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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百八十四


―――リュドミナ・フェーレンは、戦力の差を理解する。


恐ろしいほどの強さだ、猟兵ミア・マルー・ストラウスと戦うべきではない。


どうあがいても、勝てないだろう。


どんなに力をひねり出しても、『寄生虫』を頼ったとしても……。




―――詠唱長も武術の達人だが、猟兵相手じゃどうにもならない。


考える、考え始めるが。


ミアはその思考に割り込み、攻めを浴びせかけるんだ。


ナイフで斬りつけ、間合いをリュドミナが取ればステップで追いつき腹に膝を入れる……。




「『ぐ、ふううっ!?た、体術……ッ!?』」




―――ピュア・ミスリル・クローの大振りが、リュドミナを襲う。


腹を打たれた勢いに乗り、後退してはなれたものの。


大振りの爪からは逃れられない、リュドミナの胸が深々と裂かれた。


致死性の一撃であった、けれど『蟲』がうごめき即座に修復を始めてしまう……。




「だから、どうしたの?」




―――ミアにとっては予想済みのことだったよ、『蟲』を使うのはもう知っているんだ。


驚きもしないまま、追撃を叩き込むことに集中する。


『風』を手のひらに練り上げて、翡翠色にかがやく球体を作り出した。


ピュア・ミスリル・クローを装備した左の手で、敵の腹に『風』の球体を叩き込む……。




―――『風』が炸裂し、リュドミナの体を拭き飛ばした。


壁にめり込むほどの勢いだったよ、体内の『蟲』ども全体に衝撃が痛めつける。


『蟲』の『群れ』には、この攻めは有効だった。


リュドミナの全身が、その皮膚が大きく波打つのが見て取れた……。




「『うぐ、ぐあああ。こ、この……落ち着きなさい、『ギルガレア』っ』」


「『ギルガレア』のおっちゃんの名前で、それを呼ぶな。それは、侮辱になる」


「『なに、を―――』」


「さあ。殺してあげる」




―――加速して、迫る。


影のように低く長く、接近してくる死の黒猫だ。


リュドミナはそれを迎撃しようと、魔術を使う。


やられたことをやり返すように、『風』の球体を放ってみせたけど……。



―――戦いの場において、おしゃべりも戦術の一部だよ。


わざわざ、「殺してあげる」なんて言ったのにも理由がある。


リュドミナの攻撃を誘っていたからだよ、攻撃を空振りさせながらのカウンター。


それがより威力の重い、攻めになるからだよ……。




―――ミアは予測していたから、あっさりと避けられた。


リュドミナの戦闘に対しての技巧も、ある意味では信用していたのさ。


かならず自分に有効な精度で、撃ち込んで来ることもね。


ああ、向かって左側に放つことも『知っていたよ』……。




―――何故って、そうすればミアは右に避けようとするのが定石だから。


この部屋から逃げるための階段、そこからミアをより遠ざけられる。


賢い敵だからね、ほとんど反射的にそれを選ぶだろうと想定していた。


ベテランなんてものは考えなくても、ベターをすぐさま選んでしまうものさ……。




―――信用していたのさ、リュドミナが賢く戦うベテランの戦士だということは。


だからといって、猟兵の敵になれるわけでもない。


ミアはリュドミナが期待していた通り、回避を行った。


壁に向かって飛んだけど、そのまま壁を走ってリュドミナに迫る……。




―――速度はまったく変わらない、というかむしろさらに加速していた。


『風隠れ』を、その脚に宿していたからだよ。


身軽さを得て、通常ではやれない機動性をその身に与えられる。


迫りくるミアに対して、リュドミナは逃げられなかった……。




―――残酷な首狩りの飛翔だ、敵の目の前をかすめるように飛び抜きながら。


ナイフでその首をかき切るという、ミアだけに許された曲芸的な暗殺技巧。


妖精のようだろう、その名に相応し過ぎる立場になっているのさ。


リュドミナの首が裂かれて、ガクンと後ろに揺らされていた……。




―――生身であったら、これで絶命していたところだ。


それでも、『蟲』が死を回避させる。


うごめく『蟲』が、それぞれの脚だか触手を組み合わせた。


断たれて落ちる寸前の首さえ、修復させてしまう……。




「『ぐ、ふう。はあ、何て、子なのかしら……っ!?』




―――休む暇を、ミアは与えない。


すでに次の攻撃へと、移ろうとしている。


床を蹴りつけて反転しながら、リュドミナに迫っていた。


ミアもベテランだからね、どんなときでも戦術がその身に宿ってしまう……。




―――リュドミナを殺すつもりである一方で、もう一つの目的が動きに宿っていた。


何かって、それは決まっているだろう。


ビビアナとフリジアを、守ろうとして『盾』となることだよ。


それをリュドミナに、感じ取られてしまうのはしょうがないことだった……。




「『本当に、悪い子だわ。あんな、邪悪を、守ろうと。背教者を、守ろうと!!』」


「うるさい!!二人を、いじめた分、苦しんで死ね!!」




―――ミアは、戦術を使っていた。


リュドミナを殺しながら、それでも大切な親友たちから遠ざけるために。


つまりはね、リュドミナに『逃げ道』を用意してもいた。


追い払うためには、それをわざわざ用意してやった方がいいのだから……。




―――ミアは、本当にどこまでも猟兵なんだよ。


戦闘の権化そのものであり、それは結果的にリュドミナの命を助けてしまう。


リュドミナは扉に向けて走りつつ、切断された右腕に命じていた。


体と切り離されてしまったけれど、内部には『蟲』どもがまだまだうごめいている……。




―――狡猾な頭脳が、計算していたんだよ。


ミアの行動を制するために、どんな選択をすればいいが。


大切な者を、『守らせればいい』んだよ。


右腕から突き出した『蟲』の脚が、右腕を走らせていた……。




「『ビビアナさんを、殺しなさい!!フリジア・ノーベルにも、罰を!!』


「……ッッッ!!?腕が、動いてる……ッッッ!!?」




―――それを、ミアに気づかせてしまえばいいだけのことだよ。


戦術の魔法が、かけられた。


ミアはリュドミナをこの瞬間、殺せたはずだけど。


二人を守るために、攻めを捨ててしまっていたんだ……。




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