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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百十二


―――リュドミナはカニンガムを警戒しながらも、ソルジェを見ている。

『赤い竜巻』と名付けたように、炎のように赤い髪が暴れていた。

竜太刀も『炎』を帯びているのだから、なおさらのこと。

竜太刀に宿るアーレスの怒りが、この火炎を呼び起こしている……。




―――赤く暴れる竜巻は、操り人形にされた死者たちに終わりを刻み付けた。

腕も脚も胴体も、斬って裂かれながら爆炎に吹き飛ばされていく。

暴走し異形化した『ゴルゴホの蟲』さえ瞬殺する、この赤い竜巻。

『蟲』を経由して、リュドミナは対抗策を見つけ出そうと考えていた……。




「あ、あんなに……強いのね。さすがは、ストラウス卿……ッ」




―――リュドミナの感覚と融け合うことで、『敵からの視線』を得た。

ビビアナはソルジェの強さを、今まで以上に思い知ることになる。

速くて強くて鋭くて、しかも容赦がない暴れっぷりだ。

恐ろしい光景であり、本能的に目を背けたくなるだろう……。




―――ビビアナだって、『ソルジェに斬り裂かれる光景』なんて感じたくはない。

だが、リュドミナが集中力を駆使しているせいで付き合わされてしまった。

何処かに『弱点』がないかを、探り続けている。

考えるほどに、そんな甘い考えが通じないことを知らされるだけ……。




―――『王者の剣』は今も機能して、『蟲』さえもソルジェに誘われていく。

『蟲』が脳に寄生したおかげか、反射速度は強化されているが問題はない。

むしろ、より脊髄反射的な動きに陥っているから狩りやすさがあった。

竜太刀の斬撃の軌道に、自ら吸い寄せられて飛び込んでいくのさ……。




―――炎の光に幻惑されて、灼熱の終わりに飛び込む夏の虫のようだ。

武術の究極は、芸術にも程近くなる。

戦闘というコミュニケーション、それを示す奥義の言葉の一つが『彼我一体』。

ソルジェは敵の心を見抜くのが上手かったけど、今はそれ以上だよ……。




「…………」




―――リュドミナは沈黙したままであったが、ビビアナはその沈黙を読み解いた。

つながっているからか、それとも類まれな知性の持ち主だからか。

あるいは、『人買い』や呪術師としてのセンスゆえか。

無言であるからと言って、心を読まれないとは限らない……。




「……『あの『剣舞』に、魂たちが自ら死を求めているようだ』……ね。ちょっと、分かるわ。ストラウス卿は、助けてあげたがっているもの。『蟲』に支配されたかわいそうな敵にさえ、同情している。それに、帝国兵まで応えているみたい……」




―――敵にさえ参加を強いる究極の『型』、『死を押し付ける剣舞』。

『彼我一体』の極致のひとつであり、これは対立とも言い難い。

簡単に言えば『戦いの本質までも歪めるほどに、今のソルジェは強い』のさ。

それを芸術家のセンスを使い、リュドミナは把握していく……。




「難敵ですね、ソルジェ・ストラウスは……」




―――圧倒的で絶対的な力の差を思い知らされながらも、リュドミナはあきらめない。

これこそ、信仰心の成せる偉大な力と言える。

絶対的な強者に対して、一秒でも長く生き抜くための方法を探すなんてね。

常人ならパニックになり、あわてふためくだけだろう……。




―――芸術にまで高められた武術に挑む方法なんて、まずありえない。

ないなら、どうすべきか。

『ただひたすらに戦いそのものを避ける』というのも、正しい選択だよ。

だが、リュドミナは詠唱長という芸術家でもある……。




「……芸術を、損ねる方法も、ありますから」




―――芸術とは何なのか、という問いかけにリュドミナは一家言を持っている。

『真実を分からせること』だと、彼女は信じていた。

戦場にある真実は、力の序列だけだよ。

ならば、それをどうやって損ねるべきか……。




「これは、やりたくなかったのですがね。それでも、この方法は少しくらい有効なのではないでしょうか。『貴方こそ、真なる女神イースの子です。貴方は、愛されていますよ。女神イースのために、戦いなさい』」




―――リュドミナが、美しい声で呪術を放つ。

彼女は洗脳術の達人でもあるし、今は『蟲』の力も使いこなすのさ。

『ゴルゴホの蟲』に対して、リュドミナは洗脳を施した。

『ゴルゴホの蟲』どもは、宿主の脳と融け合いながら自分を誤認する……。




「わ、わたし、こそが……せいなる、せんし!!めがみ、めがみ、めがみのために、わたしたちは……たたかうんだ!!」




―――『蟲』どもの行動選択が、いきなり変質していた。

ソルジェの『王者の剣』に呑まれていたはずなのに、動きが唐突に変わる。

ソルジェは即座に反応して、『異なる動き』を始めた敵を斬り捨てた。

問題はなく敵を倒してみせたものの、リュドミナは手応えを得る……。




「……心を、偽りで満たす。あまりしたくはない方法ですが……これなら、貴方の『剣舞』に呑まれずにすむようですね。ソルジェ・ストラウス。貴方との戦い方が、一つ、見つけられました。手駒は、ほとんど……全滅しましたが、最後は、私自身で戦いましょう。どうせ、すぐに貴方は追いつくでしょうから」



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