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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百三十二


―――ビビアナの抵抗は、しっかりと機能していた。


戦闘のために集中力を割り振らなければならない状況で、レイチェルに合図を送る。


ヒトとの交流というものは、大いなる宝だね。


レイチェルがどんな人物なのか知らなかったら、こんな試みをしなかっただろう……。




―――ソルジェはすぐさまゼファーに伝えたよ、『オルテガ』を見張れと。


世界はどうやら丸いらしいから、遠くを観察するためには高さが必要だ。


高くへと舞い上がる漆黒の翼を見ながら、リュドミナは自分の失態を恥じる。


あまりにも多忙だから仕方がないけれどね、ヒトにはちゃんと限界があるものさ……。




「本当に、賢い子。ビビアナさん……」




―――その名前をつぶやいたとき、レイチェルの直感は芸術性を極めたよ。


理不尽なまでの知覚が、とんでもなく感覚的に真実を探り始めていく。


ビビアナが何かをしてくれたことを、察したのさ。


あの左眼の異常な動きは、ビビアナの努力の結果だと見破る……。




「ビビアナ・ジーが、そこにいるのですね」




―――それはソルジェを緊張させる、今となっては強い友情を覚えるメダルドの姪だ。


彼が姪をどれだけ愛しているか、そして同時に故郷をどれだけ愛しているか。


よく知っているよ、おそらく誰よりもね。


『家族と故郷』は、ソルジェが何よりも大切に考えているものだから……。




―――それを奪われる痛みも、誰よりも知っている。


だからこそ、メダルドの苦しみと決断の重さを知っていた。


ビビアナに対しての警備よりも、『オルテガ』防衛のための防諜戦を選んだ。


その決断に、何か大きなトラブルが起きているらしいことは分かる……。




―――『カール・メアー』という『狭間』に対して厳しい者が、ビビアナをどう扱うか。


歯ぎしりするソルジェがいた、不幸に対しての嗅覚は焦りを呼ぶ。


ゼファーとの同調を強め、『魔眼』による『オルテガ』観察に集中した。


強敵リュドミナがすぐ近くにいたとしても問題はない、レイチェルがいるのだから……。




―――『オルテガ』の街並みを、ゼファーの強力な『望遠』の視力が探る。


空の高みからは、曲がる大地の隠ぺいも意味はない。


煙の届かない高さからだから、夏の朝空はよく澄んでくれてもいた。


街並みを舐めるように観察していき、その異変をすぐに見つける……。




『たくさんの、あれはせんしじゃない。しみんが……あつまってる……!?』




―――職人街の者たちの異変は、すぐさま発見されたよ。


虚ろな表情までは判明しなかったけれど、それでもふらつく足取りは分かる。


そんな人々が取り囲もうとしているのは、メダルドがいるはずの屋敷だ。


包囲の方式が『守備』だと見抜けたのは、ストラウス家の知識ゆえだね……。




『まもろうと、しているの!?』




―――ミアについても、ソルジェは確認させる。


もうとっくに起きているころで、ビビアナに異変が起きた報せが届いたとすれば。


ミアは行動しているに違いない、メダルドのそばから離れたかもしれないし。


メダルドは、自分の安全よりもビビアナの安全を願うに決まっていた……。




『みあは、いないみたい。『おるてが』には、いないのかも……っ』




―――ソルジェもミアと同じく、猟兵らしく思考する。


ガルフ・コルテスに仕込まれた通りに、想像力を使いこなしていく。


ミアが向かったのは、『ルファード』の方角だ。


足を求めるだろう、早馬よりも『ユニコーン』を……。




『すとらうすしょうかいの、『ゆにこーん』たちが、きていたよ。でも、ぜんぶは、かくにんできない……『るふぁーど』のほうに、はしらせたのかな……っ』




「ビビアナ・ジーに、何か悪さをしているのですか?」




―――レイチェルの質問に、リュドミナは首の動かし方を考えた。


縦であるような、横でもあるような。


長く複雑な事情を、わざわざ教えてあげる必要もない。


ポーカーフェイスは、今度は成功する……。




「両目を、閉じる……それで、私と戦えると思っているとすれば、間違いです」


「……少しは、私から情報を聞き出したいでしょうから。それに、私に太陽の光は必要ではないのです。魂を満たし、心を温め、志を示してくれる……大いなる信仰の光さえあれば、すべて問題ない」




―――音を頼りに、突撃していく。


その突撃に迷いはない、さらには正確だった。


恐怖や不安と相性のいい想像力が、レイチェルの容赦のない判断力を曇らせる。


二人のあいだにあった、力量の差がわずかに縮んだのは事実だ……。




―――リュドミナは、嬉しそうに『蟲』で強化された打撃を振るい。


レイチェルも冷静な顔を崩さないまま、それを受けて立つ。


達人以上の戦いのなかで、迷いというものは大きな意味を持った。


戦いはコミュニケーション、心理戦はあまりにも勝率を左右する……。




「したたかですね、リュドミナ・フェーレン」


「ええ。持てるすべてを使い切るだけです。女神の敵に、傷の一つも負わせてやりたい」


「女神は、この世にいないでしょうに。不在な者に、鋼は通じない」


「いいえ。いるのです。すぐに分かりますよ。竜は、それを見るでしょうから。大いなる、飛翔のときです。女神イースは、肉体を得て……再臨する」




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