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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百七十九


―――ミアの言葉は小さいものだったけれど、パロムの心に刺さったようだ。


とてつもない迫力を感じられる程度には、有能なディアロスの騎兵だった。


身震いしながら、強い戦士と出会えたことを喜ぶ。


極北の蛮勇たちのなかでも、パロムは実に戦士的な女性のようだね……。




「はああっ!!最高ですよ、ミアさん!!さすがは、ロロカ・シャーネル副社長の義妹にあたる方でございますう!!」


「そう、ありがとう」


「このパロムも、『曙』も、感動ですよ!!いざ、敵地……っ!!くう、活躍するぞお、『曙』おお!!」


『ヒヒイン!!ブッルルルルウウ!!』




―――『オルテガ』の北に向かう街道を、『曙』は爆走してくれる。


あっという間に海岸線が見えてきた、ゾロ島の漁師たちが港を制圧していた。


帝国の勢力は水平線が許す限りの範囲では、見つからない。


ミアには、この海で探りたいこともある……。




―――おそらく、いるはずだからだ。


昨夜の戦いの規模を考えれば、『気づいたはず』である。


空に咲く薔薇だとか、軍隊同士の衝突もそうだ。


『ギルガレア』との空中戦に、心が踊らなかったはずはない……。




―――静かに見える海に、潜むのも得意中の得意だろう。


ゼファーも連戦で疲弊があり、狙うべきタイミングとも言えた。


頼りたくもなるが、今は『曙』で十分だろう。


間違いなく、説得するのには骨が折れる相手だから……。




「ミアさん、海が見えてきましたが!!灯台は、果たして、右でしょうか、左でしょうか!?」


「左!左っていうか、西に向かって。敵は、『ルファード』から『オルテガ』に向かっていたから。『オルテガ』を通り過ぎるほど、東には行けていないと思う。これだけ明るくなって、みんなピリピリしている状況だから」


「なるほど!見つからずに、ここを抜けるのは不可能でしょうとも!!さすがの、判断力です!!では、左に曲がりますよー、『曙』!!ターンだ!!」


「……この速度なら、すぐに見つけられる」




―――海岸沿いを、ミアの視線が探り始めた。


いくつかそれらしい建物の影が見える、小さすぎるものも大きすぎるものも除外すべきだ。


小さすぎれば、隠れ家としての機能も弱くなりすぎる。


大きすぎても、『ルファード軍』の戦士たちが拠点として使う可能性が高い……。




―――それらを避けて、中規模からやや小さなサイズの廃墟だ。


それが最も可能性が高いと、ミアは判断する。


いくつかの候補が視界のなかに入ってくるが、あわてない。


『曙』が近づいてから、判断をしていけばいいだけだ……。




―――廃墟が多いのも、支配者が短期間で移り変わる『オルテガ』周辺の特徴だ。


繰り返された戦いの果てに、いくつもの軍事施設が壊された結果だよ。


近づけばよく分かった、小さなものはやはり解体され過ぎていた。


石材を回収されてしまい、もはや身を隠す拠点としては使えそうにない……。




―――判断のつけ方を、ミアは確信する。


大きさは、想像の通りでいい。


そして、高い丘にある灯台も選ぶべきではない。


そこには海を警戒する戦士たちが、高確率で陣取っているからね……。




―――水平線の先を見渡す方法は一つだけ、高さを使うことだ。


大陸は、どうやら丸みを帯びているようだからね。


水平線や地平線は、それらを実感できる現象の一つだ。


『プレイレス』の地理哲学者たちの主張を、ミアも知っている……。




―――ミアは新たな条件も、頭のなかに記述した。


『オルテガ』側からは見えにくい場所だ、丘の裏側にでもあれば最適だろう。


先ほどのイース教会が集合地点であったなら、本命の作戦は『オルテガ』だ。


『オルテガ』にいる敵から身を隠せるように、行動をデザインするはずだった……。




―――作戦というものは、どうしても諸々の条件をつなげてしまう。


合理的に作成しようとしたとき、ヒトは計算を使い過ぎるものだ。


だから、戦術というもののほとんどが分析されてしまうのさ。


ミアはパロムの背中に飛びつくようにして『標的』を見つめ、腕を伸ばした……。




「パロム、あそこに向かって。丘の裏側にある、ちいさくて、崩れかけている灯台」


「なるほど!悪が、隠れていそうな予感でありますなー!!」


「うん。警戒されないように、あの灯台を通り過ぎて欲しいんだ」


「なる、ほど?」




「まるで、『ルファード』に向かっている連絡係みたいに動こう。演じるんだ。敵を騙して、油断を誘おう」


「はい!え、演技ですかー。な、なかなか。裏表がない性格と評される私には、少々、不得意な分野であるような自覚もしますがっ。ここは、一皮むけて大きく成長すべきですね!!」


「うん。強くなろう。みんなで、ちょっとずつね。そうじゃないと、多くを助けられないから」


「ええ!助けて、あげましょう。人質さんたちを!!『曙』、スピードを落として、通り過ぎるとしましょう!今の半分程度の速さで、そこらの早馬と同じ遅さならば、ユニコーンだともバレないはす!!」




―――このディアロスとユニコーンのコンビは、少々ガサツそうではあるけれど。


それでも指示に従ってくれるマジメさがある、それこそが『攻撃』に向く。


緻密に多くの策を重ねることで、威力を組み上げていくものだからね。


その灯台にこっそりと接近し、ゆっくりと離れ始める……。




「私は、先に行くね。十五分するか……私があの灯台のてっぺんで腕を振ったら、すぐに戻ってきてくれる?」


「十五分後、あるいは、ミアさんの手がブンブン振られたら、直行!!了解です!!」


「うん。頼んだよ。不用意に近づかないでね」


「す、少し、不満ではありますがっ」




「だいじょうぶだよ。十五分後の突撃は、私の作戦の一部になるから。そのときは、活躍してもらうからね」


「承知です!!フフフ、腕が鳴ります!!」




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