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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百九十二


「うううう、うううっ。あああ、ああああああ!!」




―――フリジアが泣いていた、叫んでいた。

ドロドロに融けながらも、笑っていた者たちを抱きかかえたまま。

心に刻むんだ、その指とその手のひらからこぼれ落ちてしまったものを。

覚えておくために、記憶のなかにこの子たちの居場所を提供するために……。




―――命を背負って誓うことは、並大抵の重さじゃないよ。

死に報いなくちゃけない、フリジアはそれをしようとしているんだ。

忘れない、この孤独な魂たちと出会ったことを。

フリジア・ノーベルは、とても偉大な尼僧になるかもしれない……。




―――女神イースの宗教が、慈悲を尊ぶのであれば。

彼女のその心は、とても大きく成長している。

新しい宗派の祖にでも、なってしまうかもしれないね。

フリジアこそが『カール・メアー』を経て、真のアルティミスの継承者になるかも……。




―――言い過ぎてはいないよ、その叫びの様に『彼女』さえも心が揺らぐ。

フリジアが正しいかもしれないと、考えてしまっているのだから。

心の底から『カール・メアー』の、残酷な教えに救いを求めた者のくせに。

フリジアを殺して否定することが、今は出来ちゃいない……。




―――フリジアは隙だらけだし、ミアは疲れている。

『ドラゴン・キラー・コンビネーション』の果てに、『歌』の力まで使ったんだ。

体中の力は、抜けてしまっている。

『ゴルメゾア』は無力化されたけど、そのために力を使い過ぎてしまっていた……。




―――だから、ミアは『彼女』をにらみつける。

フリジアに対して、攻撃を仕掛けないように見張らなくちゃならない。

呼吸を整えながら、いつでも狙撃できるように構えを作った。

緊張すべき状況だった、下手に刺激すれば何が起きるか分からない……。




―――フリジアを殺せる位置に、『彼女』はいるのだから。

フリジアには一秒でも早く、その場所から離れて欲しくもある。

だが、それは不可能だった。

今のフリジアは慈悲の体現者だ、自分が死ぬかもしれなくても構わずそこにいる……。




―――『彼女』がこの場の主導権を手にしている、フリジアの背を取ったまま。

『彼女』だけだったなら、『同胞』みたいな孤児たちを失って心は折れたかもしれない。

フリジアのやさしさに、負けてしまっていたかもしれない。

それでも『彼女』は孤独なんかじゃなく、心のなかに詠唱長がいた……。




「『迷わないで』。『あの子たちが、休むのならば』。『ますます。私たちこそが努力を果たさなければならないでしょう。しっかりしなさい、レナス・アップル』」




―――『仮面』が命令して、『彼女』を洗脳してしまう。

ミアは射撃を準備したが、それよりも先に。

パロムが動いてくれていた、『霊槍』を掲げたまま恐ろしい勢いで突撃を仕掛ける。

何が何やら状況を理解してはいないが、それでも『彼女』を許せない……。




「『カール・メアー』あああああああああああああああッッッ!!!」

「……っ!!『邪魔を、するんですね!!ディアロス!!』」




―――『霊槍』の強打を、回避しようとした。

だけど、そうはならない。

『彼女』の体はとっくの昔に、限界を迎えつつあるからだ。

『ゴルメゾア』からの魔力の供給もなくなって、フリジアとの戦いで消耗もある……。




―――『霊槍』の強烈な破壊力を、青い爆裂となる。

地面ごと『彼女』の身を焼いてしまう、体力があれば避けられただろうけれど。

今はもう、ほとんどの力が残ってもいなかった。

それに、闘争心も失われつつあったんだよ……。




―――『仮面』に頼らなくては、戦いの意志を紡げないほどにね。

心の力にはいくつかの種類がある、知性と感情と意志の力だ。

知性は揺らいでしまっていた、もう追い詰められてしまっている。

感情は負けていた、フリジアの慈悲が正しいと感じてしまっていた……。




―――決意の力だけで動いているだけだ、もう本当に何も残ってはいない。

だから、パロムの猛打に呑まれていく。

パロムはその手応えのなさに、驚いてしまうほどに弱くなっていた。

回避しようと藻掻くが、『霊槍』のラッシュを受け続けてしまう……。




「お前!!やる気は、ないのか!?それなら、どうして!!」

「『……かわいそうなレナス。もう、何も残っていないのね」』

「何なんだ、お前!?何を、自分に言っているんだ!?」

「『部外者に、負けてしまうなんて。ああ、本当に……ごめんなさいね。私でも、もう貴方を守ってあげられないのね』。いいんです、リュドミナさま。私は、私は……もう、燃え尽きてしまいそうです」




「れ、レナス……っ!!お、おい!!やめてくれ!!もう、そいつを、レナスを許してやってくれ!!そいつは、そいつも、本当にかわいそうなヤツなんだよ!!」

「……っ!?惑わすな!!惑わさないでほしい!!こいつは、とんでもなく強いんです!!私からすれば、格上で……『カール・メアー』だ!!私の恩人たちまで殺した、『カール・メアー』の一員なんだ!!」

「やめろ!!やめてやれ!!私だって、『カール・メアー』だ!!私だって、罪深い!!」




―――単純で明快な、パロムの心は混乱してしまう。

フリジアも『カール・メアー』で、『彼女』も『カール・メアー』。

分からない、何が正しいのか何が本当なのか。

混乱しながらも選んだのは、失われてしまった大切な記憶だ……。




「私だけが、あの子と!!あの母親を覚えているんです!!『曙』!!私たちで、こいつを殺してやろう!!『カール・メアー』を、倒すんだ!!『カール・メアー』を、殺すんだ!!啼け!!『曙』おおおおおおおおおおおおおッッッ!!!」




『ヒヒイイイイイイイイイイイイイイイイイインンンンッッッ!!!』




―――『霊槍』の力が、爆発的に跳ね上がる。

パロムの力も、『曙』の力も。

リュドミナが引き出してしまっていた、憎しみと怒りが研いだ攻撃の才能だ。

青き爆裂が、『彼女』の体を吹き飛ばす……。




「『ぐ、ふうううう!!』」

「れ、レナス!!レナス、レナスううううううう!!」

「だ、ダメだよ、フリジア!!」

「み、ミア。はなしてくれ、はなしてくれ!!私は、これ以上……助けられないのは、嫌なんだよ!!あいつを、あいつも……独りぼっちなんだ!!」





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