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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その二百六


―――敵を操っているように見えるし、実際にそうだよ。


猟兵は戦場の霊長だけど、今のソルジェはそれ以上になりつつある。


戦場に君臨して、敵も味方も操ってしまうのさ。


帝国軍からすれば、これはとんでもない成長だよ……。




『な、なんだか。い、いつも以上に……戦いやすいですっ!!』




―――ジャンも理解は出来なくとも、感じ取っているから問題はないよ。


ソルジェがしっかりと、どう戦うべきかを把握して無言のまま指揮を執っているからね。


敵に対する態度だけでなく、味方に対する態度も学んだ。


演劇術で知覚を磨いただけじゃなく、振る舞いで味方への伝達も強化されている……。




―――名付けるのならば、『王者の剣』と呼ぶべき技巧だろう。


ソルジェはただの戦士でいるわけにはいかないからね、それを自覚しつつある。


王として戦場に君臨し、すべてを掌握する強さもあると自覚したのさ。


遠からずガルーナ王になる男は、今までとは別の力も使うべきだからね……。




―――唐突な成長というわけでもなく、これも必然的な成長だ。


今はすでに『歌喰い』の影響下に戻ったから、かなりの部分を忘却しているけれど。


『竜騎士姫』の物語を聞かされたことで、ガルーナへの感情が深くなった。


ガルーナ王として相応しい器を本能が求め、培ってきた技巧を再編した結果だね……。




―――まあ、当然と言えば当然だよ。


ソルジェは天才だし、『パンジャール猟兵団』の団長なのだから。


ちょっとしたコツやキッカケがあれば、あっという間に大化けすることもあり得る。


この世は不公平なことも多いけど、天才という存在はまさにその代表格だからね……。




―――『帝国軍のスパイ』どもは、この現象について行けちゃいない。


ソルジェがわずかに構えを変えるだけで、隊伍が崩れてしまう。


後ずさりする者もいれば、勇み足で死中に活を求めて突撃する者もいた。


一致しない隊伍など、何とも脆いことなのか……。




「陣形を乱すな!!守りに徹するんだ!!今は、今は!!」


「そ、そんなこと、言っている場合か!?」


「後手に回れば、斬られるだけだぞ!?」


「カニンガム殿の部下たちを、待てばいい!!彼らは、頼れるはずだぞ!!」




―――『帝国軍のスパイ』と、カニンガムはそれなりの蜜月だったらしい。


何とも『調整役』としては優れているというか、とんでもないコーディネーターだ。


ガルフがいたら勧誘したがるだろうね、下手すれば猟兵に招いたかもしれない。


敵対する組織同士の間にいながら、それらの組織に信頼の根を蔓延らせるなんて……。




―――とんでもない政治力であり交渉術であり、常人離れした『異能』の域だよ。


リヒトホーフェンたちと、『カール・メアー』と『帝国軍のスパイ』。


それぞれが敵対する理由を抱えているのに、カニンガムは自由自在に顔が利く。


『蟲』という技術や情報を、それぞれから得てしまっているのだからね……。




―――敵でなければ、ガルフじゃなくても欲しがっただろう。


ボクも『ルードの狐』に迎え入れたっていいと判断できるよ、あくまで腕だけならね。


残念なことに人格面で、かなりの問題があるから論外かもね。


ボクら狐はともかく、クラリスは絶対に許さないさ……。




―――王というのは、そうじゃなくちゃならない。


分別をわきまえてこそ、真の序列の頂点になれるものだよ。


『有能な邪悪』を選べるような者に、王道の力は宿らない。


ユアンダートですら、基本的に呪術や異教を嫌うほどだからね……。




―――邪悪さを許せば、それだけ王者の力は失われてしまうものだ。


国を滅びに導いた愚王どもの物語が、数多く歴史に残っているのは当然のことだよ。


だが、王には相応しくなくとも有能ではある。


敵として実に見事な交渉能力だよ、クリア・カニンガムという悪人はね……。




―――『オルテガ』にいるガンダラも、成長することになる。


この戦いで、また一つ知恵を磨くことになるのさ。


ガルーナ王に仕える、『大臣』になろうとしているからね。


邪悪さまでは真似ないけど、カニンガムの手腕は知識として参考になる……。




―――凶悪で大きな敵ほどに、ボクらの経験値にはなってくれるんだよ。


ボクらは、まだまだどんどん大きく強くなりたいからね。


いい戦いではあるよ、この一連の戦いは。


敵からすれば、何とも悲惨で救いのない状況だろうけれどね……。




―――『王者の剣』を、ソルジェがまた使う。


今度は演技だけじゃなく、実際に敵陣に斬りかかりながらね。


敵を斬り捨てながら、敵に命じる。


『左の敵に隙を見せて呼び込みながら』、『右の敵は脅して遠ざける』……。




―――突撃で崩していた隊伍が、さらに乱れて。


孤立した敵を、一刀のもとに斬って捨てる。


敵は何が何やら分からなくなり、ますます追い詰められた。


序列の魔法は何とも恐ろしく、この戦場を自在に掌握している……。




「カニンガム殿の、護衛たちはまだ来てくれないのか!!」


「さっさと、戦力を集中しなければ……ッ」


「このまま、壊滅だぞ!!」


「早く!早く来てくれ!!」




―――『帝国軍のスパイ』の交渉チームは、ボクたちと衝突して来た中では最弱かもね。


戦闘力に特化していないと、こんなものかもしれない。


逆に言えば、戦闘力がなくても『帝国軍のスパイ』にいられるほどの知恵は利くのかも。


それをここで排除出来るのは、今後の戦いを考えればありがたいことかもしれない……。




「……貴方の部下を、帝国兵たちが呼んでいますね」


「そうでしょうな。しかし、私は貴方を優先いたします。女神イースの下僕として」


「それは、ありがたくもあります」


「これは好奇心なのですが。彼らを、どうなさるおつもりだったのですか?」




「あちらは私を使い、お山との対立関係を解消したかったのでしょう」


「でしょうね。それで、貴方は?」


「……監視ですよ。私たちの使命を、あちらが『邪魔できないか』を確かめる。それに、お山と『間違ってもつながらないように』、釘を刺しておかなければなりませんでした」


「なるほど。『カール・メアー』の本山と、貴方はそういった関係ですか」




「探っているんですね、私を」


「考え過ぎですよ。それで、リュドミナ殿」


「なんでしょうか、カニンガム殿」


「敵の勢いが、あまりにも良過ぎます。どうにか、なりませんか?」




「私の力を、見せて欲しいみたいですね」


「状況が悪化しては、貴方を守れなくなりますからな」


「……多くを、知っている方には、用心したいものですが。今は……」


「敵を、倒してください。聖なる使命の達成のために」




「ええ。『蟲』に、少し暴れてもらいましょう」




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