蟲』を用いて面影という魂の残滓を保存し集めたように。


リュドミナ・フェーレンと『彼女』の聖歌は、さ迷える帝国兵の魂どもを吸い上げた。


『蟲』と信仰心と、美しい力が成し遂げた気分の悪い現象だよ……。




『たましいが。しんだやつらが、あつまっているんだ』




―――『ギルガレア』の系譜にある『蟲』らしいよ、やさしい力なんだ。


死者たちの嘆きや必死の叫びを、『蟲』は受け止めている。


志半ばで死んでしまった者たちに、魅惑的な選択肢を与えていた。


『みんなで聖なる存在に融け合いましょう、それなら怖くなんてないでしょう』……。




「孤独と、最も縁遠い行いをしましょう!!それは生命の現象に他なりません!!死とは、あまりにも遠くて違うの!!女神イースの血と力に、なってください!!レナス、レナス!!ああ、喜びの歌を放って!!」




―――『繭』の奥底で、作られた女神が唇を開く。


光を放ちながら震える『繭』の表面から、歌声が放たれた。


完全に再現された、『彼女』の歌声がね。


『オルテガ』は混沌と恐怖に呑み込まれたよ、やさしい歌声にしても大きすぎた……。




「『ああ、女神の奇跡よ、導きたまえ。私たちの集うべき光を、聖なる安らぎの園の方角を示したまえ』」




―――ジャンは惑いながらも牙を使う、カニンガムの首を牙で裂いたんだよ。


バケモノになった頭部が、『彼女』の歌声を放ち続ける光景はおぞましさがあった。


それでもヒトならざる畏怖すべき力だという事実だけは、ジャンに伝わる。


『カール・メアー』は、何か恐ろしいことを達成したのだと……。




『ぼ、ボクたちは遅かったのでしょうか。く、首の後ろのあたりの毛が、ゾワゾワしているんです。こ、これには、覚えがありますよ。お、『お母さん』です……やさしくて、おっかなくて、誰かのために、誰かを殺そうとしている……危険な、か、『神さま』の気配です』




―――ガンダラは対応に困りながらも、『繭』へと接近していく。


『オルテガ』の防衛に集中させるのは、とんでもなく困難な状況になりつつあった。


少なくとも『ギルガレア』級の敵を想定しているのは、彼らしく正しい判断だね。


『ルファード』への援軍要請を増やしてもいる、陽動部隊も頼りたがっている……。




―――目の前の超常的な光景を目の当たりにしながら、シビアで精密な指示を出す。


ガンダラの人生のなかでも、何とも厄介な仕事だったのか。


『繭』まで300メートルの近さに入ると、かがやきと魔力が強まるのを感じる。


黄金色のかがやきの奥に、六つの翼の影が見えていた……。




「イース教の聖歌に、あの姿。『ギルガレア』が、神や理想の世界を『創る』能力を持っていた『侵略神/ゼルアガ』だというのなら。その力を利用して、女神イースを造り出そうというのですか、『カール・メアー』よ。あまりにも、異端な信心だという自覚が欲しい。それとも、女神の再臨を望むのは正当な祈りだったと……いずれにせよ、すべきは一つ」




―――知識が豊かな者が現場にいれば、状況把握もはかどった。


『ルファード軍』の戦士たちも、ガンダラの言葉で理解をする。


『ギルガレア』の見せた異常な光景のおかげで、彼らも理解力が豊かになっていた。


リヒトホーフェンや『蟲の教団』がやった行為の、『カール・メアー』版だ……。




「全員、覚悟をしてください。これから我々は『女神イース』と戦い、それを倒すことになります」




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