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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百九十八


―――馬車を引き留めた二人は、戦士たちと交渉することにした。


戦士たちが乗っていれば、それだけ馬車の速度は損なわれるからだよ。


『曙』は演技をしながら遅く走っているものの、馬車で5人を乗せていれば遅くなる。


ディアロスのパロムは事情のすべてを話せはしないが、急用だということは告げた……。




「私たちは、『オルテガ』に急いでいるんです!!そちらも、でしょうが。私たちは、『パンジャール猟兵団』の大きな任務に関わっているんです!!」


「ディアロスの輸送隊が、ストラウス卿の部下だというコトは聞いている。となれば、オレたちよりも……いくらか重要な任務というわけか?」


「任務の重みは、それぞれにあるでしょうが……っ。どうか、馬を譲って欲しいのです!!」


「……分かった。オレたちは、後で『ルファード』から来る部隊に、引っぱってもらうとしようじゃないか」




「あ、ありがとうございます!!これで、どうにか敵に離されずに済む!!本当に、恩に着ます!!」


「いいさ。その代わり、またどこかで会ったら酒でもおごってくれ」


「はい!必ずや!!このパロム、『ストラウス商会』の社員として、この御恩を忘れることはありません!!」


「急いでるなら、早く、乗って行きな!!」




―――馬車から解き放たれた早馬に、パロムとフリジアは飛び乗った。


パロムは馬に対して文句があるわけではないが、ユニコーンと比べればどうしても遅い。


それでも馬術の腕は確かなものであり、この早馬もスムーズに走らせていた。


ユニコーンほどの加速はなく、どうしても不満顔をしてしまうが許す……。




「貴方でも、十分な速さですね。そう、そうだ。『曙』、お願い。いい演技をしてくださいね。ゆっくりと走って。まるで、疲れてしまったような顔をするのです」


「伝わっているか?だいぶ、離されてはいるだろうが……」


「問題はありませんよ。途切れては、いません。むしろ……『曙』の演技のおかげで、距離は狭まりつつあります」


「さすがだな。賢いじゃないか」




「い、いえ。私たちはそういうタイプの戦士ではありませんので。あまり、過度な期待はしないでください。知恵を、貸して欲しい」


「ああ。私も不得意な方だが、それでも協力は惜しむことはないぞ」


「協力し合わなければなりませんね。私たちは、一人ずつでは、あまりにも弱さがありますから……敵は、強い…………でも、聞こえます。ミアさんたちの会話が」


「どういう内容なんだ。教えてくれるか」




―――先行する『曙』は、はあはあと呼吸を荒くしていた。


見事な演技、という評価をしてあげるべきかは迷うところだ。


何せ、あまりにも大げさであったからね。


幸いなことにユニコーンが、演技力を持つほど賢いなんてことまでバレてはいない……。




「『曙』は、疲れているね。かわいそうに。二人を乗せて走るのは、やっぱり無理があったのかもね」


「『強そうな馬だけど。長旅のせいで疲れ果てているのでしょうか。ユニコーンは、頑強だとも聞きますが……それは、極北でのことなのでしょうかね』」


「行軍を強いれば、それだけで疲弊する」


「『そう、ですね。それは当然のこと。ユニコーン、疲れているでしょうが、急いでもらいます』」




「焦っているの、リュドミナ?」


「『少しは焦ります。この状況は想定外ではありますからね』」


「追い詰められた作戦が、上手く行った試しはないよ」


「『今回は大丈夫です。だって、ミアさんが協力してくれるわけですからね』」




「そうだね。おっちゃんの命よりは、ビビの命だよ。ちゃんと、ビビが死なないようにしてくれている?」


「『心臓はきちんと動いている。魔力を、これ以上、使い過ぎなければ……問題はありません』」


「ビビを殺さないこと。それが、私が協力してあげる最低限の条件だよ」


「『分かっています。こちらは、『心臓』をいただければ問題はない』」




「おっちゃんの『心臓』で、女神イースを……」


「『受肉させますよ。肉体を与えるのです。そのために、多くの工作をして来たのですから』」


「お兄ちゃんたちは、東に向かっている」


「『そう、でしたね』」




「それが、あなたにとって不利になるかな?」


「『まあ、多少は』」


「正直に話した方がいいよ。お兄ちゃんたちは、あなたの『本体』を倒すかもしれない。それが、ビビの命を危険にさらすかもしれないのなら、私を通じてお兄ちゃんたちの行動を止めるべきでしょう?」


「『……考えさせて、欲しいですね。私も、こちらの手の内のすべてを話すわけにはいきませんから。それに、全てを話すだなんて、貴方は思わないでしょう?』」




「まあね。私たちは、やっぱり敵同士だから。だからこそ、少しは分かり合わなくちゃならないっていうのも本当のコトだよ」


「『分かり合う、ですか。難しいですね。私は『カール・メアー』の詠唱長ですし、貴方はケットシーですから』」


「それが、私たちを分け隔てているとしても、絶対じゃないよ。だって、フリジアと私はそれを越えて、仲良しになれたもの。あなたとも」


「『仲良しに、ですか?かなり無理があると思いますよ』」




「うん。それは、そうだけど。それでも、少しは距離を近づけられる。あなたのことを、話して欲しい。交渉相手を知るのは、お互いにとって有益だよ。それは、間違いなんかじゃないよね」




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