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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百七十二


―――ミアは壁にかかっていた地図を見つけると、それを引きずり下ろす。


ゼファーに乗りながら見下ろしていた街並みと、それは大きな変化があった。


それでも、ミアも竜騎士としての経験値を重ねている。


ソルジェの教えが、長年染みついているのさ……。




―――それにね、竜騎士姫から伝わる技巧と知識の本髄にはケットシーが関わっている。


竜騎士姫が創った力は、『ラウドメア』に奪われたけれど。


名前を遺すことを嫌い、竜騎士姫と『おそろい』を望んだ彼女が復活させた。


ケットシーに使いやすいアレンジが、技巧の系譜の発端にあったわけだ……。




―――つまりね、ミアはストラウス家の竜騎士の技巧を誰よりも深く継げる。


幼いころからソルジェに竜乗りのハナシを聞かされ、猟兵として教育され。


たぐいまれな才能はゼファーとの邂逅で鍛えられ、いまだに成長し続けている。


地図をナイフで、ガリガリと削って『ほとんど完璧に壊れた街並みを再現した』……。




「ここが、イース教会のあった場所だよ。だから、こう行って……こっちに曲がって……」


「……これが、『今』の『オルテガ』の状況なのか。それを、覚えている?」


「うん。コツはね、いくつかあるけど。覚えるとカンタン。昨日の夜ね……『ほとんど忘れたけれど』……『もう一つのオルテガ』で、竜騎士姫の物語を聞いたんだ。だからね、コツがまた一つ掴めたの」


「……よくは、分からんが。強くなったわけだ」




「そういうコトだよ。おっちゃん。私ね、イース教会を調べてみるよ。お兄ちゃんたちが帰るまでにね。おっちゃんは、ここにいて欲しいな。調べたいなら、戦士たちに指示を出して。ここで、守ってもらっていてね」


「……お前は、一人で行くつもりなのか?」


「うん。敵が弱ければ、その場で私が皆殺しにする。敵が多かったり、強いなら周りを頼ったりする。ここは、『ルファード軍』が支配しているんだから」


「……戦闘については、オレが口をはさむまでもないか」




「私は、『パンジャール猟兵団』の猟兵だもんね。それに、ガルーナの竜騎士でもある。とっても、強いよ。とくに、今日は……けた違い。だって、ビビと、フリジアの親友だからね。死ぬほど、残酷にだってなれちゃうんだ」




―――笑顔を見せるよ、猟兵にとってそれは戦いのための仮面だ。


ガルフ・コルテスの教えを、ミアはソルジェよりも深く理解している。


純度の高さじゃ、最高傑作というわけだよ。


荒れ狂う炎のような感情さえも、微笑みの器のなかに収納しているんだ……。




―――怒りの熱量を、完璧な冷静さで緻密に使いこなすためにね。


ソルジェとガルフと、それにボクたちもか。


多くのスペシャリストが、ミアに多くを授けた結果だ。


『暗殺妖精』、伝説の存在をもしかしたら超えているのかもしれないね……。




「じゃあ。行ってくるね!」


「……気を付けてくれ。それに、ビビを……頼む」


「うん。ビビとフリジアを、取り戻すよ。敵からね。信じて」


「……ああ。信じるぞ」




―――音を置き去りにするほどの速さをまとい、ミアは走り出す。


朝焼けに染まる街並みに飛び出して、加速を作ると街を迷路のように区切る城塞に跳ぶ。


ミアにとっては、どんな迷路の囲いも関係ないのさ。


跳躍力に『風』の加護、それに『チェーン・シューター』も使えばいいんだ……。




―――住民さえも地図を使う日もあるような、複雑怪奇な迷宮都市。


それを『暗殺妖精』、ミア・マルー・ストラウスが駆け抜ける。


速いよ、どんどん速くなる。


リズムを作っているんだ、最速かつ最短ルートを駆け抜けるためにね……。




―――つまりね、ミアは人生で一番怒っているんだ。


敵を見つけ出して、殺してやりたい。


ビビアナとフリジアを、取り戻したいと願い。


決意の力を全身に巡らせている、走りながらの歩調で自分を『作り変えている』……。




「絶対に、許さないよ。『カール・メアー』」




―――少女の時代は、終わりつつあるんだ。


この世界にある様々な痛みを知って、自分たちに降りかかる理不尽や敵意を知った。


悲しい物語を、ミアは背負っている。


亜人種や『狭間』への責めや、フリジアみたいに分かり合おうとする者への障害……。




―――なんて、意地悪な世界なんだろう。


こんな世界は、大嫌いに決まっている。


だから無理やりに変えなくちゃならない、その理由をミアは本当の意味で悟った。


大切な者を大切に扱ってもらえるために、世界を変えるんだよ……。




―――とても自然で、とても当たり前な決意だ。


ミアの影が、動く。


この悲しい大陸のあちこちを旅して、ソルジェと同じく影に魂たちを呼び込んで来た。


『歌』属性の使い手として、ミアも成長している……。




「一緒に行こう。ママ、難民さんたち。帝国に殺された人たち。私たちと、同じ願いを持っていて、同じ『未来』が欲しかった人たち。私の、影に宿って。私と一緒に、こんな悲しいことばかり起きちゃう世界を、ぶっ殺しに行こう」




―――戦士は、個人的な悟りを開くものだ。


自分が世界で成すべき戦いを、把握したときにね。


それを経験すると強くなるよ、とてつもなく。


今のミアは、伝説の暗殺者よりもはるかに強いだろう……。




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