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5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

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第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百五十七


―――心理操作術の達人に導かれ、フリジアの心はさらに記憶を探る。


無遠慮なまでの行動力で、忘れたフリをしていた領域に踏み込んだ。


見えるし、聞こえた。


記憶のなかの光景で、首を回して視界を広げる行いさえも可能となる……。




―――鍛錬に狂って、汗と涙を流す狂気がいた。


『おぞましいと感じもするし、うらやましくも思う』。


嫉妬してしまえるほどに、『彼女』はとても熱心であったし。


それを遠くから、見つめている者をにらみつけた……。




―――『カール・メアー』という、フリジアにとって絶対の権威でさえ。


今では無遠慮に見通してしまえる明晰さがあるのさ、善悪はともかく強い。


高い丘の上で、『彼女』を値踏みする目がある。


『詠唱長リュドミナ・フェーレン』、やさしい飴と聖歌のプレゼンター……。




―――今まではね、やさしい微笑みしか見えなかった。


そうでない表情など、フリジアの『カール・メアー』への忠誠心が塗りつぶしたから。


でもね、もう違うんだよ。


この記憶の光景のなかで、偽りの彩色は剥げて落ちた……。




「『笑っているなあ。そっか。あの人、あんなに……意地悪な山猫みたいに笑う人だったんだなあ。曲がってるよ。アハハ。おかしいなあ。どーして、あんな目をしているのに。知らんぷりしていられたんだろう』」




―――もしも子供が、そのときフリジアが見ていた笑顔を見たら。


恐ろしくて膝を揺らしたり、親の背中に無言のまま抱き着いていたりしたかもね。


山猫の目は、あまりにも獣の目だったからだよ。


リュドミナ・フェーレンも狂気の持ち主だ、聖なる狂気のね……。




「『あいつ。利用されようとしているのかもしれない』」


「……あの『女』のコトね。レナス・アップル……」


「『うんうん。そうそう。リュドミナさまは、あいつの異常でヘンテコな情熱を見て、何かを思いついている。いや、もっと、そうだな。企んでいたんだよ。きっと、聖なるコトだろうけど。その半面で、ろくでもないコトを』」


「『女神イースのためなら、何だってするものね』」




―――ビビアナは、フリジアの記憶に方向性を与えた。


魔法のような一言だよ、フリジアはまぶたを閉じる。


やさしくて緊張のない、自分が最も不得意としていた瞑想の内観。


静謐さと空虚を、さみしがり屋は嫌うものだが今は別なんだよ……。




「『ビビが一緒にいてくれるから、アタマのなかが、スッキリするなあ。ビビは、教師に向いているよ。尼僧にならないか?』」


「『カール・メアー』は、絶対にごめんよ。あちらの信条にも合わないでしょうしね」


「『まあな。それはそうだ。『カール・メアー』の……今の『カール・メアー』は、大間違いだな。『こんなのじゃないのだ』。本当の、女神の慈悲とは……もっと偉大なくてはならん。『詠唱長』よ。間違ってる。とくに、間違っているぞ、その誰かの必死さにつけ込もうとしている笑いはな』」


「……『そのバカ、何をしようとしているのか。見えちゃったのね』」




―――催眠術の奥義は、序列を使いこなすこと。


権威ある者の声に、従わせるのが有効なんだ。


『詠唱長リュドミナ』を、バカと罵るのが有効なんだよ。


今のビビアナは、フリジアにあらゆる振る舞いを許せる『先生』だからね……。




―――ニンマリと笑うフリジアに、ビビアナはミアを連想した。


自分が知る限り、『この世界で一番強い少女』をね。


フリジアはこの一瞬で、また強くなった。


少なくとも『カール・メアー』に対しては、かなり強くなっている……。




―――金色猫の仮面を、フリジアはかぶった。


閉じていた目を開くが、そこにある視界はとてもせまい。


だからこそ、想像力が生き生きするときもある。


今のフリジアは、『アルティミス』を演じているのさ……。




―――女神イースの直系の弟子であり、最古の巫女戦士の一人。


つまりは『カール・メアー』よりも、『正当な女神の巫女戦士』と言える存在。


それに自分が近づこうと、本能的に選んでいる。


ビビアナには最初から見えていたのだろう、フリジアが仮面を選んだ理由がね……。




―――そうさ、フリジアはこの仮面をつけて戦いたかった。


自分の心を支配している『カール・メアー』の権威に、反旗をひるがえしたかった。


『カール・メアー』よりも、より『正当な女神の権威』を選ぶことで。


心の底では叫んでいた、『カール・メアー』なんてクソくらえをという本音を示した……。




―――無意識のうちにね、そういうものだよ。


ヒトの深層心理に根差すような、根源的な感情というものはね。


今のフリジアは、『カール・メアー』にまったく囚われていない。


大きな自由を得た、自信の翼は心をどこまでも羽ばたかせる……。




「『あの性悪飴女は、かわいそうなレナスを、自分の道具に変えようとしていた。あの目だ。一度でも分かる。十分過ぎるぞ。あれは、聖なる慈悲から最も遠い。この仮面が、最も倒さなければならん、邪悪。女、子供を利用する、悪鬼の目だ』」


「レナスを、リュドミナは支配していたと?」


「『それはそうだ。そのために見ている。あれは、『物』を見る目だ。女がよくやる、お気に入りの品への笑み。ヒトに向けるべきものじゃない。最初から、支配していたんだろうな。きっと、今も。ビビなら、分かるだろ?』」


「『詠唱長リュドミナ・フェーレン』が、あの『女』に、私を襲わせた。黒幕なのね」




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