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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百九十五


―――ミアの交渉術に、リュドミナは沈黙してしまう。


ビビアナという人質を取っているのに、追い詰められてもいるのさ。


『心臓』なんていう標的を、教えてしまうべきじゃなかったのに。


『カール・メアー』はやはり尼僧の集団であり、交渉のエキスパートではない……。




「『貴方なら、私に欲しいものを与えてくれるのかしらね?』」


「ビビのことを絶対に助けるって、誓ってくれるのなら。取引に応じるよ」


「……お、おい。ミア……それは、つまり……メダルド・ジーを……っ」


「おっちゃんの意志を尊重する。優先事項は、ビビが一番、おっちゃんは二番目だよ」




―――悪人との交渉だからね、徹底した冷静さが必要になるときだってあるよ。


フリジアは戸惑ってしまうが、猟兵の力を信じることを選んでくれた。


ミアの瞳は自信を持っているからであり、自分がこの状況でやれることがないからだ。


それは何もメダルドを犠牲にすることに同意したわけじゃなくて、猟兵を信じた……。




「……分かった。ミア、お前に任せる。指示を出してくれ。私は、勝利を信じている」


「うん。それでいいよ。私たちに任せて。『パンジャール猟兵団』は、絶対に勝利するからね」


「わ、私と『曙』も、ミアさんの命令に従いますからねっ。何なりとご指示を」


「ありがとう。多分、力を借りることになると思う。交渉の場に行くためには、『オルテガ』へ向かう必要があるから」




「『そうですね。その馬の力を、貸して欲しいところです』」


「『曙』を……ッ。それは……」


『ヒヒイイン!!』


「……『曙』……分かり、ました。お前が、そう言ってくれるのならば。私も耐えるとしよう」




「『私を『オルテガ』に連れて行って下さいますか、ミア・マルー・ストラウス』」


「うん。私とリュドミナで、『オルテガ』に向かおう。『曙』の背に乗って」


「……き、危険が過ぎるような気がするのですがっ」


「ミアを、信じてやろう。何か、策があるハズだ」




「さ、策ですか。そう、ですよね。それは―――」


「―――いくらユニコーンでも、疲れ切っているよね。きっと、普通の馬と同じぐらいしか走れなくなっていると思うけど、ごめんね。二人も背に乗せて」


「え、えーと。それは…………」


「そうだよね、パロム」




「は、はい!!その通りでございます!!『曙』は、疲れ切っていますが、それでも、その。任務というのであれば、どうぞお使いください!!」


「うん。リュドミナ、あなたが前に乗って。私は、その背後に乗るから」


「『怪しい動きをすれば、私を殺すと?』」


「ビビを人質に取っているんだから、あなたの方が有利。ビビを助けてくれる気なら、問題なんてないでしょう?」




「『……ええ。貴方が、ビビアナさんの命を犠牲にするとは思えませんからね。では、フリジア・ノーベル。さようなら』」


「……ビビの体で、そんな言葉を使うな。私が決別したのは、『カール・メアー』だ。リュドミナ、お前は……きっと女神イースの罰を受けるだろう」


「『背教者の言葉では、私に恐怖を与えることは出来ません。すぐに、神罰を下される者が誰なのかはハッキリとするでしょう』」


「ああ。そうだろうとも」




「フリジア、パロムと『仲良く』してね!ケンカしちゃダメだよ、しっかりと話し合うんだ!いいね?ぜったいに、『仲良く』するんだよ!『水晶の角』からの声を聴いて!」


「あ、ああ。ケンカはしない」


「状況は、よく分かってはいませんが!仲良くするのが命令であれば、仲良くいたします!!」


「それで、いい。さあ。『曙』、お願い。普通の馬の全力ぐらいでいいから、頑張ってね」




―――『曙』はうなずくと、リュドミナ/ビビアナとミアを乗せたまま走り始める。


『オルテガ』に向けて、かなりの速度で。


もちろん、まったくもってユニコーンの全力じゃないけれどね。


それでも、普通の馬の全速力に等しい……。




「……話し合えって、ミアは言っていた」


「そう、ですね。おかしなコトも」


「どんな、ことなんだ?」


「『曙』はユニコーンですから、今の速さの倍以上で走られるのです。いくら疲れていると言っても……ロロカ副社長の義妹であられるミアさんが、知らないはずもなく……」




「ということは、『それ』もミアの作戦なんだと思う」


「どういう、ことでしょうか?」


「『全力で走らせる気がない』。ということは、つまり、『時間稼ぎ』を狙っているんだ」


「な、なるほど!そのために、ゆっくりと『曙』を走らせている……」




「……追いつかせる、ためかもしれない」


「お、追いつかせる……?」


「私たちにだ!おい、パロム……だっけか?」


「ええ。パロムです!」




「走るぞ!!街道には、『オルテガ』に向かう『ルファード軍』の者がいるかもしれない!!馬を、借りられたら……ミアたちにだって、追いつける!!」


「なるほどっ!!で、では、走りましょう!!」


「……走りながら、作戦会議もするぞ!!」


「運動しながらアタマを使うのは、難しいですが……っ。やってみましょう!!」




「『水晶の角』からの声を聴け、というのは?」


「え、えーと。ディアロスとユニコーンは、この『水晶の角』同士で心がつながっているわけです。これがお互いの心を、伝えてくれる力がある……」


「じゃあ。もしかして、今も……『曙』からの声が聞こえるのか?」


「は、はい。集中すれば」




「『曙』のとなりにいる、ミアと……ビビ……いや、リュドミナの会話を、『盗聴』出来るってことか?」





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