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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百六十一


―――子供扱いするのさ、何せ『アルティミス』だからね。


女と子供の守護者だから、助けてやりたいのだろう。


このあわれな『彼女』を、間違った流れから。


もちろん善意から来るものだけど、それを『彼女』は受け入れない……。




―――信じ込んでいるからだし、信じたいからだ。


誰もが自分に嘘をつくことだってある、心はとても複雑な厄介なものだから。


正義への確信があれば、どれだけだって間違えられる。


何せ『彼女』は騙されている、どれだけ穢されても壊されてもいいのだと……。




「背教者が、無礼な発言ばかりを、並べ立てるな!!ありもしないことを、私は、聞いたのだぞ!?女神イースからの啓示を、聞いたんだ!!この耳で、この心で!!」


「『幻覚だろう。心を病んだ者には、この世にない声が聞こえる』」


「うるさい!!そうじゃない!!違う!!絶対に!!だって……」


「『詠唱長殿に、確認してもらったからか?お前を騙して、利用しているあの女に』」




―――詠唱長の仕事は、何も聖歌隊の責任者や監督をするだけじゃないよ。


詠唱、歌だけじゃなくて『言葉の専門家』でもある。


聖歌も聖句も祈祷も、『より正しい発音や言い回しで口にするべき』だからね。


それらを専門に研究し、正しさを追求する職務が詠唱長にはある……。




「『聞いたんだろう。お前が、啓示とやらを聞いてしまったとき。お前は、あのリュドミナ・フェーレンに確かめてもらった。喜んだろう。リュドミナ・フェーレンはな』」


「当然だ!!聖なる啓示を、わ、私が聞いたんだ!!それは、『カール・メアー』にとっても、喜ばしい。『カール・メアー』だけじゃなく、イース教の信徒の全員に……ッ!!」


「『違うな。お前を、騙せて操れるからこそ、喜んだのだ。狐のように、山猫のように、あの細く歪んだ、好色な目で』」


「リュドミナさまを、お前ごときがバカにするな!!雑魚のくせに!!」




―――否定したいから、全力にもなれた。


振り回され続ける剣に、『炎』の魔術。


せまい地下で逃げ場も少ないはずで、腕前にも差があるはずだった。


それなのに、現実は『彼女』をまた裏切ってしまう……。




―――どれほど迫っても、回避されてしまうのだ。


刃が迫っても、『炎』が迫っても。


『アルティミス』は、ピエロのような軽薄さと賢者じみた先読みを行う。


あと少しまで攻撃が迫っても、どうしても当たらない……。




「どうして、だ!?」


「『それは、お前が『カール・メアー』の武術をマジメに学び過ぎているからだ』」


「は、あ!?」


「『理想が過ぎるんだよ。だから、目を閉じていて、こんなステップでも私に避けられる。最高の『カール・メアー』の巫女戦士であろうとしている。その努力は、正しいが……正し過ぎて、見え見えなのは間抜けたハナシだな』」




―――武術は難解なところがあって、純度が高すぎると読まれやすくなる。


あまりにも『カール・メアー』らしいから、『カール・メアー』を知る者に読まれた。


対・『カール・メアー』の戦いに限り、今のフリジア……『アルティミス』は最強だ。


何せ、生まれたときからお山にいるんだからね……。




―――真に『カール・メアー』の申し子なのは、フリジア・ノーベルだよ。


その事実を感じ取りながら、『彼女』は苛ついた。


それはそうだろう、誰よりも『カール・メアー』に染まっているはずのフリジア。


その立場を顧みることなく、今では『カール・メアー』を裏切った……。




「欲しいものを!!私が、欲しいものを!!持っているくせに!!」


「『そうかもなあ。フリジアは、捨て子だが、ちゃんと周りに愛されていた』」


「私だって、愛されていた!!両親にだ!!父親の肩に乗せてもらい、母親の料理の味を知っている!!私の歌は、二人にしっかりと褒められたんだぞ!!」


「『……そうか。それは、とても素晴らしい思い出だな』……うらやましいぞ」




―――この戦いは、人生の衝突だった。


似ているところもあり、まったく違うところもあるイースの申し子たち。


どちらが正しいのかを主張しながら戦っている、高尚な聖戦のようにね。


それでいて、実際のところ……。




「子供の、ケンカみたいね……っ」




―――とつてもなくハイレベルな、子供のケンカにも見える。


それも正しい味方だった、二人はあわれな子供時代を持っていて。


それが互いの理解を、根底の部分で拒絶し合うのだから。


親から捨てられ聖なる愛を得た者、愛してくれた親を殺され聖なる愛に嫌われた者……。




―――根っこから、大きく違っていると。


反りなんて、なかなか合わないものだよ。


お互いが、本当に嫌いだけれど。


でも、今のフリジアは『アルティミス』だった……。




「『いい加減、やめようではないか。お前は、包囲されつつあるんだぞ』」


「うるさい!!うるさい!!私には、女神の加護がある!!お前には、ない!!だから、だから、勝てるんだよ!!」


「『力で、示すしかないか』……不毛だな」


「ちょ、ちょっと、バカ!?フリジア、その仮面を、取るんじゃないわよ!?」




「ああ。いいんだ。ビビ、大丈夫だから、待ってろ」


「そ、そんなコト……言っても」


「私は、今まで勝っていただろ。こいつに」


「……負けそうなら、手を貸すからね」



―――『仮面』を外したフリジアが、やさしい目で『彼女』を見つめる。


『彼女』は好機だと感じる、『アルティミス』の力を認めたわけじゃないだろうけど。


『アルティミス』の得体の知れなさは、混乱を呼び起こす力があった。


それが消えたのだから、自信にあふれてしまう……。




「……勝てると、信じているな。お前」


「当然だ!!もう、あんな仮面に惑わされなど、しない!!」


「そうか。ならば、勝ってやるよ。フリジア・ノーベルだけの力で」


「ハハハ!!死ね、背教者!!」




―――ビビアナには、見えた。


二人が放った攻撃は、かなりの速さがあったけれどね。


同じ技巧だったよ、『カール・メアー』式の大振りの斬撃。


互角に見えたし、実際のところほとんど互角だった……。




―――斬撃が衝突し合って、剣が弾かれる。


勝ったのは、フリジアだったよ。


『彼女』は自信まで砕かれて、そのまま壁際にまでよろめきながら後退する。


フリジアは、静かに剣を向けた……。




「……今なら、少しは素直に聞けるだろ。お前に、女神イースは啓示を与えてなんていない。ただ、『寄生虫』の実験台にされているだけだ」


「……そんなことは、ない。リュドミナさまに、正しい……って」


「受け入れろ。この敗北が、全てだ。お前は、もう弱っている。『仮面』を使わない私にだって負けるほど。体力も魔術も、使い過ぎたんだよ」


「…………違う、死ぬまで……止まらないっ。いくら、穢れても、いくら、壊れても……」




「聞け。お前は、本当に悲惨なヤツだが……死ぬべきでは、ない。だって……だって!う、うらやましいことに…………お前には、ちゃんと、愛してくれた両親がいたのだろう。私には、いなかったのに!!こ、こんなに欲しかったのに、私には、いなかったのに……っ」




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