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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百十七


―――世界は不完全で、狭さがあった。


多くの種族が共存するよりも、単独の種族が独り占め出来た方が楽なのだと。


『カール・メアー』とファリス帝国は望んでいて、そのための戦争と虐殺までしている。


それだけ多くの支持者を得ている、政治的な判断でもあるのさ……。




「ユアンダート陛下は、敬虔なイース教徒です。大陸制覇も目前。亜人種の掃討も、大きくはかどってはいますが……亜人種たちの抵抗も強まった」


「ソルジェ・ストラウスもいる。亜人種びいきの男だ」


「彼にそそのかされてしまっている。あの竜に、亜人種たちは間違った希望を抱いてしまった」


「まさか帝国に勝てるなどと、夢を見ているのかもしれませんなあ」




「ありえないことです。ありえない、ことでしたが……『プレイレス』を奪い取ってみせた」


「反帝国の力を集めているだけですよ。帝国に敵対する勢力がいるからこそ、連中は集まった。『プレイレス』自身の力です」


「ひと時の気の迷いだと、私も考えています。人間族が亜人種を受け入れるなど、ありえない。歴史は、常にそれを否定していますから。でも……」


「……『でも』。少なからずの例外が、積み重なりつつあるのも事実だ」




「そうです。だからこそ、女神イースの顕現が要る。女神イースの御力と、顕現による人間族の結束が必要なのです。それこそが、戦いの被害も最小限にします」


「戦が、減ると?」


「亜人種たちと混ざり、抵抗勢力が強まれば何が起きるのか……そう問えば、貴方にならお分かりになるでしょう」


「抵抗が強まりますなあ。ソルジェ・ストラウスどもを旗印にして、亜人種どもの国が同盟を作り上げている……ああ、なるほど。たしかに、連中が戦力を強めるほど、帝国との戦いは、むしろ『長引いてしまう』……」




「その通り。ソルジェ・ストラウスも、亜人種たちの結束も……闇雲に、戦火を押し広げ続けるだけになる」


「慈悲深い判断ですな。『そうならないように』、あえて女神イースの力で亜人種を滅ぼす!」


「長引く戦火で、大勢の命が失われてしまうのは不幸なことですから」


「より少ない被害で、大陸が平和になるのはありがたいことだ」




「諸宗派の統一についても、成し遂げるべきです」


「イース教の、統一と……」


「現状、あまりにも多く、宗派が分かれてしまった。これでは、調停役としての力も失われる」


「調停役、つまり。イース教による、国家間での平和交渉を?」




「厳律修道会も帝国内で大きな力を保っている。帝国の古い貴族に対して、彼女たちの影響力は強い。医学会にも……このまま、宗派における対立が深まれば、大陸の平和をイース教が主導できなくなってしまう」


「たしかに、私も……多くの宗派のあいだで揺れ動く身でございました。女神イースを信仰していることに変わりはありませんが……帝国内の貴族でも、それぞれに宗派の違いがある。これでは争いが起きかねませんなあ」


「それを予防するためにも、宗派の統一のためにも……最善の策は、女神イースの再臨」


「……女神に全てを、委ねればいい……なるほど。僧侶らしい世界平和の論法に想えますよ」




「政治だけでは、救えません。人種の浄化戦争だけでも……女神イースが直接、この世界に君臨していただければ……私たちは最も正しく、最も幸福に生きられる。誰もが、孤独を感じることもありません。女神イースの慈愛と共に、生きられるのですから」


「……皇帝ユアンダート以上の、『権力』ですな。まさに、唯一にして絶対の女神」


「これ以上の平和など、ありえません」


「貴方は、それを成し遂げられるのですな」




「カニンガム殿も、この大いなる運命の一部となったのです。私の計画を、支持してくださいますね」


「もちろんですとも。そのために、この地下を進んでいる。貴方のために、盾となることも……ッ!?」




―――爆発の音が背後から聞こえ、カニンガムの顔が青ざめる。


何が起きたのかについては、すぐさま想像がついた。


猟兵が追いかけて来ているんだよ、ジャンの鼻からは逃れられない。


陽動作戦にいつまでも引っ掛かっているほど、ソルジェの判断力は甘くもない……。




「……貴方の護衛も、殉教なされました」


「追い詰められたときは、自爆するようにと教え込んでいたのですが……いい男だった。ああいった命令を体現してくれる者は、十人のうちの一人か二人に過ぎません」


「女神の慈悲は、彼の魂を救います」


「……いよいよ、追い詰められましたな……」




「怖がらないでください。『オルテガ』に、私の『分身』は届きつつあります。保存されていた、レナスの『歌声』も……『心臓』のすぐそばに……」


「『分身』。『蟲』を使い、記憶や性格を保存していたもの……」


「『蟲』以外にも、一種の催眠も用いる必要がありますが……現状、私の人格は……『三人』います」


「それは、具体的には……」




「ここにいる『私』。ビビアナ・ジーに宿った『私』。それと……『私の部下』……」


「『カール・メアー』の、巫女戦士……?」


「『オルテガ』に、配備していました。こちらの計画については、知りません。ですが、私が、しっかりと潜在意識に仕込んでいた……」


「つまりは、洗脳……」




「ええ。少しばかり、乱暴な『改造』かもしれません。敵に殺される可能性を想定していましたが……『まだ生きていたので、今まさに、『蟲』で殺している最中です』」




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