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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百九十一


―――ミアの斬撃に『風』が宿り、それらは『飛ぶ斬撃』を生み出していく。


『風』の『魔剣』だよ、無数の真空の刃が『ゴルメゾア』の全身を切り刻む。


再結合を強いようとしていた『蟲』どもの脚を、断ち切った。


泣いて叫ぶ肉塊たちは、そのおかげで再び四方八方に逃げることが出来る……。




「そうだよ、それでいいの!!子供は戦わなくていい!!死んじゃったのに、それでも、戦って苦しむことなんてないんだ!!だから、だから!!『蟲』ども、その子たちから、離れろ!!!」




―――ミアの怒りは、とても偉大なやさしさだよ。


生贄になった孤児たちは、痛いのも怖いのも苦しいのも嫌なんだ。


たとえこの世界があまりにもやさしくないから、怒っていたとしても。


生きていたときでさえ不幸だったのに、死んでまで苦しむことはない……。




「違う!!勝手に決めつけるな!!世界を、変えるために!!戦うんだ!!救うために、戦って……女神イースさまを、この世界に与える……戦うことで、この世界を救うんだよ、誰にも必要とされなかった、穢れた私たちこそがッッッ!!!」




―――『彼女』の叫びに、孤児たちが同調してくれるんだ。


逃げようと藻掻いていた孤児たちが、その藻掻きを弱めてしまう。


何も無理強いしているわけじゃない、本当に聖なる使命を果たそうとしているだけ。


だからこそ宗教的な執念はおぞましいときもあるし、ミアの逆鱗に触れるんだ……。




「神さまなんて、いらない!!私たちが、変えてやるんだッッッ!!!」




―――『ドラゴン・キラー・コンビネーション』は、まだ続いているよ。


バラバラになりそうだった孤児たちのために、ミアは夢を追いかけるための力を使う。


『風』を使い過ぎて、強い魔術は使えない。


魔力も体力も使ってしまっている、だからこそ疲れた体はその鼓動を聴ける……。




「私の影に宿ったヒトたち!!力を、貸して!!」




―――『歌』属性、ミアの影にも多くの魂が宿っている。


兄であるソルジェがそれを使えるように、今のミアならそれを使える。


戦う死者を否定したばかりでも、死者は応えてくれるんだ。


だってこれは矛盾ではない、この属性の本質はやさしさだからね……。




―――ミアの影が、朝陽を浴びながら伸びるのが見えた。


長く広く、そして枝分かれするようにも。


影たちが踊るんだ、ミアに同調する死者たちの魂が。


『ゴルメゾア』に飛び掛かる少女の影たちが、あふれて暴れる……。




「『魔剣』ッ!!『エルフェンリート/妖精の歌』ッッッ!!!」




―――ミアそのものの、突撃する斬撃の乱れ撃ち。


そして、11に分かれたミアの影から空間へと放たれる無数の斬撃。


それらが一斉に『ゴルメゾア』を、切り刻みにかかるんだ。


三大属性でもない、第四属性でも第五属性でもない『歌』の顕現……。




―――ミアはソルジェに近づいた、また最強の可能性の一つが進化を果たす。


『エルフェンリート/妖精の歌』は、たった一瞬の『魔剣』だった。


それでも百に近い斬撃の群れであり、その威力たるや絶対的なものだよ。


ほとんどすべての斬撃の軌道が、精密にうごめく『蟲』を狙い撃ちにしていたから……。




―――『ゴルメゾア』を、つなぎとめようとする力がその瞬間に破綻する。


バラバラになっていく、崩れ落ちていく。


それでも、孤児たちは戦おうとするのだ。


バラバラになり崩れて融け落ちながらも、女神さまのくれた使命を信じる……。




「あ、ああ……っ」




―――『彼女』は、死者の魂が聴こえたのかもしれない。


『蟲』たちを経由して、孤児たちの叫びを聞いていたのかもしれない。


痛ましくて勇敢な、死の安らぎに逆らって戦おうとしてくれる子供たちの声が。


それが『彼女』の使命を打ち砕き、痛みと後悔に身も心も突き落とす……。




―――それでも、『彼女』は動けない。


リュドミナの呪縛のせいではなくて、やっぱり『彼女』も聖なる使命が大切だから。


どんなに痛ましくて、残酷な路であったとしても。


燃え尽きながら突き進むと、決めている……。




―――美しかったはずの声で、また命じよう。


『戦え』と歌えば、あの子たちの勇気は燃え上がるはずだ。


のどを使う、賛美するほどの美しい世界を失ったとしても。


聖歌は歌えなくても、命令ぐらいは叫べるはずだ……。




「……っ!!…………っ!?」




―――命令さえも歌えない、疲れ果ててもいるからか。


それとも、見てしまったからだろうか。


『彼女』と殺し合いをしていた、フリジアが走る。


おそろしい『彼女』に、隙だらけが過ぎる背中を見せて……。




―――斬れるはずだ、『蟲』で編んだ腕で打ち据えて。


そうすれば、聖なる使命を妨げる敵が一人倒せるはずだ。


あまりにも無防備で、あまりにも。


それはあまりにもやさしいから、『彼女』は斬れなかったんだ……。




「もう、いいんだ!!もう、いい!!戦わなくて、いいんだっ!!」




―――聖なる者が、抱きしめた。


大声で泣きながら、その腕と体のぜんぶを使って。


どろどろにうごめくおぞましい、穢れた醜い肉のかたまりを抱くんだよ。


やさしさでなければ、救えない者たちもいる……。




「もう、いいから……っ。私たちが、がんばるからっ。きっと、今より、ずっと……お前たちが、苦しめられずにすむ世界を……勝ち取るから……私が、創るから……っ!!」




―――顔が浮かんだ、夏に咲き誇る赤い元気な花畑みたいに。


とてもきれいで、とても温かく。


生きてるとき、まだお母さんがいたときの顔だ。


バラバラになった『ゴルメゾア』にたくさんの笑顔が浮かび、魂は還った……。





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