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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百九十四


「び、ビビっ!?どうして、私とミアを攻撃するんだ!?」


「……『どうしてだと、思いますか?』」


「そ、そんな!?その声は……リュドミナ……っ!?」


「『薬以外のものも、飲ませていたなんて。考えるべきでしたね』」




「まさか……っ。き、『寄生虫』を、飲ませて……っ」


「『そうですよ。あくまで保険だったのだけれど。ここまで使わせるなんて……貴方たちは、本当によくやりましたね』」


「こ、この女も……さっきの女と、同じ声を……っ!?ど、どうなっているんですか、ミアさんっ!?」


「パロム、こっちに来て。ビビから、離れるんだ。これは、命令だよ」




「りょ、了解ですっ!!『曙』、行きますよ!!」


『ヒヒイイン!!』


「『あらあら。慎重ですこと』」


「当然だよ。ビビを傷つけるわけにはいかないんだ」




―――パロムはこの状況についていけない、ミアとフリジアだって混乱している。


だからこそ、ミアが指揮を執る必要があるんだ。


この状況では一番、冷静なのだから。


考えなくてはならない、最良の結果を得るためにはどうすればいいのかを……。




「フリジア、パロム。慎重に行動するよ。絶対に守るべきことは、ビビを傷つけないことだからね」


「あ、ああ!ビビ……必ず……助ける」


「状況は、よく分かりません!!ですが、命令にしたがいますっ!!」


「『ビビアナさんを、助けられる気でいるなんて。私は、そこまで甘くはありませんよ』」




―――再び『風』を放つが、三人はあっさりと回避してみせる。


リュドミナは指を握ったり広げたりして、感触を確かめていた。


想像していた以上に、動きが悪かったらしい。


それでも、それがミアたちの助けになるとは限らないよ……。




「『魔力が弱いですね。それだけ、死にかけているということです』」


「や、やめろ。ビビを……殺すなっ!!」


「『うふふ。あわてなさい。そちらの方が、私は戦いやすくなります』」


「つ、つまりは人質を取られている状況なのでしょうかっ!?」




「うん。そうだよ。だからこそ落ち着いて、二人とも。こいつは、すぐにビビを殺そうとはしない」


「……そ、そうなのか!?」


「『あらあら。どうしてでしょうか。私は『カール・メアー』の詠唱長なのですよ。『狭間』を殺すのは、使命です』」


「殺すのが最優先なら、もうとっくに殺している。そんな弱ったビビで、私たちを倒せるはずもないのは分かっているでしょう。最初の奇襲が、私たちを仕留められる唯一のチャンスだったんだ。それを、あなたは逃したの。それでも、ビビを殺していない。他に、利用目的があるからだ」




「『賢いんですね。そうですよ。私には成し遂げなければならないことがありますから』」


「メダルドのおっちゃんの、『心臓』が欲しいんだ」


「『ええ。その通り。必要なんですよ。こんなに『引き合っている』んですから』」


「引き合っている?おっちゃんの『心臓』と……『何』が?」




「『ギルガレア』がですよ。この娘の喉に宿した『ギルガレア』と、メダルド・ジーの心臓にいる『ギルガレア』。肉親の魔力だからでしょうか。レナスに宿っていたときよりも、しっかりと引き合っている……それが感じられるの』」


「何が、何だか分からないでありますがっ!?」


「『特別な『ギルガレア』の卵。貴重な卵なんですよ。それらが、レナスとこの子とメダルドにいる。『本体』の私にも。つながっているの。『ギルガレア』がつなげてくれている。遠く離れていても、関係ない。だからこそ、神の器になれる』」


「あなたが何を企んでいたとしても、そうはならない。私たちが、あなたを自由にしたりはしないから」




「『そうかしら?こうやって、ナイフをビビアナさんの首元に近づけたら?』」


「……や、やめろっ」


「な、何と、卑劣なっ。そういうコトはしてはいけないぞっ!!」


「脅しは利かない。あなたはビビを殺せない。殺したら、使命が果たせないんでしょ」




「『……試して、みると?』」




「そんな余裕は、そっちにもない。ビビは、そっちにとっても保険なんだ。『狭間』を嫌うのに、『狭間』のビビに憑りつくなんて、本当はしたくないことでしょう」


「……あの子も、『狭間』だというのですか……」


「ビビは、両親が特別な呪術で、耳を伸ばさなかったの。『ハーフ・エルフ』だよ」


「ビビのご両親は、命懸けで呪術を使い、命を失ったのだ」




「……なん、と。親の愛とは、壮絶なまでの行いを果たすのですねっ」


「『美しい物語だとは、思いませんよ。最初から交わらなければ、良かった』」


「そういう考えを、するんだね。リュドミナ」


「『ええ。じつに『カール・メアー』らしい考えです』」




「……リュドミナ。あなたはとてもクールだよ。だから、私は交渉がやれると考えている」


「『交渉、ですか?私がそちらに差し出せる唯一のモノは、ビビアナさんだけですが……その代わりに、そちらは何を与えてくれるのかしら?』」


「おっちゃんの、『心臓』」


「み、ミア!?な、なにを……っ」




「ビビと、おっちゃんの命。どっちも大切だよ。でも、私は、おっちゃんの考えが分かる。おっちゃんはね、ビビのためなら自分の『心臓』だってえぐる覚悟だ」




「『姪のために、そこまでやれるなんて。『人買い』のくせに、情の深い男性ですね』」


「そうだよ。だから、私はおっちゃんの命を使って交渉もできる。確実に、『心臓』が欲しいんでしょう?……元・『人買い』で、大商人のおっちゃんと、あなたが交渉して確実に『心臓』を得られるなんて限らないでしょう?」


「『そうかもしれませんね。これでも交渉事については得意ですが、あくまで尼僧です。交渉の達人である商人に、勝るとは思えませんね』」


「このルールを理解してね、リュドミナ。『ビビを助けてくれないと、『心臓』は絶対、手に入らない』。あなたはね、何が欲しいのかを私に知られているんだ。このルールを破れば、私がおっちゃんの『心臓』を爆破して吹き飛ばすことだってありえる。嫌でしょ?」




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