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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百八十三


―――ミアは驚いた、それは当然だよね。


メダルドの『心臓』を、求める理由が分からないからだ。


呪術だとか、『寄生虫』にまつわる何かかもしれない。


何にしても確実なのは、ヒトは『心臓』を奪われたら死ぬということだ……。




「『素晴らしい供物として、成長している。偶然の産物だったけれど。メダルド・ジーは、『ギルガレア』に強い適性を持っていた。その『心臓』さえあれば、女神イースの魂に、『器』を与えられるわ。素晴らしいコトが、起きるのよ。女神イースが、再び、この世界に蘇る』」




―――リュドミナ・フェーレンの野望を聞いても、ミアは無表情だ。


神さまを創りたがる者たちを、何人か知っているからね。


動じないよ、暴走した信仰心が狂暴なのは理解している。


それに、ビビアナを助けるための方法も判明した……。




「『この子を、助けたいのなら。フリジア・ノーベル。我々のためにメダルド・ジーの『心臓』を取って来てもらう必要があるの。それで、私はようやくこの子を許してあげられます』」


「ビビの、叔父なんだぞっ!?ビビの最後の家族だ!!それを、殺すなんてこと……」


「『死には、至りません。大いなる女神の一部になる。それこそ、永遠の命でしょう?なぜ、それが分かってくれないのかしら』」


「お、お前は……もう狂っているぞ。リュドミナ・フェーレン……ッ」




―――何であれ、やり遂げることが一つあった。


ビビアナを助けるために、フリジアを助けるために。


行動すべきだよ、目の前にいる『彼女』の狂気は無視すべきじゃない。


だって、リュドミナ・フェーレンはフリジアに殺意を抱いていたからね……。




―――リュドミナ・フェーレンの指が、フリジアの首を掴んだ。


頸動脈を的確に押さえて、瞬時の窒息を仕掛けてくる。


解剖学的に確かな圧迫を頸動脈に加えられたなら、ヒトは一秒もかからず気絶した。


詠唱長は喉の周りの構造について、どんなことでも知っているみたいだ……。




―――リュドミナ・フェーレンの動きは、完璧だったよ。


でも、フリジアはその恐ろしい指先の技巧をわずかながら外していた。


おかげで瞬時の気絶はない、苦しさと痛みはあるだろうけど意識はしばらくもつ。


フリジアが見せた能力の高さに、リュドミナ・フェーレンは不満だ……。




「『ああもう。どうして、この子は……どこまでも『カール・メアー』を裏切るのでしょう。でも、捕まえたわ。このまま、気絶させてあげます。そして、貴方にも『入れて』あげましょう。体を変えてあげれば、心も、変わってくれるでしょ―――』




―――リュドミナ・フェーレンの右腕が、一瞬で断ち切られていた。


フリジアが自由になる、せき込みながらもリュドミナから間合いを取ってみせた。


ビビアナのそばへと、崩れ落ちるように倒れる。


問題はないよ、二人の前にはミアが立っているのだから……。




「『私の腕を、一瞬で。強化していたはずなのに。何者です?』」


「ミア・マルー・ストラウスだよ。ビビと、フリジアの、親友」


「み、ミアっ!!」


「『赤毛の、竜騎士の一味ですね。魔竜と心を通わす、おぞましき女神イースの敵』」




「女神イースとケンカしてる覚えはないけれど、アンタが二人を苦しめたことは、分かる。ビビに、毒を盛っていることも」


「『あら。盗み聞きしているなんて、お行儀の悪い子です。そういう子には、飴玉をあげられませんね』」


「いらないよ。飴玉なんて。欲しいのは、ビビの解毒剤」


「『残りは、『本体』が持っています。ここには、ありませんよ。私を倒したとしても、得られません。ここには、ないのですから』」




「『本体』って、東にいるでしょ?クリア・カニンガムの近くに」




―――リュドミナ・フェーレンの表情は、穏やかな微笑みのままだ。


それでも、ミアには見抜かれてしまう。


動揺していたんだよ、リュドミナはミアがどこまで状況を把握しているか知らない。


『最悪の状況になっているかもしれない』から、一瞬だけ恐怖してしまった……。




「『嘘をついても、意味がなさそうですね。そう、いますよ。クリア・カニンガムの近くに。私の『本体』が……』」


「じゃあ。『それ』は、もう死んでるか、確保されてる。お兄ちゃんと、ジャンまでいる。逃げられる状況じゃないよね」


「『だとすれば、残念ね。『本体』が死ねば、ビビアナさんに解毒薬を与えられません。貴方のお兄さんたちの活躍のせいで、ビビアナさんは死ぬのよ』」


「嫌なヤツだ。うれしそうに、ヒドイことを口にする」




「『真実を、告げてあげているだけです。亜人種や、『狭間』は、やっぱり幸せになれません。それが、女神イースの定めた運命なのですから』」


「……そんなに『狭間』が嫌いなら、ビビを助ける気なんて、ないでしょう。解毒剤とか、本当にあるの?」


「……っ!!りゅ、リュドミナ……ッ!!」


「『あら。ばれてしまいましたね。フリジアほど、単純ではないみたい。好きになれませんね、亜人種は』」




「別に、いいよ。私も、あんたのことなんて、大嫌いだから。リュドミナ……だっけ。それとも、レナス・アップル?」


「『どちらでも、好きな方を』」


「どっちも、嫌いだ。お前は、今から私が八つ裂きにしてあげる」


「『あら、怖い。出来るでしょうか、私は、なかなか頑丈ですよ』」




―――リュドミナが、斬られた右腕から『蟲』を伸ばした。


『蟲』どもはうごめきながら絡みついて、巨大な触手を形成する。


それを鞭のようにしならせて、ミアを打ち据えにかかった。


もちろん、怒れるミアの前では無意味だよ……。




「『え……なに、ですか。今の……動きは』」




―――触手が、真っ二つにされていた。


それだけでは、すまない。


リュドミナ・フェーレンの全身が、この一瞬で斬り刻まれている。


ミアが爪とナイフで襲いかかり、その動きの速さに反応できなかった……。




―――武術の達人である、リュドミナ・フェーレンが。


おかしい、ことではないよ。


だってね、今のミアは。


とても、怒っているのだから……。





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