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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百八十九


―――黒い疾風が、パロムのとなりを駆け抜けていく。

ヒトの脚が生み出せる速さの、おそらく限界あたり。

この瞬間の速さは、もしかしたらシアン・ヴァティと同じだったかも。

横の動きならともかく、前後の速さで『虎姫』に迫れるなんて……。




―――成長期のミアは、止まることなく強さの道を進んでいるのさ。

黒い疾風が狙ったのはリュドミナではなく、『ゴルメゾア』だよ。

戦術的な判断でもある、より強い敵を倒しにかかるべきだ。

最強の戦士は、最強の敵に挑まなくてはならない……。




『があああああああああああああああああああああああああああッッッ!!!』




―――孤児たちの死体で作られた、おぞましい怪物が怒声を放つ。

ミアのむき出しの殺意に対しての反応だ、『ゴルメゾア』は死にたくはない。

腐りつつある死体の群れでしかなくても、命の本能めいたものが機能していた。

ちいさなミアが放つ巨大で圧倒的な殺意に向けて、突撃を開始する……。




―――戦いの最も重要な決め手は、重さであり大きさだ。

ここに現れたそれらの差は、あまりにも絶対的である。

リュドミナは確信したい、知識と経験と常識と精神力を用いてね。

あのちいさなミアが『ゴルメゾア』の巨体と、真正面からやり合うなんて……。




「『無謀が、過ぎるというものですよ。そんなのは、不可能です。貴方では……』」




―――勝てないはずだと、信じたがっていたよ。

リュドミナは素直じゃないよね、心のなかには不安でいっぱいだったのに。

ヒトは嘘つきだから、当たり前のように自分にさえも嘘を使えるんだよ。

不安だからこそ、信じ切れずに『ゴルメゾア』を援護しようと魔力を練ったのに……。




―――戦いというのは、独りぼっちでやるものじゃない。

ミアの『突撃』はあまりにも目立ち、戦場にいる者たちの気を引いていた。

つまり『囮』としても機能している、ベテランの詠唱長の『仮面』さえも罠にはめた。

ミアよりはかなり遅いけれど、それでも十分に速いフリジアの突撃が続いている……。




「リュドミナああああああああああああああああああああッッッ!!!」

「『連携、ですか!!小賢しい、真似をしてくれます!!』」

「うるさい!!今度こそ、お前を倒してやるぞ!!ビビを、苦しめた罰を受けろ!!」

「『罰……罰は、『狭間』にこそ与えられるべきだと』……言っているんだ!!」




―――『彼女』がフリジアに向けて、『蟲』けらで編まれた腕を使う。

魔術を使えなかったのは、性格が急に変わり過ぎて魔力のコントロールが乱れたせいだ。

狙ったわけじゃないけれど、こちらにとっては有利に作用してくれる。

フリジアの速度と体重を捧げた斬撃が、『彼女』の鞭のようにしなる腕と衝突した……。




―――甲高い金属音が響き、フリジアは弾かれた。

一回転どころか二回転も、後方にくるくると回って受け身にする。

受け身の終わりに、そのまま立ち上がってみせた。

もちろん、すぐさま『彼女』に飛び掛かっていく……。




―――フリジアの猛烈な勢いの突撃は、『彼女』の態勢も崩していたよ。

成長しているのはミアだけじゃなく、フリジアも同じ。

今はもうビビアナを人質に取られてはいないから、力の出し惜しみはない。

すべてを注ぎ、『彼女』を倒すために力を尽くす……。




「リュドミナあああああああああああああああ!!お前は、許さん!!」

「リュドミナさまに、何の落ち度も、ありはしない!!」




―――互いの攻めが衝突し、力の競り合いへと持ち込んだ。

交差する剣と腕の向こう側、お互いをにらみつける。

リュドミナではなく、『彼女』だと知った。

フリジアを圧倒する力が、もうないのだと知った……。




「レナス、お前は、ここで倒す!!」

「やれるものなら、やってみろ―――ッ!?」




―――『ゴルメゾア』の巨大な腕が、振り下ろされて。

地面に拳が突き立てられて、荒れて砕けて飛び散った。

ミアはその拳を軽々と回避した、完全に動きを読み取っていたんだよ。

あえて高くは飛ばす、『ゴルメゾア』の右腕に飛び乗れるように低い軌道だ……。




「そ、そんなバカなっ!?」

「ミアは、私の親友は、めちゃくちゃ強いのだ!!」




―――『ゴルメゾア』の視界を、黒い疾風が埋め尽くす。

ミアはその巨大な獣の顔面に向け、腕を伝って駆け抜けたんだよ。

『彼女』には誤算があった、ミアはこの圧倒的なサイズとの戦いを研究し続けている。

この動きこそが、『ドラゴン・キラー・コンビネーション』の一つの形……。




―――ルルーシロアを倒して、自分の竜にするため。

ほんものの竜騎士になるという、大きな目標を叶えるための力。

夢を求める心の大きさを、形にしたものだよ。

ピュア・ミスリル・クローのきらめきが、朝陽を反射しながら敵を裂く……。




―――『ゴルメゾア』の、大樹のように太い首は頑丈ではあった。

だけどね、竜のウロコほどの圧倒的な硬さはそこにありはしない。

ミアの夢が狙っている強さに比べれば、『ゴルメゾア』は弱かったんだ。

首の七割、いや八割近くまでもがこの一撃により切断されてしまっていた……。




―――パロムは、その瞬間を見ている。

ロロカの義妹は、やはりとんでもなく強いのだ。

巨大なバケモノが泣き叫ぶ、ミアの攻めは容赦なく続く。

これは『コンビネーション』だ、竜を一撃で倒す力などこの世にない……。




―――ミアは敵を切り裂きながらも、回転していた。

『ゴルメゾア』の背後情報で、その回転は180度に達している。

そのまま地上に着地するよりも先に、『チェーン・シューター』が放たれた。

魔銀の細い鎖が獲物に突き刺さり、瞬時に巻き取られていく……。





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