表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5月2日書籍版発売!!元・魔王軍の竜騎士が経営する猟兵団。(最後の竜騎士の英雄譚~パンジャール猟兵団戦記~)  作者: よしふみ
『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

4203/5088

第四話    『迷宮都市オルテガと罪科の獣ギルガレア』    その百五十五


―――宗教という力の質は、『つなげる』ことだよ。


神さまと、人々を心理的につなげて安心を保証するものさ。


神さまの効能は、色々とあるだろうけれど。


フリジアと『彼女』にとって、それは『孤独』からの脱却だった……。




―――二人とも家族を失っている、孤児だったからね。


女神イースとのつながりを持つことで、救われたんだよ。


精神的なメリットは、そのあたりになる。


そもそも宗教なんて、精神的なメリットだけで十分なはずだった……。




―――だが、慈悲深い女神イースがこの世に実在したら?


フリジアたち信徒に、大いなる奇跡を使ってくれるのなら?


フリジアは願いを叶えるかもしれない、『家族が欲しい』という願望を。


『彼女』も、人生において奪われた何もかもを取り戻せるのかもしれない……。




―――少なくとも神さまが、この世に実在したならば。


神さまの不在に対して、怯えなくて済むのは確かだよね。


フリジアと『彼女』は、女神イースに救われているからこそ。


その実在が証明されたなら、何よりも心穏やかに暮らせるのだろう……。




「あの『女』は……女神イースを、『寄生虫』を使って再現するつもりなの?」


「……んー。そこまでは、私にも分からん。だが、それが可能なら……とても、良いコトかもしれないし……罰当たりなのかもしれん……」


「良いのか悪いのかも、分からないの?」


「難しい。少なくとも、『カール・メアー』にとって、女神イースの再臨自体は、最高の夢だと信じられる」




「……なるほど。あの『女』も、そうなんでしょうね」


「うん。きっと、レナスもそうだろう。だって、あいつは……私よりも、孤独だから。あいつは、私が知っている限りでも、指折りの悲惨なヤツだ」


「でしょうね。孤立している。そう、アンタも迷ったという事実は見過ごせない。『カール・メアー』の総意として、『寄生虫』で女神イースを再現するなんて行為を、是としない」


「うん。それは、そうだろうな。異教活動だし、あんなおぞましい虫けらで、女神イースを……だが、いないよりは……いや、女神イースは、誰の心にもおられるのは確かなんだが」




「宗教の在り方は、どうだっていいわ。今、必要なのは、敵について知る。それだけ。それに集中しなくては」


「……敵、敵か……レナス……」


「あの『女』は、『寄生虫』で女神イースを再現しようという行為を……承認されたと言っていたわね」


「ふーむ。女神イースにだろうか?」




「そんなはず、ないでしょうね。あの『女』がそれを口走ったとき……そう、『承認された実験』と言っていたわ。あいつの使った言葉のニュアンスで、アンタも『疑った』わよね」


「……お山が、命令しているかのように感じたのだ。あのときは……どうしてだろう?」


「『カール・メアー』における女神イースというものが、どういう存在なのかまでは知れないけれど、一般論として、一神教の神さまは『実験』なんてしない。絶対的な存在は、間違うはずもないからよ」


「おお。ビビは、やっぱり賢いなあ……そうだよな。女神イースが、実験なんてするはずがないのだ。全知全能にして、絶対にして唯一なのだから!」




「ということは、あの『女』に承認を与えたヤツがいる」


「ん。そう、だな。そうなるのか……」


「誰か、見えるんじゃないの?」


「……お山……いや、お山じゃない。もっと、何と言えばいいのか……こう、その。全体じゃなくて……」




「せまい。あの『女』は孤立していたから、『カール・メアー』での人間関係は、極めてせまいはず。『そこ』に、集中しなさい、フリジア。『見る』のよ。まぶたの裏に……あの『女』と、そのせまい人間関係を想像するの。そのなかに、『実験』という単語と結びつくヤツは?」


「実験、実験…………あ。そう、だ。『詠唱長』……」


「『詠唱長』というのは、聖歌隊のリーダーか何か?」


「そう、だ。『カール・メアー』の聖歌隊も、いくつか種類があるのだ。役職も、そこそこあって……」




「『詠唱長』の仕事は、一体何なの?」


「聖歌隊を、仕切る。それと、あれだ。聖歌の旋律の、研究……たしか、その。呪術的、魔術的な意味も、旋律にはあって……それが、果たして教義や戒律とどの程度のつながりがあるか、とか、何とか……と、とても、インテリな部門でもあって…………」


「『プレイレス』は、文化全般が盛んな土地よね。学問も……神学研究もあれば、歌の専門家だっている。呪術の教育者も、いる」


「そう、そうだ。『詠唱長』は……あの方も、『プレイレス』に、研究に行かれておられたときがある……」




「そいつと、あの『女』の関係は?あの『女』のせまい人間関係の、どのあたりにいる?」


「……つながりは、あってもおかしくない」


「当然ね。あの『女』の聖歌は、天才的なわけだから」


「……そう、だ。そう……うん、『詠唱長』は、レナスと会っているはずだ。お山に、あいつが救助されたとき……会っている……でも、そこまで、近しくはない……」




「まあ、そうかもね。あの『女』は、もう歌っていないのでしょう?」


「そうだ。歌っていない。もう、歌わないと、決めたのだ。巫女―――ううん、戦士になるから……『詠唱長』は、聖歌隊に近く……レナスは、そこから遠くに……接点は……あまり、ないかも」


「『プレイレス』の任務で、そいつらが再会した可能性は?」


「あると、思う。リュドミナさまと、レナスは……『プレイレス』に、同じ時期に……」




「『詠唱長』は、リュドミナって言うのね」


「リュドミナ・フェーレンさまだ……とても、おやさしい方で、私にも飴を分けて下さったこともある…………なあ、ビビ」


「何かしら、フリジア?」


「……レナスは、まだ歌が好きだろうか……幼いころのように。私は、オトナになった今でも、飴は好きだ……」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ